海外現地レポート

第11回 上海/香港

2018/02/01 :海外現地レポート

香港  第四銀行コンサルティング推進部

広深港高速鉄道

香港では、このところ2つの大きなインフラプロジェクトに注目が集まっています。1つは香港、中国広東省珠海市およびマカオ(澳門)の3都市を結ぶ「港珠澳大橋」、もう1つは今年に開通する予定の「広深港高速鉄道」です。この2つのプロジェクトは、香港経済への大きな影響が予想されることもあって、建設工事の進捗状況が常に注目されてきました。

今回は、「広深港高速鉄道」の概要、および香港経済への影響などについてお伝えします。

広深港高速鉄道は、中国広東省広州市、同深圳市および香港の3都市を繋ぐ高速鉄道です。香港区間(全長約26キロメートル)では、起点として新たに西九龍駅(入出境検査所を含む)が建設中となっています。一方、中国本土の入り口である深圳の福田駅~広州南駅区間(全長約116キロメートル)は2015年12月に開通し、すでに高速鉄道が運行しています。

香港区間は2010年に着工、2017年7月時点で95%まで工事が進捗しており、2018年第3四半期には香港区間が完成し、全線が開通する見通しとなっています。

開通すると西九龍駅~広州南駅間が最短48分で結ばれます。香港の紅磡(ホンハム)駅~広州東駅間を結ぶ同様の越境列車(九広鉄路)はすでに運行していますが、約2時間を要するため、高速鉄道の開通により、移動時間が大幅に短縮されます。

また、広深港高速鉄道の開通により、総延長距離20,000キロメートル以上に及ぶ中国本土の高速鉄道ネットワークを利用し、中国本土各都市にアクセスすることが可能となります。具体的には、北京市(約8.5時間)、上海市(約7.5時間)、武漢市(約4.5時間)などの都市に、香港から乗り継ぎなしで直接アクセスすることが可能となる予定です。

香港政府は2017年7月、広深港高速鉄道の西九龍駅構内に香港と中国本土双方の入出境検査所を設ける制度(一地両検)案を発表しました。同制度の発案は、入出境検査所を香港と中国本土との境界に設置すると、乗客が一旦降車して入出境手続きを行なわなければならないため、高速鉄道の意義が薄れてしまうことが背景にあります。

しかし、同制度に対する反対の声もあがっています。民主派議員は、駅構内の中国本土の管轄区域では中国の法律が適用されるため、中国当局が警察権や司法権を行使できることから、一国二制度が脅かされると発言しています。そのほか、一部の香港市民の間でも、中国当局が香港域内での活動範囲を拡げることへの警戒感が高まっています。

広深港高速鉄道の完成によって、香港経済は様々な面でその恩恵を享受していくとみられます。そのため、これらのプロジェクトが相次いで開通する2018年は香港にとって大きな転換点であるといえます。

一方、香港が中国本土との関係をより一層強めることへの不安感や警戒感が一部の香港市民の間で高まっているのも事実です。香港政府は今後、中国本土からの経済的恩恵を享受しながらも中国本土への警戒感を強める複雑な民意をどのようにコントロールしていくのか、その動向が注目されます。

(香港派遣 相澤 寛行)

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第10回 上海/バンコク

2018/01/04 :海外現地レポート

バンコク   第四銀行コンサルティング推進部

バンコク都民の悩み

タイの季節は地域により少し異なりますが、一般的に雨季、乾季、暑季の3つの季節に分けられます。11月〜2月の乾季は比較的雨も少なく、気温もあまり高くないので過ごしやすい日が続きます。一方、3月〜5月の暑季はタイで最も暑い時期となり、雨も降らず乾燥していますが、連日40℃近い気温になります。6月〜10月の雨季は名前の通り雨の多い時期ですが、新潟の雨の様に一日中降り続くことはなく、ゲリラ豪雨の様な強烈な雨が1〜2時間降り、雨が止んだ後はカラッとした天気になります。

そんなバンコクの生活のなかで最も厄介なのが雨季における道路の冠水です。日本のニュースでも取り上げられていましたが、10月13日から14日にかけて、約30年ぶりの記録的な豪雨が降り、バンコク首都圏内の55カ所で道路が冠水、建物浸水などの被害が多数発生しました。このニュースだけを聞くと、あたかもこの時だけ記録的な豪雨が降り、道路が冠水したように思えますが、そうではありません。雨の降り方にもよりますが、雨季の時期には写真の様に車道が完全に冠水するようなことも少なくありません。そして、道路の冠水により世界トップクラスの渋滞に拍車をかけるのです。

バンコク首都圏庁によれば、都内で発生する冠水の原因は主に不適切な廃棄物処理が原因とのことです。バンコク都内を流れる運河や河川には不法投棄により1日約10トンもの粗大ごみが堆積します。またバンコクの観光名所として有名な屋台が流す油が管路内の水流を妨げ、排水パイプを詰まらせ、冠水を発生させているとのことです。

一方、カセサート大学のシターン氏によれば、不適切な廃棄処理だけでなくバンコクの下水道システムに大きな問題があると指摘します。バンコクの下水道システムは降雨による雨水と家庭等の汚水を一つの管路で下水処理場まで送る方式を取っています(日本では環境汚染対策として雨水と汚水を別々の管路で送る分流式)。そのため、ひとたび強烈な雨が降ると排水能力が追い付かず、雨水分が溢れだしてしまうのです。

こういった冠水の被害を軽減するべく、首相が都民に対して、運河や排水溝への廃棄物投棄を止め、適切に処理するよう訴えました。そして、バンコク首都圏庁も粗大ごみの捨てられる日を指定し、テレビや電車内でもごみのポイ捨てや不法投棄を止めるようCMで啓蒙活動を積極的に行なっています。また、タイ政府も日本でお馴染みの「3R(Reduce、Reuse、Recycle)」を打ち出し、毎週月・水・金でレジ袋の禁止運動を開始し、大手小売店を中心にマイバックの普及を試みています。ただ、街を歩いている限りでは、ごみのポイ捨ては相変わらず目立ち、バンコク都民に浸透するにはまだまだ時間がかかりそうです。

ASEANの中心として、経済発展を続けるタイですが、こういった発展途上な面はまだまだあります。そういった部分に日本の商品の販売、システムの導入することで、人々の生活の悩みを解決することができるのかもしれません。

(バンコク派遣 日下部 尚之)

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第9回 上海/香港

2017/12/01 :海外現地レポート

上海     第四銀行上海駐在員事務所

「80後(バーリンホウ)」「90後(ジウリンホウ)」に注目

1980年代から2000年代初頭までに生まれた世代を指す「ミレニアル世代」という言葉を聞いたことがありますか。今後の消費を担っていく世代として注目されています。中国では「80後」「90後」と呼ばれる1980年代生まれ、90年代生まれにあたる世代がミレニアル世代に該当します。この世代は1979年から始まった「一人っ子政策」後に生まれた世代で、中国が経済成長を遂げ、物質的に豊かになっていく時代の変化のなかで成長してきた世代で、2017年現在、17歳~37歳になっています。

しかもこの世代の人口は、アメリカの人口を上回る約4億2,600万人(※)にもおよび、中国全人口の約3分の1を占めています。今回はこれからの消費の主役となる「80後」「90後」の消費動向に注目したいと思います。

「80後」「90後」世代は、「一人っ子として大事に育てられたため、わがままで協調性がない」「両親・祖父母など親類からお金を援助してもらえるので、幼い頃から何でも欲しいものを手に入れてきた」という局面だけが強調されることが多いようです。このような傾向はありますが、上海生活で出会う「80後」「90後」世代の印象は少し異なります。

例えば、自分の人生経験を豊かなものにするため、あえて一人でカンボジア旅行にいく人。日頃のデスクワークによる腰痛を緩和するため、週末は積極的にヨガスタジオに通い体調管理に努める人。より多くの外国人と交流できるようになるため、日本語、英語、ドイツ語など母国語以外の複数の言語習得に力を入れる人等、彼らは暮らしの質を高め、自身の人生を有意義なものにすることを重視し、このような消費への投資を惜しまない点がこれまでの世代と異なります。

 

越境EC(国を超えた電子商取引)やインバウンドに代表される、中国市場における日系企業のBtoC向け活動のほとんどは富裕層を主要ターゲットにしています。しかし、富裕層に注目するだけで中国市場を網羅することは難しいといえます。先に示したとおり、「80後」「90後」世代の人口は、中国全人口の約3分の1を占め、彼らが今後の消費の主役となります。

彼らの特徴は、多様な価値観を持ち、自分にとって必要だと思うモノ・コトへの投資は惜しまないこと。中国市場を開拓するには「80後」「90後」世代に共感してもらえる商品・サービスを提供することが肝要となります。中国の消費市場は目まぐるしいスピードで変化しているため、中国に実際に足を運び「80後」「90後」世代が何に興味を持っているのかを目でみて肌で感じることが有効ではないでしょうか。

※「Population pyramids」社調査2016年末数値

(柄澤 雄) 続きを表示…

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第8回 上海/バンコク

2017/11/01 :海外現地レポート

バンコク   第四銀行コンサルティング推進部

タイにおける日本の注目度

トルコや台湾と同様に親日国として有名なタイですが、タイを訪れたりしない限りは本当に親日なのかと、なかなかイメージすることができないかもしれません。JETROの調査によれば、タイに進出している日系企業は2014年の段階で4,567社となっており、日系企業はタイの学生にとって非常に人気のある就職先です。

また、タイ国内には現在約2,800店もの日本食レストランがあり、寿司やラーメンは勿論、お好み焼きやちゃんこ鍋のお店もあります。このように数字だけをみても、タイにおいて日本の文化がいかに浸透しているかがお分かりになるかもしれませんが、今回は、実際に参加したイベントについてご紹介し、タイにおける日本への関心の高さをお伝えしたいと思います。

JAPAN EXPO IN THAILANDは日本の文化、観光、食、就職等をタイでPRするイベントで、9月1日~9月3日の3日間バンコク市内の大型デパートにて開催されました。日本ではフランスやアメリカでのJAPAN EXPOの状況がよく報道され、漫画等のサブカルチャーの面が特集されがちです。ただ、タイにおいては観光誘致を図る地方公共団体、外国人留学生の受け入れを狙う大学や高校などの教育機関、販路開拓やテストマーケティングの為に出展する企業等様々な企業・団体がアピールを行なっていました。

9月1日と9月3日の2日訪れましたが、9月1日は平日にも関わらず多くのタイ人が訪れており、最終日の9月3日(日)はそれを上回るタイ人で埋め尽くされていました。JAPAN EXPOは日本への留学や就職に関心のある若者が多く来場し、タイの若者の性格や嗜好を調査するには絶好の機会になるかもしれません。

ビジットジャパンFITトラベルフェアは個人旅行に特化したイベントで、9月22日~9月24日までの間、こちらもバンコク市内の大型デパートにて開催されました。日本政府観光局(JNTO)の調査によれば、タイ人の訪日旅行者数は2015年657千人、2016年796千人と年々増加しており、2017年も2016年を上回るペースでタイ人観光客が日本を訪れています。実際に各ブースを覗いてみると、タイ人が各地方都市や観光地へのアクセス方法、周辺施設の情報等を熱心に聞いており、その場で日本行きのフライトやホテルを予約するタイ人も多いとのことです。タイ人の多くはソンクラーンという、4月の連休中に日本を訪れ、雪や桜、温泉などを楽しみます。そして、InstagramやFacebookにそれらの写真をアップするのが彼らの楽しみ方となっています。

上記二つのイベント以外にもタイでは日本に関連した多くのイベントが行なわれています。また、タイはASEANのほぼ中心に位置し、近年注目されているベトナム、カンボジア、ミャンマーなどへのアクセスも非常に容易です。親日であり日本への関心の高いタイを足掛かりに、それらの国々への展開を検討されるのは如何でしょうか。

(バンコク派遣 日下部 尚之)

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第7回 上海/シンガポール

2017/10/02 :海外現地レポート

シンガポール   第四銀行コンサルティング推進部

Majulah Singapura    進めシンガポール

高度に都市化され、アジア有数の経済大国として存在感を示しているシンガポールですが、その国家としての歴史はあまり長くはありません。今から52年前、1965年8月9日にマレーシアから独立をはたし、シンガポールは誕生しました。以降毎年8月9日は、シンガポールのナショナルデー(独立記念日)として多くの国民に祝福されています。今回は本年のナショナルデーを体感した感想をシンガポールの独立の経緯、国民性について触れながらレポートします。

近代シンガポールの歴史は、その地理的な重要性に着目したイギリス人のラッフルズが、1819年に上陸したことに始まります。ラッフルズの上陸後、イギリスがこの地を植民地支配し、その支配は第2次世界大戦期の日本による占領をはさんで1957年まで続きます。

1957年、シンガポールはマレーシア連邦の一部として独立をはたし、ようやくイギリスの支配下からは脱することとなりました。しかしながら、マレーシア中央政府はマレー人優遇の政策を採ろうとし、それに対して華人の割合の多いシンガポールでは反対運動がシンガポール人民行動党(PAP)を中心に巻き起こりました。対立は深まっていき、ついに1965年8月9日、シンガポールはマレーシア連邦から独立することとなりました。

初代首相にはPAPのリー・クアンユーが就任し、以後、リーの強力なリーダーシップ、PAPの強固な一党独裁体制のもと、この国は発展を遂げてきました。シンガポールの建国の精神は「Majulah Singapura(マジュラ シンガプーラ)」、マレー語で「進めシンガポール」の意味です。この言葉はこの国の標語であり、国歌のタイトルにもなっています。

Majulah Singapuraの精神は、この国が資源もない小国で、苦難を経て独立したため、「とにかく前に進むしかなかった」という状況を象徴するものだと私は感じています。

国民はPAPの強固な独裁体制の下で成し遂げられた経済成長の恩恵にあずかっており、国政への満足度も高い状況です。

この国では政府(=PAP)による住宅政策として、HDBと呼ばれる公団住宅が整備されており、国民の8割がHDBに居住しています。ナショナルデーでは多くのHDBで国旗が掲げられ、祝福のムードが強く漂っています。また、ナショナルデー当日の式典会場は国のシンボルカラーである赤を身に着けた人々で埋め尽くされ、国民の国家に対する深い愛着を感じることができます。イベントの標語ももちろんMajulah Singapuraです。この言葉は繰り返し語られ、国家の一体感を示しています。

独立から50年余り、シンガポールは前に進み続け、発展を勝ち取ってきました。これからもこの国は発展を続けることと思います。

シンガポールへの研修生派遣を終了することに伴い、シンガポールレポートはいったん終了します。これまでお伝えしてきたように、シンガポールにおいても新潟をアピールする活動が行われております。また、最近になって新潟でも新潟とシンガポールとの連携を図る団体が設立されています。今後は遠く離れた新潟からシンガポールの発展を見守っていければと思います。それでは最後はこの言葉で締めくくります。

Majulah Singapura !

(シンガポール派遣 野澤 広樹)

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第6回 上海/シンガポール

2017/09/01 :海外現地レポート

シンガポール   第四銀行コンサルティング推進部

異国の地から故郷を想うシンガポールにおける新潟県人のつながり

異国の地で生活するということは不安が大きいものですが、そんななかで同郷の人々とつながりを持てることはとても心強いものです。在留邦人登録数が3万7千人を超えるここシンガポールでは、各都道府県の県人会、大学の同窓会、スポーツのサークルなど、日本人による多くのコミュニティが結成されており、交流を深めています。そんななか、新潟県にゆかりのある人々は「シンガポール新潟県人会」を結成し、精力的に活動をしています。今回は、新潟県人会を中心に、新潟県人のシンガポールでの結びつきについてご紹介します。

シンガポール新潟県人会は1990(平成2)年に設立されました。当時のシンガポールは、製造業の進出が多い時代で、県人会も当初のメンバーは製造業関係者が中心でした。ところが、シンガポールの経済発展により産業構造は変化、製造業の拠点は中国などへと移管されたために、製造業の方々はシンガポールを去りました。新潟県人会もメンバーは減少し、苦しい時代を迎えましたが、現会長の野村さんをはじめとした永くシンガポールに暮らしている方々の尽力により会は守られ、現在に至るまで続いています。

現在では、職業も年齢層も多様なメンバーが所属しています。新潟県人会には特別な参加資格はなく、新潟を愛する心を持つ人なら、出身地や国籍を問わず、誰でも参加できます。活動は、数か月に一回の会合(飲み会)や、日本人会主催のソフトボール大会への参加など、幅広く行なわれています。会合は和やかな雰囲気で行われ、参加者は郷土の日本酒を片手にふるさと談議に花を咲かせ、気づいた時には何本もの瓶が空になっています。

シンガポールにおける新潟県人は県人会で集まって郷愁に浸るだけにとどまらず、シンガポールの人々にもっと新潟を知ってもらいたいと精力的な活動をしている人もいます。去る7月25日から29日、シンガポール随一のリゾートホテル「シャングリ・ラ ラサセントーサ」にて新潟の酒とそれに合わせたコース料理を楽しめるイベントが開催されました。このイベントは、このホテルのシェフで、新潟県出身の堰さんが企画をしたものです。堰さんは「新潟は食に関してすごくいいものを持っている。これを広めたい。」といいます。新潟の良さを知ってもらいたいという気持ちを、シェフとしての立場から実行しようと、堰さんはこのようなイベントを企画したのです。

シンガポールにおける新潟の知名度は現在のところ高くはなく、またこのイベントも今回が最初の取り組みであり、まだまだ発展途上といえます。しかしながら、シンガポールには多くの新潟県人がいること、シンガポールは平均所得が高く日本からみたインバウンド効果が期待できる国であることから、シンガポールにおいて新潟を広めることは、我々シンガポールにいる新潟県人が故郷のためにできる使命の一つといえるでしょう。離れたことで分かった故郷の良さ。それをシンガポールに伝えるシンガポールの新潟県人は、遠く離れた異国の地から新潟を応援する良きサポーターです。

(シンガポール派遣 野澤 広樹)

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第5回 上海/香港

2017/08/01 :海外現地レポート

香港   第四銀行コンサルティング推進部

香港の外国人家政婦─阿媽─(アマ)

世界でも有数の住宅価格の高さを誇る香港であるが、米国のコンサルティング会社の調査(※)によると、香港市民の2016年の住宅購入負担は年収18.1年分で、7 年連続で世界一となった。

高すぎる住宅価格は賃料の高騰を引き起こし、高い住宅賃料を支払うため、香港では子供がいる世帯では夫婦共働きが一般的となっている。そのような社会環境から、香港の家庭では、外国人家政婦(香港では阿媽(アマ)と呼ばれている)を雇うことが広く普及している。

阿媽の多くは、主にフィリピンやインドネシアからの出稼ぎがほとんどで、近年では、ミャンマーなどからも受け入れている。また、阿媽に従事している東南アジアの国々の人々の数は、およそ34万人といわれている。香港政府統計処によると、直近の香港の世帯数が約250万世帯(2016年)であることから、いかにその需要が多いかがわかる。

香港の阿媽は住み込みで働くことが一般的で、香港のアパートには専用の小部屋やバスルームが併設されていることが多い。週6日(香港では金融機関などは土曜日も午前のみ営業している)家事に従事し、住み込みではプライベートと労働の区別が難しく、長時間労働となっていることがしばしば問題となる。そのような環境から休日には、香港の中心地、中環(セントラル)や商業地、銅鑼湾(コーズウェイベイ)にあるヴィクトリアパークなどでは、同じ境遇にある人々で溢れる。同郷からきた人々どうしで会話をしたり、ダンスを踊って限られた余暇を楽しんでいる光景は香港名物となっている。

日本では、今春から国家戦略特区(東京都・神奈川県・大阪市)で外国人の家事代行サービスが始まった。家政婦というと富裕層が雇う「お手伝いさん」というイメージが日本では強い。しかし、香港では、外国人は一般的な家庭でも平日の家事や育児の担い手として活用されていることに加え、高齢化社会の進展により、高齢者の介護を目的として雇用される場合も多い。

また、日本で今般開始された家事代行サービスは、派遣される外国人側にとっても、サービスを利用する側にとっても、香港に比べハードルが高いものとなっている。派遣される外国人側の障害として、「言語」の問題がある。派遣基準の中に基本的な日本語を理解する能力が必須となる。また、利用する側にとっては、「コストの高さ」がある。住み込みとスポット利用の違いはあるが、1日3時間で1万円程度と、香港に比べ、まだまだ広く一般向けの料金とはいえないだろう。

日本では始まったばかりで、様々な課題はあるものの、業界によっては人手不足が深刻化するなか、家事や高齢者介護負担を減らして女性活躍をさらに推進するため、また働き方改革の一助となるべく、香港のように外国人家政婦サービスを効果的に活用されることを期待したい。

(※):世界406都市を対象に調査が行われ、香港は(香港の住宅価格中央値約542万香港ドル(約7,588万円)/世帯年収の中央値約30万香港ドル(約420万円)≒18.1倍。調査では5.1倍以上の地域を「購入負担が深刻な地域」に分類している。日本では、東京・横浜が4.7年分、大阪・神戸・京都が3.4年分となっている。

(寄稿時1 香港ドル=14円で試算)

(香港派遣 泉田 雄)

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第4回 上海/バンコク

2017/07/03 :海外現地レポート

上海     第四銀行上海駐在員事務所

観光競争力を高めるために

日本政府観光局(JNTO)の発表した2017年4 月の訪日外客数は、前年同月比23.9%増の257万人となり、単月として過去最高となった。政府の訪日外客数を増やすための取り組みの成果が着実にあらわれている。今後、日本がさらに観光競争力を高めていくために何が必要か、世界各国の観光競争力を相対的に比較するランキングや観光庁の調査結果をもとに考えてみたい。

ダボス会議で有名な世界経済フォーラムは世界各国・地域の旅行、観光業の事業環境や競争力を公開データに基づき「観光競争力ランキング」として隔年で発表している。最新版である2017年のランキング(136の国、地域)では、日本は過去最高の4 位となり、前回15年の9 位から大きく順位を上げた。日本文化に関する項目や情報通信技術(ICT)、交通などのインフラ面の評価が総じて高いほか、政府が旅行、観光分野をどれだけ重んじているかを示す評価項目において大きな改善がみられた。

一方、評価が低い項目から、日本の課題がみえてくる。外国人に対するビジネス環境、テロに対する安全性、価格競争力、自然環境の保護やその持続可能性など日本人が他国に比べ優れていると感じている項目における評価が低い。総合順位で上位3 カ国のスペイン、フランス、ドイツをみると、自然環境の保護や持続性に関する項目の評価は総合順位と同じく高い。さらに、アジア諸国でもこれらの指標の改善が進んでいる。こうした結果から、自然環境や動植物を含む生態系と調和した産業育成という観点が、世界の国々との競争に必要であるといえる。

観光庁が外国人旅行客に対して実施したアンケート調査の「旅行中に困ったこと」という設問への回答結果をみると、「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」「無料公衆無線LAN環境」「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」など、コミュニケーションにおける課題が浮かび上がってくる(図表1 )。

こうした問題への対応策を上海市内の観光地での取り組みを例に考えてみる。上海市内では、日本でおなじみの観光案内板や紙媒体の案内冊子を目にすることが少ない。観光施設周辺には無料公衆無線LAN環境が整備されており、外国人旅行客はスマートフォンをWi-Fiに接続して、施設に表示してあるQRコードから施設周辺の観光情報をダウンロードする。この観光情報は中国語だけでなく、英語、日本語など多言語対応しているほか、いつでも最新の観光情報にアップデートされている。

従来、日本が観光情報の発信に用いてきた、観光案内板や紙媒体の案内冊子は都市の景観を損ねる、ゴミが増えるといった問題が指摘されている。テクノロジーを活用すれば、維持コストのかかる設備投資(看板など)を行わずとも持続性が高く、地域の環境や市民生活への負荷をおさえた観光産業の育成ができるのではないか。長期的視野に立った地域資源の持続可能性を軸に観光戦略について再考していく必要がある。

(柄澤 雄)

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