海外現地レポート

第6回 上海/シンガポール

2017/09/01 :海外現地レポート

シンガポール   第四銀行コンサルティング推進部

異国の地から故郷を想うシンガポールにおける新潟県人のつながり

異国の地で生活するということは不安が大きいものですが、そんななかで同郷の人々とつながりを持てることはとても心強いものです。在留邦人登録数が3万7千人を超えるここシンガポールでは、各都道府県の県人会、大学の同窓会、スポーツのサークルなど、日本人による多くのコミュニティが結成されており、交流を深めています。そんななか、新潟県にゆかりのある人々は「シンガポール新潟県人会」を結成し、精力的に活動をしています。今回は、新潟県人会を中心に、新潟県人のシンガポールでの結びつきについてご紹介します。

シンガポール新潟県人会は1990(平成2)年に設立されました。当時のシンガポールは、製造業の進出が多い時代で、県人会も当初のメンバーは製造業関係者が中心でした。ところが、シンガポールの経済発展により産業構造は変化、製造業の拠点は中国などへと移管されたために、製造業の方々はシンガポールを去りました。新潟県人会もメンバーは減少し、苦しい時代を迎えましたが、現会長の野村さんをはじめとした永くシンガポールに暮らしている方々の尽力により会は守られ、現在に至るまで続いています。

現在では、職業も年齢層も多様なメンバーが所属しています。新潟県人会には特別な参加資格はなく、新潟を愛する心を持つ人なら、出身地や国籍を問わず、誰でも参加できます。活動は、数か月に一回の会合(飲み会)や、日本人会主催のソフトボール大会への参加など、幅広く行なわれています。会合は和やかな雰囲気で行われ、参加者は郷土の日本酒を片手にふるさと談議に花を咲かせ、気づいた時には何本もの瓶が空になっています。

シンガポールにおける新潟県人は県人会で集まって郷愁に浸るだけにとどまらず、シンガポールの人々にもっと新潟を知ってもらいたいと精力的な活動をしている人もいます。去る7月25日から29日、シンガポール随一のリゾートホテル「シャングリ・ラ ラサセントーサ」にて新潟の酒とそれに合わせたコース料理を楽しめるイベントが開催されました。このイベントは、このホテルのシェフで、新潟県出身の堰さんが企画をしたものです。堰さんは「新潟は食に関してすごくいいものを持っている。これを広めたい。」といいます。新潟の良さを知ってもらいたいという気持ちを、シェフとしての立場から実行しようと、堰さんはこのようなイベントを企画したのです。

シンガポールにおける新潟の知名度は現在のところ高くはなく、またこのイベントも今回が最初の取り組みであり、まだまだ発展途上といえます。しかしながら、シンガポールには多くの新潟県人がいること、シンガポールは平均所得が高く日本からみたインバウンド効果が期待できる国であることから、シンガポールにおいて新潟を広めることは、我々シンガポールにいる新潟県人が故郷のためにできる使命の一つといえるでしょう。離れたことで分かった故郷の良さ。それをシンガポールに伝えるシンガポールの新潟県人は、遠く離れた異国の地から新潟を応援する良きサポーターです。

(シンガポール派遣 野澤 広樹)

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第5回 上海/香港

2017/08/01 :海外現地レポート

香港   第四銀行コンサルティング推進部

香港の外国人家政婦─阿媽─(アマ)

世界でも有数の住宅価格の高さを誇る香港であるが、米国のコンサルティング会社の調査(※)によると、香港市民の2016年の住宅購入負担は年収18.1年分で、7 年連続で世界一となった。

高すぎる住宅価格は賃料の高騰を引き起こし、高い住宅賃料を支払うため、香港では子供がいる世帯では夫婦共働きが一般的となっている。そのような社会環境から、香港の家庭では、外国人家政婦(香港では阿媽(アマ)と呼ばれている)を雇うことが広く普及している。

阿媽の多くは、主にフィリピンやインドネシアからの出稼ぎがほとんどで、近年では、ミャンマーなどからも受け入れている。また、阿媽に従事している東南アジアの国々の人々の数は、およそ34万人といわれている。香港政府統計処によると、直近の香港の世帯数が約250万世帯(2016年)であることから、いかにその需要が多いかがわかる。

香港の阿媽は住み込みで働くことが一般的で、香港のアパートには専用の小部屋やバスルームが併設されていることが多い。週6日(香港では金融機関などは土曜日も午前のみ営業している)家事に従事し、住み込みではプライベートと労働の区別が難しく、長時間労働となっていることがしばしば問題となる。そのような環境から休日には、香港の中心地、中環(セントラル)や商業地、銅鑼湾(コーズウェイベイ)にあるヴィクトリアパークなどでは、同じ境遇にある人々で溢れる。同郷からきた人々どうしで会話をしたり、ダンスを踊って限られた余暇を楽しんでいる光景は香港名物となっている。

日本では、今春から国家戦略特区(東京都・神奈川県・大阪市)で外国人の家事代行サービスが始まった。家政婦というと富裕層が雇う「お手伝いさん」というイメージが日本では強い。しかし、香港では、外国人は一般的な家庭でも平日の家事や育児の担い手として活用されていることに加え、高齢化社会の進展により、高齢者の介護を目的として雇用される場合も多い。

また、日本で今般開始された家事代行サービスは、派遣される外国人側にとっても、サービスを利用する側にとっても、香港に比べハードルが高いものとなっている。派遣される外国人側の障害として、「言語」の問題がある。派遣基準の中に基本的な日本語を理解する能力が必須となる。また、利用する側にとっては、「コストの高さ」がある。住み込みとスポット利用の違いはあるが、1日3時間で1万円程度と、香港に比べ、まだまだ広く一般向けの料金とはいえないだろう。

日本では始まったばかりで、様々な課題はあるものの、業界によっては人手不足が深刻化するなか、家事や高齢者介護負担を減らして女性活躍をさらに推進するため、また働き方改革の一助となるべく、香港のように外国人家政婦サービスを効果的に活用されることを期待したい。

(※):世界406都市を対象に調査が行われ、香港は(香港の住宅価格中央値約542万香港ドル(約7,588万円)/世帯年収の中央値約30万香港ドル(約420万円)≒18.1倍。調査では5.1倍以上の地域を「購入負担が深刻な地域」に分類している。日本では、東京・横浜が4.7年分、大阪・神戸・京都が3.4年分となっている。

(寄稿時1 香港ドル=14円で試算)

(香港派遣 泉田 雄)

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第4回 上海/バンコク

2017/07/03 :海外現地レポート

上海     第四銀行上海駐在員事務所

観光競争力を高めるために

日本政府観光局(JNTO)の発表した2017年4 月の訪日外客数は、前年同月比23.9%増の257万人となり、単月として過去最高となった。政府の訪日外客数を増やすための取り組みの成果が着実にあらわれている。今後、日本がさらに観光競争力を高めていくために何が必要か、世界各国の観光競争力を相対的に比較するランキングや観光庁の調査結果をもとに考えてみたい。

ダボス会議で有名な世界経済フォーラムは世界各国・地域の旅行、観光業の事業環境や競争力を公開データに基づき「観光競争力ランキング」として隔年で発表している。最新版である2017年のランキング(136の国、地域)では、日本は過去最高の4 位となり、前回15年の9 位から大きく順位を上げた。日本文化に関する項目や情報通信技術(ICT)、交通などのインフラ面の評価が総じて高いほか、政府が旅行、観光分野をどれだけ重んじているかを示す評価項目において大きな改善がみられた。

一方、評価が低い項目から、日本の課題がみえてくる。外国人に対するビジネス環境、テロに対する安全性、価格競争力、自然環境の保護やその持続可能性など日本人が他国に比べ優れていると感じている項目における評価が低い。総合順位で上位3 カ国のスペイン、フランス、ドイツをみると、自然環境の保護や持続性に関する項目の評価は総合順位と同じく高い。さらに、アジア諸国でもこれらの指標の改善が進んでいる。こうした結果から、自然環境や動植物を含む生態系と調和した産業育成という観点が、世界の国々との競争に必要であるといえる。

観光庁が外国人旅行客に対して実施したアンケート調査の「旅行中に困ったこと」という設問への回答結果をみると、「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」「無料公衆無線LAN環境」「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」など、コミュニケーションにおける課題が浮かび上がってくる(図表1 )。

こうした問題への対応策を上海市内の観光地での取り組みを例に考えてみる。上海市内では、日本でおなじみの観光案内板や紙媒体の案内冊子を目にすることが少ない。観光施設周辺には無料公衆無線LAN環境が整備されており、外国人旅行客はスマートフォンをWi-Fiに接続して、施設に表示してあるQRコードから施設周辺の観光情報をダウンロードする。この観光情報は中国語だけでなく、英語、日本語など多言語対応しているほか、いつでも最新の観光情報にアップデートされている。

従来、日本が観光情報の発信に用いてきた、観光案内板や紙媒体の案内冊子は都市の景観を損ねる、ゴミが増えるといった問題が指摘されている。テクノロジーを活用すれば、維持コストのかかる設備投資(看板など)を行わずとも持続性が高く、地域の環境や市民生活への負荷をおさえた観光産業の育成ができるのではないか。長期的視野に立った地域資源の持続可能性を軸に観光戦略について再考していく必要がある。

(柄澤 雄)

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第3回 香港/シンガポール

2017/06/01 :海外現地レポート

香港  第四銀行コンサルティング推進部

イノベーションで注目される都市「深圳」

香港と隣接する中国本土の都市「深圳」は、現在、「中国のシリコンバレー」とも呼ばれ、ハードウェア系の新興企業が生まれている街として世界から注目されている。かつて小さな漁村であったこの街は、1980年に中国初の経済特区に指定されてからわずか40年ほどで急速な発展を遂げ、今もなお進化し続けている。今回は、イノベーション都市「深圳」の今をお伝えする。

深圳からメイカーが次々と誕生している。

メイカー(maker) とは、デジタルファイル、CADや3 Dプリンタなど新しいツールやサービスを活用することで、従来多くの経営資源を持つ製造企業(メーカー)にしかできなかったモノづくりを一人や少人数で行う人々や企業のことをいう。

一般消費者向けのドローン製造で世界シェア約7 割を誇る「DJI」は、近年、深圳で生まれたメイカーの代表企業である。他にも、組み立てるだけでロボットや3 Dプリンタができるパーツやプログラミングシステムを開発販売する「Makeblock」や小型のコンピュータを開発販売する「LeMaker」など、まだ「DJI」ほどの認知度はないが、急成長している企業が多数誕生している。

そもそもなぜ今、「DJI」をはじめとする新興企業が深圳で誕生しているのか。その理由は主に3 つあげられている。1 つ目は、完成されたサプライチェーンの存在である。深圳は経済特区に指定されて以降、外資による製造業への投資を呼び込み、加工・輸出型のビジネスモデルを構築することで急速に発展してきた。当地への製造業の産業集積により、「世界の工場」と呼ばれるまでに充実していったサプライチェーンは現在、メイカーたちの試作開発や少量生産などへの対応を可能にしている。2 つ目は、メイカーの取り組みを資金面で支えてくれる投資家が増えている。前述の「Makeblock」は世界的なスマホメーカーであるファーウェイなど当地の大手企業からの出資により、支えられている。3 つ目は、メイカーを支援するサービスの充実である。深圳市政府は使用しなくなった工場跡地に、文化・クリエイティブ産業を振興するための拠点を整備するほか、メイカー同士による開発スペースの提供や部品供給など、お互いに製品開発を可能にするサービスを提供するなどしている。

深圳の現在の発展に至るまで、香港が果たしてきた役割は大きい。特に、経済特区として深圳が外資系企業の進出に開放される際には、地理的に香港と隣接していることが大きな要因であった。最近では昨年、深圳と香港の両証券取引所間の株式相互取引制度「深港通(しんこうつう)」が開始され、中国本土以外の投資家も香港を経由し、深圳企業への投資が可能となった。深圳証券取引所には新興企業向け市場もあり、今後ますますの成長が期待される前述のような企業が上場する可能性も高い。

そして、今年1 月には香港・深圳両地の境界に位置する香港側の落馬洲(Lok Ma Chau)地区にハイテク産業団地「港深創新・科技園(香港・深圳イノベーション&テクノロジーパーク)」を香港政府・深圳市共同で建設すると発表した。国内外のハイテク企業や研究・教育機関、優秀な人材を誘致し、お互いに新たな経済成長の起爆剤とする計画である。中国全体の成長減速が懸念されるなか、香港と経済的にもますます結びつきを強め、急速に発展していく深圳は、日系企業にとっても新たなビジネスチャンスが期待できる可能性を秘めており、その動向を今後も注目していく必要があるだろう。

(香港派遣 泉田 雄)

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第2回 バンコク/上海

2017/05/01 :海外現地レポート

バンコク   第四銀行コンサルティング推進部

タイのタクシー事情

タイ、特にバンコク市内の移動において、利用頻度が高いのはタクシーである。BTS(高架鉄道)やMRT(地下鉄)といった交通機関は発達しているものの、駅から離れた観光地、飲食店へ向かう際や空港への移動など、利用する機会は非常に多い。初乗り運賃(35タイバーツは約112円)も日本に比べて非常に安く、バンコク市内の大通りを歩いていればタクシーをつかまえることも容易であるため、我々駐在員だけでなく、タイの現地の人も多く利用している。その一方で、運賃メーターの不使用による請求、乗車拒否、タクシードライバーのマナーの悪さなどによるトラブルが多いのも事実である。

最近あった事例では、メーターを使用しなかっただけでなく、同じ方向に向かう別の客も同乗させ、そのうえ、目的地まで送り届けなかったケースや、乗客がエアコンの風向きを勝手に変えたことに腹を立て、ドライバーが乗客に罵詈雑言を浴びせるケースなど、タクシーをめぐるトラブルについては枚挙に暇がない。

最近では、乗客がこうしたトラブルに巻き込まれた際に、ドライバーの対応の一部始終を携帯電話で撮影し、FacebookなどのSNSに投稿。それがインターネット上で拡散し、ドライバーやタクシー業者が罰金を科せられるケースもしばしば起きている。

このようなバンコクのタクシー事情を背景に、利用者を伸ばしてきたのが「Uber」や「Grab Taxi」などのスマートフォン向け配車サービスである。これらの配車サービスは一般的なタクシーの料金に比べて割高ではあるものの、乗降地を地図上で指定できるうえに、ドライバーも礼儀正しく、車両状態も良好と利便性・安全性ともに高く、利用者からの評価も上々である。

しかし、当局は3 月に入り配車アプリの取り締まりを強化し始めた。6 日にはバンコク市内でUberを通じてサービスを提供した運転手18人を逮捕し、それぞれに罰金を科した。そして、21日には配車サービスを行っている業者に対し、現行の法律に違反しているとして配車業務の停止命令を出した。これに対して「Uber」などはタイに規制する法律は存在せず、違法ではないと反論しており、今後6 カ月から1 年をかけて合法的な営業再開の方策を模索するという。

タイ政府は昨年8月に、緊急ボタンの設置やクレジットカード支払システムの導入を盛り込んだ「TaxiVIP」プロジェクトを承認した。さらに、空港などに監視チームを配置し、乗車拒否のタクシーの取り締まりを強化するなどしてタクシー業界全体の質の向上に励んでいる。陸運局のサニット局長は国民に対し、マナー違反のタクシーを見つけたら、コールセンターへ車のナンバーを連絡するよう呼びかけているほか、陸運局に登録した配車アプリがあるとして、「UberやGrab Taxiの利用は(彼らが陸運局に登録するまで)やめてほしい」と訴えている。今回の騒動で、タイのタクシー業界は変わることができるのか。今後の展開を見届けたい。

(バンコク派遣 日下部 尚之)(寄稿時1 タイバーツ=3.19円)

 

 

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第1回 上海 /シンガポール

2017/04/03 :海外現地レポート

上海   第四銀行上海駐在員事務所

中国の食事出前サービスの発想を地域の問題解決に

はじめに

中国では日本と比べてスマートフォンの普及が進んでいるため、スマートフォンのアプリを活用した便利なサービスが浸透しており、そのひとつである食事の出前を行うサービスが急成長している。今回は「中国の食事出前サービス」の発想を、日本の地域社会での問題解決に役立てることはできないか考えてみたい。

中国の食事出前のサービスアプリの仕組み

まず、食事出前サービスアプリの「饿了么(エーラマ:中国語で「お腹すいた」の意味)」を例に説明する。アプリを開くと現在地の位置情報をもとに、配達可能な店が表示される。料理の種類、配達時間、評価などを参考に、店と料理を選ぶ。選択できる店は「中華料理のチェーン店」、「吉野家」「マクドナルド」など外資系の店、「地元の小さな中華料理店」など様々な種類の店の中から選べる。料理を選択後に、「オンライン決済サービス」を利用して購入代金を精算すると注文が完了する(図表1 )。

中国の食事出前サービスの特徴

日本にも出前や宅配サービスのある店への注文をインターネット経由で取り次ぐサービスは存在する。しかし、商品の配達を行うのはそれぞれの店の従業員である。一方、中国の食事出前サービスでは、アプリ会社に登録した配達員が商品の配達を行う。登録配達員はアプリ会社から入ってくる注文依頼を自分の裁量で受注できる。そのため、個別の飲食店の事情や動向に縛られず、主体的に需要を選んで働くことができる。

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