観光イノベーションで地域を元気に

地方で起業するために

2017/09/01 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─若い人たちへのアドバイス─

1.地域おこし協力隊研修

今年度も地域おこし協力隊の起業・事業化研修が始まった。初回のメイン講師は十日町市の協力隊出身で、協力隊時代の事業も継続しながら移住支援や研修講師を手掛けるビジネスモデル・デザイナーの多田朋孔さんだ。

地域おこし協力隊とは、都市などに住んでいた地域外の人材を地域社会の新たな担い手として受け入れ、最長3年間自治体に所属して地域力の維持・強化を図るメンバーで、全国に約4千名の隊員がいる。任期終了後には地域で起業する隊員も少なくなく、起業したい事業の一番人気は、空き家を活用したゲストハウスやカフェ等の宿泊・飲食業だ。こうした隊員に向けて、微力ながら筆者も研修会で起業サポートを行っている。

私が起業志望の隊員に向けて事業化のアドバイスとしてお伝えしていることは、「持続可能な事業を考えること」、「客数を追わないこと」、「マルチタレントになること」、そして「セレンディピティをつかむこと」の4点。「そんな考え方では事業は大きくならない」と思われるかもしれないが、地域おこし協力隊の皆さんには、理解していただきやすい。なぜなら、これまで「そうではない考え方」を続けてきた都会の企業で一度は働いた経験があるからだ。

「これまでと同じではいけない」、そう思ったからこそ、地域の門をたたいたと思う。

最初からすべてうまくいく事業などない。手元資金も多くはないだろう。小さく始めて、周囲を巻き込み、育てていく。若いからこそできる特権を活かして欲しいと願っている。

2.持続可能な事業とは

「持続可能」という言葉は環境保全の場面でよく使われるが、その意味は「資源を維持できる範囲で活用すること」である。同様に、経済の文脈でこの言葉を説明すれば、「需要を超えない範囲で供給すること」。いいかえれば「競争しないで商売できること」だ。需要が人口とともに自然に増加し、せっせと供給量を増やしてきたこれまでの200年間、失ってきた発想である。

供給が需要を超える供給過剰の状態になると、商品はコモディティ化し、どんなに努力して差別化しても注目されないジレンマに陥る。地域の「旅館」という商品もまさにその状態だ。そうなると、商品を売るためのコスト競争となり、押し売り営業するパワーを持った、より資本の大きな企業が勝つ。地域を売ることも同じで、どんなに素晴らしい観光資源でも、需要より供給が大きいと結局は予算の大きな自治体が勝つ仕組みになっている。

では、どうすれば、供給量より需要の大きい商品を作ることができるのか。それは「顕在需要」を追わず、徹底して「潜在需要(あったらいいな)」を開拓することしかない。

200年以上前の江戸時代、灰を売る「灰買い」、桶を修繕する「たがや」、キセルを売る「羅宇屋」と様々な職人がいた。江戸時代も人口が伸びず、自立のために人々は「あったらいいな」を生み出し、商売にしていった。人口が減る時代には持続可能な経済を創り出していくしかないのである。

研修では、潜在需要をみつけるワークとして、「需要側(消費者等)」の悩みや課題と「供給側(生産者等)」の悩みのマッチングを行う。

例えば、「運転代行業の少ない田舎では安心して飲める店がない」という消費者の悩みと、「田舎で代行業は儲からない」という生産者の悩みをつなげ、軽トラを居酒屋にする『移動屋台』というアイディアを考えていた協力隊の柴田君。移動屋台はできなかったけれど、民宿の納屋を借りてバーを造った。飲み疲れても隣ですぐ寝ることができる『泊まれるバー』というコンセプトで、夜遅くまで働く人たちに向けた潜在需要開拓を始めている。

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地方の現場で学ぶ大学の創設を

2017/08/01 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─なぜミネルバ大学は世界最難関になったのか─

1.ミネルバ大学

ミネルバ大学をご存じだろうか。2014(平成26)年9月に開校した、米国サンフランシスコに本部を置く全寮制の大学だ。新設校ながら初年度には98カ国、1万人以上の応募があり、その合格率は2.8%という狭き門。ハーバードやケンブリッジといった名門大学に合格してもミネルバを選ぶ学生が出るなど、たちまち「世界最難関」といわれるようになった大学だ。なぜ、設立して間もない大学に世界中から優秀な若者が集まってくるのか。

その解は大学のシステムにある。まず、ミネルバ大学にはキャンパスがない。さらに、全寮制といえども、サンフランシスコで合宿生活を送るのは最初の1年だけ。2年次以後は半年ごとに、ロンドン、ベルリン、ハイデラバード、ソウル、台北、ブエノスアイレスと渡り歩く。世界中の都市をキャンパスとしながら、今世界で何が起きているか、何が問題になっているのかを肌身で学ぶことができるシステムなのだ。さらに、どんな人種でも遠慮なく学べる環境も、世界中の秀才たちには魅力的なのだと思う。

午前中に行われる授業は完全オンライン制で、学生全員がパソコンに向かう。画面にはクラス全員の顔が映り、発言の頻度も色で表示される。「いいね」等の反応もあり、同じ教室にいなくても、世界のどこかにいる教員を中心としてネットワークで繋がった学生同士でいつでも活発な議論がなされている。パソコンに向かっている場所は、寮であったりインターンシップ先の企業だったり様々。学生たちは、午後からと毎週金曜日は、インターンシップ生として企業で活躍している。

気になる学費は、年間で1万ドル(約110万円)とアイビー・リーグ(米国北東部に所在する名門私立大学8校からなる連盟)の4分の1 。生活費込みでも約3万ドルというからかなり良心的だ。

2.マルチ・ベース

世界中の国々で「働き手(生産年齢人口)」が減少し始めた今世紀は、「労働生産性向上の時代」だと先月号で紹介した。経済成長に必要なGDP(国内総生産)は「生産年齢人口×労働生産性」で表されるため、生産年齢人口減少の時代に経済成長するためには「労働生産性の向上」が不可欠。昨今、さかんに「AI(人工知能)」等のテクノロジーの必要性が説かれているのも、働き手が減少するなかで労働生産性向上に直結するためである。

世界で最も早く、20年前(1995 年)に働き手が減少し始めた日本では、女性の一層の社会進出、定年後の高齢者の再雇用促進、外国人労働者の採用など、様々な手法で働き手の確保を行い、労働生産性を維持・向上させてきた。しかし、より高い生産性を求めて人々は都市に集中するようになり、地方創生がさけばれるようになった。

この状況を打開し、地方創生を進めるためには一朝一夕では立ち行かない。抜本的な制度やシステムのイノベーションが必要だ。その方法として、「働き方(休み方)改革」の一環としての「ワーケーション」と、「学校改革」という意味での「日本のミネルバ大学(オンライン大学)の創設」を提案したい。共通するコンセプトは「マルチ・ベース」。すなわち、都市と地方の両方をベースにして働き、学ぶことにある。

これまでの働き方は、都市にある職場に毎日通勤し、休暇を取って地方へ観光に出かけるという方法がふつうだった。学校も、毎日同じ校舎に通学し、修学旅行などで時々地方に出かけるという学び方が当たり前だった。しかし、インターネットが普及した現在、「こうしたやり方は古い」といえる時代にしていかねば、地方創生の実現は難しいと思う。

日本航空株式会社は2017年夏より、「ワーケーション」という仕事と休暇を組み合わせることができる制度を導入する。本誌ではこれまで「ビジネス」と「レジャー」を合わせた造語「ブリージャー」として紹介してきた働き方で、「ワーク」と「バケーション」を融合し、出張先で有給休暇を取ったり、休暇先でもテレワークで業務を行う日を設けたり、場所と時間を指定せずに自由に働けるスタイルである。

同社では、主に海外での休暇やテレワークを想定しているようだが、今後、国内の各地に設置したサテライト・シェアオフィス等をベースに働くことを推進する企業も出てくれば、国内でも仕事と休暇の融合が起きてくるだろう。サテライトオフィスにはホテルを併設し、短長期の滞在もできるようにしておく。むしろ、既存のリゾート施設にシェアオフィスを設置するリノベーションを図るほうがより現実的だろう。そして、サテライトオフィスを起点に有給休暇を取れば、余計な交通費をかけずに観光もできる。

毎日同じオフィスに缶詰めとなり、上司が残業している間は帰れない「忖度残業」が蔓延し、往復2時間かけて週5日通勤することを考えれば、週1回往復6時間かけてでも自然環境豊かなサテライトオフィスに出かけ、オンラインで業務を行い、いつでも有給休暇が取れる環境で仕事をしたほうが労働生産性は確実に高まると思う。

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未来を予言する一枚のグラフ

2017/07/03 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─地方の若手経営者勉強会では何を学んでいるのか─

1. インバウンドは間もなく減少する

毎月1 回、本州中部の温泉地で次世代を担う若い経営者たちで勉強会を開催している。この町は星が美しく、現在は多くの来訪者があり、旅館もそこそこの稼働率を維持している。しかし、いつまでもこの賑わいは続かない。そう思ったまちづくり会社のリーダーが勉強会を主宰した。

勉強会は一風変わっていて、「インバウンドは間もなく減少する」「マイカー客は徐々に消滅する」「人口は都市に一層集中していく」といった予言に基づき行われている。現在を起点に将来を見通す「フォーキャスティング」に対して、このようなやり方を、未来を起点に現在何をすべきか考える「バックキャスティング」と呼ぶ。このような発想ができると、相当の危機感が芽生えると同時に、腑に落ちたように今何をすべきかを共有できるのだ。

インバウンド(訪日外国人)は、2030年に6,000万人という政府目標があり、今後も増えていくと信じている人が多い。筆者もそうなって欲しいとは願っている。しかし、政府目標は、個人資産を持つ高齢者にアパート投資を誘導・促進させたい政府が、アパートを建てると相続税課税時の評価額を下げることができる相続税法改正と並行して、既に飽和状態に達している賃貸住宅という需要以外にも「(訪日外国人の)民泊」という市場があり、その将来性があることを示すために発表したものと考えることもできる。東京オリンピックという、たった3 週間の「瞬間的需要」に対応するという理由もあるかもしれないが、住宅宿泊事業法(民泊新法)の成立を急いだ理由はそこにあるのではないかと思う。

そのため、この勉強会ではインバウンドの話題は(外国人のための環境整備は粛々と進めながらも)脇に置いておく。それよりも優先して行うべきことがあるためだ。今、地方観光地が取り組むべき最も大切なことは「(これまでにない)内需の創造」だ。

2.一枚の予言書

ここに一枚のグラフがある。このグラフが未来の予言書にあたる。国連の人口データに基づき、世界主要国の「生産年齢人口」の比率を1950年から2050年までの100年にわたり表したものだ。

日本は、赤い折れ線で示してある。Aと示した年から急激に落ち込んでいるが、Aとは実際に日本の生産年齢人口が減少をし始めた1997(平成9 )年にあたる。

AとBの間をみて欲しい。Bはほぼ現在にあたり、この間はちょうど20年。この間が「失われた20年」と呼ばれた期間だ。この間、日本だけが生産年齢人口を減らしている。日本は1960(昭和35)年から10年間、世界のトップを走った時期があった。ここが「高度経済成長期」である。その後、トップのバトンは(バブル期に日本に戻る時もあったが)ロシア、韓国を経て中国に渡った。2010(平成22)年以後急伸した日本のインバウンド需要は、AとBとの間に生産年齢人口が伸びた中国や東南アジアといった国々の経済成長の恩恵である。

問題はB以後、すなわちこれからである。Bは、棒グラフで示した「地球上全ての国の生産年齢人口」のピークにもあたる。これから、欧州、米国、中国、ロシア、韓国等の主要なすべての国の生産年齢人口が減少していく。すなわち、これからは多くの国々が過去に日本が味わった「失われた20年」を同じように味わうことになる。

失われた20年の間に日本に起きたことは「実質賃金の低下」、「海外旅行者(出国者)の頭打ち」、「国内宿泊旅行実施率の低下」などである。もしこうしたことが他国でも起きると仮定すれば、インバウンドが今後も急伸し続けることを合理的に証明することは難しい。

GDPとは、生産年齢人口と労働生産性の積と考えれば、今後世界中が労働生産性を高めていかない限り、経済成長は止まる。資本主義限界論が生まれるのはこのためである。欧州や米国で現在起きている保護主義や移民排斥の流れも、このグラフから推察ができる。

生産年齢人口の減少に伴い、労働生産性を追求していく結果起こるのが、人口知能(AI)が人類の能力を超え、成長曲線が無限大となる2045年のシンギュラリティ(技術的特異点)である。その頃、日本の生産年齢人口は50%となり、かつて世界が経験したことのない高齢化社会に突入しているが、いったいどのような時代になっているのだろう。

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デュアルワークが拓く地域の未来

2017/06/01 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─仕事と観光の融合が導く「働き方改革」─

1.ブリージャーとは

官庁からの依頼で地域へのアドバイス業務が続いた。仕事をいただくのは有難い限りなのだが、その後の旅費精算が毎度の悩みの種。事務局と何度もやりとりをすることを考えると、受ける前から気持ちが沈む。例えば、こういう例が多い。広島での業務の翌日、東北へ飛んで同様の仕事。その際、広島・仙台間を空路で結べば、時間的にも費用的にも効率的で生産性が上がる。しかし、それぞれの発注官庁はいずれも東京からの往復新幹線代での精算を求めるため、それに従うと時間も費用も無駄にすることが多いのだ。

一方、欧米の成熟国家でトレンドとなりつつある仕事のスタイルが「ブリージャー(Bleisure)」。ビジネス(Business)とレジャー(Leisure)を合わせた造語で、発音を喜び(Pleasure)にかけている。この新語は、昨年から流行りはじめ、世界的なOTA(オンライン旅行予約サイト)のBooking.comの「2017年旅行トレンド予想」で堂々の2位に輝いた。ブリージャーとは「業務出張旅行のついでに現地観光旅行をしてくる旅のスタイル」で、以前から国際会議での「エクスカーション(会議の後のミニ観光)」等でも知られている形態である。

こうした旅ができるのは、ごく一部のエグゼクティブや個人事業主など、経費を自由に使える層というのがお決まりだった。しかし、企業としてこうしたスタイルを認めていかないと人材確保ができず、かつこちらのほうがより生産性が上がることが明らかになってきているのだろう。CNNニュースでは、「クライアントの現地を訪ねてビジネスを行う際、事前に現地で数日間くつろぐことにより、より現地の都市や文化の理解を得ることができ、かつ自分自身も癒されることで、その後の業務を効果的に行うことができる」という実体験が紹介されている。

日本でも、週末を利用して現地で温泉を楽しみ、その後に出張業務を行うということが当たり前になればよいが、そんな話をしただけで、現時点では経理上否定されるのは間違いない。日本の組織管理の制度は、「出張者は何か悪さをする」と「性悪説」にのっとっているためだ。ふたつの業務出張を合わせただけで旅費問題が起こる国。こんな状況では、生産性向上も地方創生も遠い道のりだが仕方ない。欧米を参考にしつつ、日本流の生産性向上と地方創生を考えていかねばならない。

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持続可能な地域づくりとは

2017/05/01 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─海士町(あまちょう)「島会議」で垣間みた成功の秘訣─

1.海士町の「島会議」

島根県の日本海に浮かぶ隠岐諸島に「海士町」という町(中ノ島の一島一町)がある。サザエや岩牡蠣、アワビなどの水産資源に恵まれた小さな島だ。

海士町は、「地域振興」の面では知らない人がいないほど知られた町でもある。人口減少で財政危機に瀕していたが、あえて風土の違う周辺の島々との合併を回避して自立の道を選び、民間出身の町長が指揮を執り町の特別職や職員の給与カット等の徹底した行財政改革を行った町だ。

この海士町で、先日「観光協会の挑戦」というテーマで観光関係者向けの「島会議」が開催された。島会議とは、海士町で地域に関する特定のテーマについて議論し、飲みあかしながら語る会である。これまでに13回、定住や教育など地域に関わるテーマで、のべ1,000人以上の方々が参加してきた。今回のテーマは「観光」。観光庁や地域経済活性化支援機構(REVIC)等の観光関連組織や島根県をはじめ全国の観光協会の担当者が100名以上集まった。それだけ、海士町の取り組みから学び、変わるきっかけをみつけようとしている地域が多いことがうかがえる。

今回は、「観光協会はどうすれば収益事業を行う組織になり得るか」という論点が設定されていたこともあり、私も興味を持ち参加してきた。観光協会が収益事業をおこなう点に関しては海士町もその先駆者として知られている。

しかし、学ぶ側としての問題は、海士町での様々な改革や取り組みが「海士町だからできるのだ」という言い訳で終わってしまう点だった。「あんなにすばらしい町長がいれば」「行財政改革ができれば」「10年間で400人以上ものIターン者がいれば」と、「だから、ウチではできない」と帰結してしまうことが多かった。いわゆる「たられば」は先進地事例を紹介しても往々にしてよくある反応ではあるが、やはり今回の参加者も同じように感じるのか、もしそうだとしたらその差は何なのかを探ろうと思ったことも目的のひとつだった。

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「地方創生」は時代の流れ

2017/04/03 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─期待される人口減少時代のイノベーション─

1.資本主義の限界

「地方創生」が政策課題となって久しい。日本創生会議(増田寛也座長)の通称「増田レポート」は、人口減少、とりわけ20~39歳の女性の減少が出生数の低下を誘発し、「2040年までに896の自治体が消滅する」と予測した。そのため、地方での女性の雇用創出やその障壁と想定される扶養者控除等の制度改革、あるいは長時間労働の是正等に取り組む「働き方改革」など、国を挙げた政策課題になっている。

しかし、そもそも地方創生のキッカケとなった「人口減少」は、長期的視点で考えると「資本主義の限界」という歴史上の必然だろう。人口減少の解決のためのテクノロジーは限界コストをゼロにまで押し下げ、結果として雇用を創出する以前に、雇用ニーズがテクノロジーにとって代わるというジレンマも露呈しつつある。限界コストがゼロになるということは、金利もゼロとなるということでもあり、「資本を投資しても利潤が出ないということは、資本主義の終焉を意味する」(「資本主義の終焉と歴史の危機」水野和夫著)。

今、歴史の狭間に生きる私たちは、どのような将来を予測すればよいのだろうか。そして、地方の存続と活性化のためにできることは何だろうか。少なくともそれは、過去の延長線上にあるものではなく、様々なイノベーション(破壊的創造)を経て得られる全く新しい仕組みのもとに実現できるものではないだろうか。本連載では、地方の観光業を事例として、地方創生時代に求められるイノベーションについて考えていきたい。

2.生産性追求の時代

現在、宿泊業界では「住宅宿泊事業法案(通称、民泊新法)」の国会審議に向けた議論が白熱している。Airbnb(エアービーエンビー)等のマッチングサイトを通じて、自宅やアパートの1室を事実上ホテルとして使うことを一定程度認めるという法案だ。なかには投資を誘導して民泊専用アパートを建てさせるという動きもあり、宿泊事業者は猛反発をしている。また、タクシー業界に目を向けると、Uber(ウーバー)が普及しつつあり、タクシーや代行業者に代わり、個人が運転するマイカーをタクシー代わりに有償利用する仕組みが世界的に広がりをみせ、こちらもタクシー事業者は反対ののろしを上げている。そのほかにも、自宅の軒先をミニ店舗として、あるいは駐車場を有償で貸し出す、これまでになかった新事業が世の中に誕生している。学生が空いた時間に訪日外国人向けのガイドと通訳ができるマッチングサービスも生まれ、通訳ガイドのあり方を大きく変えようとしている。

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