12月2015

2015年冬期消費動向調査

2015/12/01 :自主調査(調査報告)

─「消費支出」は、足踏み状態が続く─

[定例調査]県内勤労者世帯の消費意識と今冬のボーナスについて

1.収入の推移

定例1─収入は、緩やかな上昇傾向─

〈半年前と比較した収入について〉

半年前と比べて収入が「増えた」と回答した人の割合は16.0%、「減った」と回答した人の割合は16.8%となり、収入CSIは▲0.8となった(図表1)。収入CSIは、2015年夏の調査と比べて3.4ポイント上昇し、緩やかな上昇傾向にある。

〈今後半年間の収入について〉

今後半年間の収入が「増えそう」と回答した人の割合は6.9%、「減りそう」と回答した人の割合は17.9%となり、収入予想CSIは▲11.0となった(図表1)。収入予想CSIは、足元の収入を示す収入CSIと比べて10.2ポイント低下している。

2.消費支出の推移

定例2─「消費支出」は、足踏み状態が続く─

〈半年前と比較した消費支出について〉

半年前と比べて消費支出が「増えた」と回答した人の割合は37.8%、「減った」と回答した人の割合は6.3%となり、消費支出CSIは31.5となった(図表2)。消費支出CSIは15年夏の調査と比べて1.3ポイント低下しており、14年冬の調査以降、足踏み状態が続いている。

注)CSI(Consumer Survey Index)
アンケートの回答結果を指数化したもので、ここでは「増えた・増えそう」と回答した人の割合から「減った・減りそう」と回答した人の割合を差し引いた数値のことをいう。CSIは、収入・消費支出・生活実感が増加(改善)基調か減少(悪化)基調かといった「変化の方向」と、拡張・後退が速いか遅いかといった「変化のテンポ」を示すものである。

〈今後半年間の消費支出について〉

今後半年間の消費支出が「増えそう」と回答した人の割合は35.3%、「減りそう」と回答した人の割合は7.0%となり、消費支出予想CSIは28.3となった(図表2)。消費支出予想CSIは、足元の消費を示す消費支出CSIと比べて3.2ポイント低下しており、先行きの消費については、一段と慎重な見通しが示されている。

3.今後半年間における消費支出項目

─「 増えそう」は「食費」「衣料・履物」などが上昇─

定例3.4今後半年間の消費支出について「増えそう」な支出項目と「減りそう」な支出項目をそれぞれ尋ねた(複数回答)。

〈消費支出が増えそうな項目〉

「増えそう」と回答した割合が最も高かったのは「食費(外食費を除く)」で、以下「教育費(学費・教材費等)」「保健医療費」「住居費(修繕・維持管理費・家賃等)」などの順となっている(図表3)。

14年冬の調査に比べると、「食費」の回答割合が2.2ポイント上昇したほか、「衣料・履物」「娯楽費(趣味・書籍・旅行等)」などが上昇した。

〈消費支出が減りそうな項目〉

「減りそう」と回答した割合が最も高かったのは「娯楽費(趣味・書籍・旅行等)」で、以下「外食費」「小遣い(含む交際費)」などの順となっている(図表4)。

14年冬の調査と比べると、「娯楽費(趣味・書籍・旅行等)」と「外食費」の回答割合が5ポイント以上低下したほか、「小遣い(含む交際費)」などの回答割合も低下した。

4.今後半年間に購入・支出を予定している商品等

─ 耐久消費財では「スマートフォン」がトップ。「家具・インテリア用品」「家電製品」などが上昇─

定例5.6今後半年間で購入・支出を予定している商品等を、耐久消費財と非耐久消費財に分けて尋ねた(複数回答)。

〈耐久消費財〉

耐久消費財では「スマートフォン」の回答割合が最も高くなり、14年冬の調査以来、トップとなった(図表5)。以下「家具・インテリア用品」「家電製品(冷蔵庫等)」「パソコン・周辺機器」などの順となっている。

14年冬の調査と比べると、「家具・インテリア用品」の回答割合が3.0ポイント上昇したほか、「家電製品(冷蔵庫等)」などの回答割合が上昇した。

〈非耐久消費財〉

非耐久消費財では「婦人物衣料品」の回答割合が最も高く、以下「国内旅行」「紳士物衣料品」「子供用衣料品」などの順となった(図表6)。

14年冬の調査と比べると、「婦人物衣料品」が1.6ポイント上昇したほか、「国内旅行」「子供用衣料品」などの割合が上昇している。

5.ボーナス支給予想

定例7.8─ ボーナス支給予想は、6年連続で上昇─

今冬のボーナスが昨年の冬と比べて「増えそう」と回答した人の割合は6.7%、「減りそう」と回答した人の割合は14.2%となり、ボーナス支給予想CSIは▲7.5となった(図表7)。

ボーナス支給予想CSIは、14年冬の調査に比べると、1.8ポイント上昇した。なお、10年冬の調査以降、6年連続で上昇している。

今冬のボーナス支給予想CSIが14年冬の調査と比べて上昇した要因を年代別にみると、30代で「減りそう」と回答した人の割合が7.2ポイント減少したことや、10~20代、40代、50代でも「減りそう」と回答した人の割合が減少したことなどがあげられる(図表8)。

6.ボーナスの使途

(1)ボーナスの使途

─「 預貯金等」が約5割でトップ。「買い物」「旅行・レジャー」が上昇─

定例9今冬にボーナス支給があると回答した1,228人を対象に、ボーナスの使途について尋ねたところ(複数回答)、「預貯金等」の回答割合が53.5%で最も高くなり、13年冬の調査以降、3年連続で50%を越えた(図表9)。以下「生活費の補填」「買い物」などの順となっている。

14年冬の調査と比べると、「買い物」が4.9ポイント上昇したほか、「旅行・レジャー」などが上昇している。

ボーナスの使途を年代別にみると、すべての年代で「預貯金等」が第1位となった(図表10)。

また、10~20代では「買い物」が第2位となっているのに対定例10して、その他のすべての年代では「生活費の補填」が第2位となっている。

(2)預貯金等の内訳

─「普通預金」は増加。「定期預金」は減少─

今冬のボーナスの使途で「預貯金等」と回答した657人を対象に、その内訳を尋ねたところ(複数回答)、「普通預金」と回答した人の割合が67.4%と最も高く、14年冬の調査と比べて5.8ポイント上昇した(図表11)。一方、「定期預金」と回答した人の割合は31.7%となり、14年冬の調査と比べて7.2ポイント低下した。

定例11

7.まとめ

定例12今回の調査結果では、「収入」は15年夏の調査と比べてわずかながら上昇し、緩やかな改善傾向がみられた。

一方、「消費支出」は足踏み状態にあり、県内勤労者の消費に対する慎重な姿勢が示された。こうした背景には、賃上げの動きはみられるものの、円安や天候不順などを原因とした物価上昇から実質賃金が伸び悩み、家計の購買力が上向かないことなどがあると思われる。

ただし、先行きの消費については、「娯楽費(趣味・書籍・旅行等)」でわずかながら上昇する見通しにあるほか、冬のボーナス使途では「買い物」「旅行・レジャー」など余暇関連への支出意向が昨年より高まるなど、消費マインド上昇の兆しもうかがえる。

景気に大きな影響をもたらす個人消費が、今後本格的に持ち直していくのかどうか、その動向を注視したい。
(2015年11月 小原 信人)

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【特別調査】中食(惣菜・弁当等)の利用状況に関するアンケート調査

2015/12/01 :自主調査(調査報告)

─「週に2~3回」の利用が全体の4分の1でトップ─

はじめに

惣菜や弁当など調理済みの食品を自宅や職場などで食べる「中食」の利用は、消費者のライフスタイルの変化や販売店におけるメニューの充実などにより、広がりをみせている。

こうした状況を踏まえ、県内勤労者等の中食の利用状況を探るため、アンケート調査を実施した。

1.世帯における中食の利用動向

(1)食費全体の構成比

─中食と外食が増加し、食の外部化が進む─

中食1総務省の「家計調査」をもとに、勤労者世帯の食費全体の構成比をみると、2004年から14年にかけての10年間で、内食(家庭内で調理して食べること)の占める割合が4.8ポイント減少している一方、中食(家庭外で調理された食品を自宅や職場で食べること)は1.3ポイント、外食は3.5ポイントそれぞれ増加しており、食の外部化が進んでいる状況がうかがえる(図表1)。

(2) 中食に対する支出金額と購入頻度の推移

─ 支出金額と購入頻度ともに緩やかな増加傾向─

中食2総務省の「家計調査」をもとに、勤労者世帯の中食に対する年間支出金額をみると、04年は1世帯当たり82,586円であったが、14年では93,812円と、10年間で1万円以上増加している(図表2)。また、年間購入頻度をみると、04年は1世帯当たり226回であったが、14年では269回と同じく40回程度増加している。勤労者世帯の中食に対する支出と購入頻度はともに緩やかな増加傾向にある。

2.アンケート調査の結果

当センターでは、県内における中食の利用状況を探るため、県内の勤労者等2,000人を対象にアンケート調査を実施した(有効回答1,646人)。

(1)中食を利用する頻度

─「週に2~3回」が全体の4分の1でトップ─

中食3.4中食の利用頻度を尋ねたところ、「週に2~3回」と回答した人の割合が全体の4分の1にあたる25.0%となり、最も高くなった(図表3)。次いで、「週に1回」が16.4%、「月に2~3回」が12.3%、「週に4~5回」が9.8%、「ほぼ毎日」が8.3%、「月に1回」が4.7%となった。これらを合わせた割合(以下『利用している』)は76.5%となった。一方、「ほとんど利用しない」と回答した人の割合は23.5%となっている。

年代別にみると、『利用している』割合は、10~20代が87.6%と最も高く、60代以上では61.1%と最も低くなった(図表4)。高年齢層より若年層で中食の利用頻度が高い傾向にある。

未婚・既婚別でみると、『利用している』割合は、未婚者が84.7%となり、既婚者と比べ11.2ポイント高かった。

 

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開港5港の新潟港と共に

2015/12/01 :感頭言

株式会社 リンコーコーポレーション 代表取締役社長 南波 秀憲

1869年1月1日(明治元年)、皆様はこの日は何の日かご存知でしょうか?

1858年、日米修好通商条約で開港5港が指定され、新潟港もその一つとなりましたが、港の水深不足や北越戊辰戦争等の影響で実際の開港が遅れ、ようやく外国船に開港、貿易が開始されたのがこの年です。

同じ年に新潟運上所(のちの新潟税関)も設けられております。当社は、新潟港の開港から遅れること30数年、明治38年11月に「新潟健康舎」として牛乳販売を目的として設立されました。

その後、大正時代に入り新潟港はまさに近代港へ飛躍する時期にあったことから、当時のわが社の経営陣は、山ノ下地区に日本海側の玄関口としてふさわしい埠頭を建設すべきとして、現在の臨港埠頭(日本で唯一の私有港湾)の建設に着手し、大正14年春に現在のA埠頭が完成し、順次整備が行われ現在に至っております。

これまでの間、建設資金難、太平洋戦争、新潟地震と幾多の試練に見舞われましたが、都度役職員一同の奮闘、また荷主の皆様のご支援をいただきながら乗り越えることができました。 続きを表示…

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グラフで見る県内経済2015年12月(十月の新潟県経済)

2015/12/01 :グラフで見る県内経済

概況:横ばいで推移している県内経済。力強さに欠ける個人消費

生産活動:概ね横ばいで推移している

県内経済8月の鉱工業生産指数(季節調整値)は、前月比3.7%低下して98.4となった。出荷指数は、同2.4%低下して100.9となった。在庫指数は、前月比横ばいの134.2となった。

食料品は米菓や水産練り製品などの生産で好調を維持している。

はん用・生産用・業務用機械は、工作機械を中心に堅調に推移している。

一方、輸送機械は国内の自動車販売が減少している影響などから、弱含んでいる。

電子部品・デバイスは一部に明るさがみられるものの、依然として低水準で推移している。

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無名異焼窯元 五代 伊藤 赤水

2015/12/01 :探訪

無名異陶芸 重要無形文化財保持者(人間国宝)無名異焼窯元 五代 伊藤 赤水

伊藤家の祖先が佐渡にきて300年あまり。これまで途切れることなく、焼き物を作る家業としての赤水窯の歴史を継ぐ五代目であると同時に、陶芸家としての顔をもつ伊藤赤水氏。佐渡における「伝統的工芸」について、そしてアーティストとしての赤水氏についてお話をお聞きしました。

[プロフィール]探訪
代表者 伊藤 赤水
所在地 佐渡市
開窯時期 1830年(天保元年)
事業内容 陶芸家、窯元
URL http://www.sadotokusen.jp/sekisui/

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今すぐできる選りすぐりのアイデア第57回

2015/12/01 :酒井とし夫の街でみつけた商売繁盛のヒント

ビジネス心理学講師/米国NLP心理学協会認定ビジネスマスター/米国NLP心理学協会認定コーチ/ランチェスター経営認定講師 酒井とし夫 氏

こんにちは、酒井とし夫です。私は自分で商売をしながら経営戦略や戦術を学ぶにつれて、こんなことを思うようになりました。

「日常生活で何気なく見ているモノやコトの中にこそ、よく考えられた集客ノウハウや広告宣伝、販促、マーケティングのテクニックがぎっしり詰まっている」

スーパーに置かれている買い物かごの位置にはちゃんと理由があります。街の繁盛店の店頭ワゴンに並ぶ商品にはオーナーの意思と意図が現れています。店舗のレイアウトはその企業の膨大な調査と経験の集大成です。POP、値決め、色使いはその企業やお店の試行錯誤とテストマーケティングの結果です。毎日、目にするチラシ、DM、雑誌、TV、新聞、書籍、ホームページには読み手の興味と関心を引く効果的なコピー作成ノウハウが凝縮されています。

そんな日常生活の中で私が見つけた商売に役立つヒントやアイデア、ノウハウを毎月紹介します。是非、あなたのご商売や会社経営に応用するにはどうしたら良いのかを考えながらお読み下さい。

売り手と買い手の思い

「売り手と買い手の思っていることは一致しない」

これはある有名なコンサルタントに教えていただいた言葉です。

売り手はAが自社商品の特徴だと考えている。でも、お客様はBの特徴を気に入って買っている・・・ということは往々にしてあります。それを気づかずに売り手側がいつまでもAを中心にセールスを行っていても、何度も広告訴求を繰り返してもなかなか売れない。そして、

「おかしい!なぜこんなに良い商品なのに売れないのだ?」となるわけです。

実は私も講演を始めた当初、自分の特徴は「知識やスキルや論理性」だと思っていました。でも、何度か講演を行ううちに、「訴求ポイントがちょっと違うんじゃないだろうか」と感じ始めたのです。先のコンサルタントの言葉を借りるなら「もしかしたら私と参加者の思っていることは一致していないのではないか?」と思ったのです。

そんなとき、最も役に立ったのが感想文でした。下記は実際の感想文に書かれていたことです。

●「元気をもらいたい方にはこの方のセミナーはお勧めです。酒井さんのセミナーを受講すると、体中の血液が沸騰する感じで凄いパワーがでてきます」

●「2回目もあっという間の時間でした。より良い元気なパワーをありがとうございます!」

●「酒井さんのお話は聞き終えても『よし頑張るぞ!』と元気の出るセミナーであり、ぜひ他の仲間にもご紹介させていただきたいと思います」

●「先日のセミナーはとてもパワフルでご参加の皆様の熱気と先生の情熱の全力ライブに感動して新しい自分のあるべき状態もしっかり創る方法がわかりました。コツコツとパワフルにやっていきたいと考えています。ほんとうに嬉しく感激しています」

●「新潟にこんなパワーあふれるすごい人がいたのですネ。びっくりです!教えていただいたこと、1つでも実践してみます」

これらは、けっして自慢しているわけではありません。「売り手と買い手の思っていることは一致しない」という実例です。私が考えていた訴求ポイントと参加者が感じていることのズレが分かりますか? 続きを表示…

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宿泊業の労働生産性を高めるために

2015/12/01 :地域観光事業のススメ方

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─装置産業への脱皮に向けて─

1.労働生産性を高めよ

日本のGDPの7割を占めるサービス業の労働生産性の向上が課題となっている。

井門さん1

そのなかでも、特に「宿泊業・飲食業」が名指しされ、政府の「サービス産業チャレンジ・プログラム」の対象となり、業界を挙げた生産性向上が求められている。そのため、観光庁では、国立大学と共催で旅館業向け生産性向上セミナー等を開催して、その向上を目指そうとしている。各地方自治体でも、旅館業・飲食業の生産性向上のための、ムラ・ムダのないオペレーションやマルチタスクに関するセミナー開催が増えているようだ。

ただ、現段階では、まだ国(マクロ)と現場(ミクロ)の間のギャップが大きすぎ、労働生産性を上げるといっても、人材不足に陥っている現場で、下手をすると従業員に負荷をかけ、一層人材不足に陥るというワナにはまるおそれもあるので注意が必要だ。

宿泊業の生産性向上のプロで、様々なセミナー講師を務めるサービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕先生は、「あくまで労働生産性は同一企業内での改善が主眼」とおっしゃっており、そのとおりだと思う。国家間で比べて、他の先進国に比べて高い、低いというのは、参考にするまでならよいが、それを数値目標とするには、サービス形態やその時々の経済環境が違い過ぎると思う。私は、労働生産性を高めることには大賛成だが、企業がやるべきことと並行して、国や行政が支援すべきこと(セミナー開催だけではない)をきちんと分担して進めていただくことが、生産性向上の大前提だと思っている。 続きを表示…

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第29回 拡大する「越境EC」市場

2015/12/01 :チャイナレポート

今年も11月11日がやってくる。中国ではこの日は「双11(双子の11)」と称され、「1」が4つ並んでいることから「独身の日」の意味を持つ。数年前から、この日は中国の消費者にとって別の大きな意味を持つようになった。きっかけは中国の電子商取引(EC)最大手のアリババが、2009年に始めたネット販売のセールである。アリババは09年以降、毎年「双11」セールを大々的に行い、開始から5年後の14年11月11日、アリババサイトでの同日のネット販売額は571億元に達した。日本円に換算すると、わずか1日で1兆円を超える販売規模であり、ネット通販分野における単日世界記録となっている。「双11」は、現在ではクリスマス商戦や国慶節商戦と並ぶ一大商戦の日となり、今年も更なる記録の更新が予想されている。

1.拡大する中国EC市場

1チャイナ「双11」セールがここまで大きな商戦となった背景として、中国においてEC市場の規模が年々拡大を続けてきたことを切り離して考えることはできない。中国電子ビジネス研究センターの報告によれば、中国のB to C(企業・個人間の商取引)における市場規模は、2014年に2.8兆元(約56兆円)となり、10年からの5年間で市場規模は5倍を超える成長を遂げた。日本のEC市場規模は14年に12.8兆円で、直近5年間の拡大幅が1.6倍であることを考えると、中国の伸び率の大きさがうかがえる。また、中国のEC市場は2015年には4兆元(約80兆円)の規模へ拡大することが予想されている。

この巨大EC市場には、数多くのサイトが立ち並ぶ状況となっている。最も大規模なサイトはアリババが運営する「天猫(Tモール)」で、市場の6割近くを占めている。続いて家電サイトからスタートした京東が2割、残りの2割の市場を世界大手のアマゾンを含めて数多くのサイトがシェア争いを繰り広げている。

2.2014年は中国における「越境EC元年」

拡大する中国EC市場のなかで、現在最も注目を集めているのが「越境EC」である。「越境EC」とは国境を越えたネット通販のことを指し、日本企業など中国国外の企業がサイトを通じて中国の消費者に販売することをいう。中国政府による政策支援もあり、14年に中国における越境ECが本格的にスタートした。アリババの「天猫国際(Tモールグローバル)」、京東の「京東全球購」など、EC事業者が越境ECサイトを立ち上げる動きが活発化している。今年に入ってからは、日本製品の販売を強化しようとする動きも目立つ。アリババは今年5月にヤフージャパンと提携して日本商品のEC支援を開始し、一方で、京東は6月に日本製品の専門サイト「日本館」を開設した。

昨年から今年にかけて、日本の商社や流通業による越境EC市場への参入も相次いでいる。天猫国際には、爽快ドラッグ(住友商事)、マツモトキヨシ、キリン堂など多くのドラッグストア系の流通業が出店している。また、伊藤忠商事は中国中信集団やタイ財閥大手チャロン・ポカパングループと組み、上海自由貿易試験区を拠点として越境EC事業を始動することを発表している。

3.中国消費者からみた「越境EC」の魅力

中国消費者が「越境ECサイト」で購入する最大のメリットは、海外の商品を安く入手できることである。海外からの輸入品には、通常多くの輸入コスト(物流費、通関費、中間流通費、税金、棚代等)が加わるため、中国での販売価格は輸入元に比べて非常に高くなる。例えば、上海の百貨店で日本からの輸入品を購入する場合、日本での販売価格の2~3倍となるケースが一般的である。ところが、同じ日本からの輸入品を「越境ECサイト」で購入すれば、より安く入手できることが多い。「安さ」だけでいえば、中国の国内ECサイト(アリババの運営するC to Cサイト「タオバオ」など)でも、個人が海外で大量購入(爆買)した商品を安く販売しているケースがある。ただし個人販売では、偽物や不良品が混入しているリスクが存在する。一方で越境ECサイトは、日本の大手事業者によって運営されているため、品質面でも安心できる利点が大きい。

越境ECにおいて輸入品の販売価格が安い理由は、一般貿易(通常の貿易)と比べて輸入コストが安価なためである。越境ECでは、一般貿易で課される税金(関税、増値税、消費税)が課されず、個人輸入と同様の簡易的な「行郵税(小包税)」が課されるのみである。行郵税の税率は10~50%であり(例:食品・飲料10%、衣類20%、化粧品50%)、一般貿易よりも税金が安いケースが生じる。また越境ECでは、卸売業・小売業等に対する中間マージンが発生せず、物流面でも日本企業から中国消費者に直送することも可能であるため、総合的にコストが抑えられる。

4.日本の売れ筋商品

アリババの「天猫国際」で日本製品の販売サイトをみると、商品カテゴリとして、化粧品、ヘルスケア、ベビー商品、健康食品、衣料品、家電製品などが主に販売されている。2015年10月時点(単月)の売れ筋は、最も販売件数が多いのが、カルビーのフルグラ、続いてスキンケア商品の馬油、化粧品、生理用品などとなっている。こうした人気商品は、楽天など日本のサイトで販売されているものも多い。そのため、ネット上で日本での販売価格が把握でき、「天猫国際」と「楽天」をみれば、内外価格差は一目瞭然となる。人気商品の販売価格を比較すると、越境ECサイトでの価格は、おおむね日本の1.5~2.5倍の範囲となっている。

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5.日本企業にとっての参入メリット

日本企業が中国の国内ECに出店する場合は、中国での法人設立や商標登録、現地での認可取得など様々な手続きを要する。一方で「越境EC」の場合は、中国で法人設立をする必要はなく、日本の商標で販売可能であり、比較的参入がしやすい。このために多くの日本企業が越境ECに相次いで参入している状況にある。

ただし上記でみたように、中国消費者が越境ECサイトで購入している人気商品は、日本で爆買している商品と重なるものも多く、中国人に対する商品の認知度・ブランドイメージの向上が不可欠である。また、中国消費者は各サイトで商品の価格を比較して費用対効果を重視しているため、合理的な価格設定も重要となる。最大手の天猫国際のサイトでは、日本製品というだけで売れる状況にはなく、やはり知名度の低い商品は見向きもされないのが現状だ。越境ECで成功を収めるためには、実店舗での販売と同様に地道で効果的なプロモーション活動を行っていく必要があるといえる。

(上海駐在員事務所 佐藤 誠)
※本稿は、2015年10月30日現在で執筆されたものです。

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