10月2017

今すぐできる選りすぐりのアイデア 第19回

2017/10/02 :酒井とし夫の街でみつけた『商売繁盛心理学』

ビジネス心理学講師/米国NLP心理学協会認定ビジネスマスター/米国NLP心理学協会認定コーチ/ランチェスター経営認定講師 酒井とし夫 氏

こんにちは、ビジネス心理学講師の酒井とし夫です。

私はどんな商品やサービスを扱っていても、どんな業界で働いていても、ビジネスにはひとつの共通項があると考えています。

それは…、お客様は『人』である、ということ。

そして、人は『心』で好き嫌いを感じ、『心』で興味を抱き、『心』で買うか買わないかの行動を決定します。

そのため、どんな業界や職種の方々であっても、ビジネスに関わる方は人の『心』に影響を与える心理学の知識やスキルを理解しておくと、交渉、打ち合わせ、営業、広告、販促、プレゼンテーション、接客、コミュニケーションで優位に立つことができます。

私が日常生活のなかでみつけた商売に役立つ心理学的なヒントやアイデア、ノウハウを毎月紹介します。是非、あなたのご商売や会社経営に応用するにはどうしたら良いのかを考えながらお読み下さい。

重さで質が変わる

先日、我が家のトイレの壁紙を張り替えるために工務店の社長がカタログを持ってきてくれました。そのカタログはとても分厚く、手に取るとずっしりと重みがありました。そのカタログを見ながら、私は掲載されている壁紙がどれもしっかりした品質があるように感じられることに気がつきました。

心理学の実験結果からも明らかになっているのですが、資料は分厚く、重いほうが高級感や重厚感が相手に伝わることが分かっています。だから、もしあなたがお客様に資料を手渡すときにはその重みにも注意を払うべきです。たとえばパソコンで作成した紙の資料をそのまま渡す場合と、その資料を厚みのあるファイルに綴じて渡すのとではお客様が受け取る印象が大きく変わるということです。

私はこの実験結果を初めて知ったときに

「紙の厚みや重さで印象がそれほど変わるのかな?」

と半信半疑でしたが、多くの人と名刺交換をするようになってから、その効果を実感しました。ぺらぺらの薄い名刺をもらうとなんだか相手が軽く思えるのです。反対に厚みのある名刺をもらうと相手の存在も重く、大きく感じるのです。

もちろん、人を名刺の厚みや重さで判断してはいけませんが、人間にはそういう傾向があるのだと理解していると交渉やプレゼンテーションに臨む姿勢が変わってきます。

私は、人間というのは資料は分厚く、重いほうが高級感や重厚感を感じるということを知ってから、企画書を提出するときは必ず厚みのあるファイルで製本してプレゼンテーションを行うようになりました。企画書の内容も要点は最初の数ページで理解できるように書きますが、その企画の背景となった補足資料などをわざと添付して企画書自体のページ数を増やして、厚みを増しています。

なにごとも軽薄短小化が好まれて、重・厚・長・大は避けられる時代ですが、「重要」「重大」「大切」という言葉には重みや大きさを意味する漢字が使われていますし、「軽率」「浅はか」「薄っぺら」などは軽さや薄さを意味する漢字が使われています。このことからも人は重さ、大きさ、厚み、軽さ、薄さにある種のイメージを抱いていることが分かります。そのため、高額商品のカタログや会員権、保険証券等は厚みのある高級紙で送られてくるわけです。

選択肢が多いと思考が停止する

社長が持ってきてくれたその壁紙のカタログには、何百種類もの柄や色やデザインの壁紙見本が掲載されていました。あまりに数が多いので家内が悩んでいました。

「どれがいいかな。どれがいいだろう?」

…結局、写真の壁紙に決定しました。

なぜ、何百種類ものなかからこの壁紙に決定したのか?それはあらかじめ工務店の社長が分厚いカタログに

「お宅にはこれが良いと思います」

という候補となる3~4種類の壁紙に付箋紙(ふせんし)を貼ってくれていたからです。

家内は数多くの種類をチェックしましたが、結局は社長が付箋紙を貼ってくれた種類のなかから選んだわけです。

一般には選択肢が多いほど自分の好きなものがみつかり、満足度が上がるように思われますが、これも心理学の実験結果から考えると事実は逆です。人は選択肢が多いと判断が難しいので思考が停止し、選べなくなることが分かっています。

選択肢は3つ程度が最も判断が容易になります。日本には松・竹・梅、大・中・小、特上・上・並といった選択肢が用意されていることが多いのですが、私たち日本人はこのことも経験的に知っていたのかもしれません。

また、あまりに選択肢が多いとお客様は「後悔する」ことが多くなることも分かっています。選択肢が多いとほとんどの人は決断した後に次のように思うのです。

「はたしてこの選択で良かったのだろうか?他のものを選んだ方が良かったのではないだろうか?」

つまり、決定後も選ばなかった他の選択肢の可能性について考えてしまい、結果的に満足度が低下してしまう傾向があるのです。

もちろん業種によって、あるいは競合との差別化要因として豊富な品揃えが必要なこともあります。また、1つや2つしか選択肢が無いと「手抜きをしている」ように感じることもあります。

だから、先述の社長の付箋紙のように、たくさんの選択肢はあってもいいけれど、お客様に提案するときは選択の幅を狭めてあげると、お客様の心のなかに「たくさんの選択肢のなかから自分で選んだ」という印象を残すことができ、意思決定のスピードが上がり、さらに「後悔すること」も少なくなります。

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「泊食分離」の意義と背景

2017/10/02 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─新たな供給者が需要を造る─

1.なぜ「泊食分離」?

観光庁は8月、旅館業界に向けて部屋料金と食事料金を分けて表示する「泊食分離」の導入を促していく方針を明らかにした。泊食分離とは、1泊2食付き料金が主流の旅館業で、ホテルのように「食事なしの素泊まり」でも泊まれるようにすることだ。

しかし、1泊2食付きで事業を行なっている旅館に泊食分離を導入したら、食事なし顧客が増える分、売り上げが下がるのは自明である。あくまで、泊食分離は、現時点で客室稼働率が低く、食事なし顧客を取ることにより稼働率が上がり、収益改善のできる旅館や地域に限られる。専業で旅館業を営んでいる事業者は、一定の稼働率を確保しつつ経営しているので、泊食分離に賛成するわけがない。そのため、地域の有力な旅館事業者は泊食分離には積極的ではない。

それなのに、観光庁はなぜ泊食分離の導入を促進しようとしているのだろうか。おそらく、それは将来的にこれまでの1泊2食市場は徐々にすたれ、代替する新しい市場を創造していかなければ、次の世代には地域が成り立たなくなると想定しているからだろう。

1泊2食市場とは、江戸後期から明治にかけて産業革命が起こり、日本の人口が急増し、経済が成長して、右肩上がりに賃金が上昇した豊かな時代の名残とも考えられるためである。

1泊2食は、高度経済成長期を背負った「団塊の世代」が中堅サラリーマンだった1970年代に花開き、家族旅行や職場旅行などの「余暇市場」で隆盛を極めた。その後、今までこの世代が顧客として観光地や旅館業を支え続けてきた。現在でも、定年後の余暇を満喫するこの世代がまだ地域の観光市場を支えている。つまり、現代の観光地や旅館は団塊の世代とともに生き続けてきているのである。

しかし、団塊の世代はいつまで旅をしてくれるのだろう。既に全員が70歳を超えた。最近10年間の宿泊旅行実施率は下がる一方。年齢にはかなわず、いよいよ観光市場の主役から下りようという時代になった。そして、団塊の世代より下の世代は減少し続けるのみである。そして、定年は65歳に延び、定年後の余暇時間も縮小しようとしている。

今後、これまでと同じ客層を取り続ける限り、客数は減少していくことが明らかだ。もし、同じ客層で旅館が生きながらえていくためには、同業者が減っていくことによるおこぼれに与るしかない。じつは、そうした状況が20年間続いてきた。同業者が減ることは、宿泊業経営者にとって悪いことではない。

しかし、地方の雇用は減り、地元の需要は徐々に失われていく。そうしたことも、地方創生が叫ばれている背景ではないだろうか。DMOができて「マーケティングをすべき」といわれているのも、こうした状況を改め、新たな市場を開拓していかねばいけないと考えられているためだ。

2.需要縮小の予感

では、その市場とは何か。それは、「余暇以外の需要」だ。自らの胸に手を当てて考えてみてほしい。家族で夏休みを取って、海水浴や避暑でドライブ旅行する余裕はどれだけあるだろうか。夫婦二人で毎月温泉旅行、といったことが将来可能だろうか。

時間的に「そんな余裕はなくなってきている」というのが現状ではないか。働き方改革で有給休暇を取れといわれているけれど、ギリギリの要員で回しているので周囲に申し訳ないという気持ちが年々増していないだろうか。

これまでの20年間、賃金は下がり続けてきた。雇用は回復しているけれど、女性と高齢者の社会進出が一時的なボーナスとなっているだけではないだろうか。マイナス金利で政策的・人工的にマネーを市場に供給しているけれど、世界的に増加する国家債務は不安要素でしかない。政治経済への信用が失われるに伴い、企業は内部留保を蓄え、個人は貯蓄に余念がない。こうした構造下で、個人が時間と所得を不要不急な「余暇」に回すということは不自然でしかない。

そのため、現在、地方観光は訪日外国人に依存せざるを得なくなっている。都市部に集中していた需要を地方に回すことが現在の課題だ。

しかし、インバウンドの急伸が続いたとしてもあと数年だろう。なぜなら、この数年の急伸は中国と東南アジアの生産人口の急伸によるGDPアップの恩恵だったからだ。

すでに中国をはじめ、世界全体で生産人口が減少し始めた。今後のマネーサプライは、ICT等による第三次産業の労働生産性向上などに依存せざるを得ず、各国のGDPが頭打ちとなるに従い、この20年間日本がそうだったように海外出国者も頭打ちとなり、日本のインバウンドの伸びも一気に鈍化するだろう。

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第7回 上海/シンガポール

2017/10/02 :海外現地レポート

シンガポール   第四銀行コンサルティング推進部

Majulah Singapura    進めシンガポール

高度に都市化され、アジア有数の経済大国として存在感を示しているシンガポールですが、その国家としての歴史はあまり長くはありません。今から52年前、1965年8月9日にマレーシアから独立をはたし、シンガポールは誕生しました。以降毎年8月9日は、シンガポールのナショナルデー(独立記念日)として多くの国民に祝福されています。今回は本年のナショナルデーを体感した感想をシンガポールの独立の経緯、国民性について触れながらレポートします。

近代シンガポールの歴史は、その地理的な重要性に着目したイギリス人のラッフルズが、1819年に上陸したことに始まります。ラッフルズの上陸後、イギリスがこの地を植民地支配し、その支配は第2次世界大戦期の日本による占領をはさんで1957年まで続きます。

1957年、シンガポールはマレーシア連邦の一部として独立をはたし、ようやくイギリスの支配下からは脱することとなりました。しかしながら、マレーシア中央政府はマレー人優遇の政策を採ろうとし、それに対して華人の割合の多いシンガポールでは反対運動がシンガポール人民行動党(PAP)を中心に巻き起こりました。対立は深まっていき、ついに1965年8月9日、シンガポールはマレーシア連邦から独立することとなりました。

初代首相にはPAPのリー・クアンユーが就任し、以後、リーの強力なリーダーシップ、PAPの強固な一党独裁体制のもと、この国は発展を遂げてきました。シンガポールの建国の精神は「Majulah Singapura(マジュラ シンガプーラ)」、マレー語で「進めシンガポール」の意味です。この言葉はこの国の標語であり、国歌のタイトルにもなっています。

Majulah Singapuraの精神は、この国が資源もない小国で、苦難を経て独立したため、「とにかく前に進むしかなかった」という状況を象徴するものだと私は感じています。

国民はPAPの強固な独裁体制の下で成し遂げられた経済成長の恩恵にあずかっており、国政への満足度も高い状況です。

この国では政府(=PAP)による住宅政策として、HDBと呼ばれる公団住宅が整備されており、国民の8割がHDBに居住しています。ナショナルデーでは多くのHDBで国旗が掲げられ、祝福のムードが強く漂っています。また、ナショナルデー当日の式典会場は国のシンボルカラーである赤を身に着けた人々で埋め尽くされ、国民の国家に対する深い愛着を感じることができます。イベントの標語ももちろんMajulah Singapuraです。この言葉は繰り返し語られ、国家の一体感を示しています。

独立から50年余り、シンガポールは前に進み続け、発展を勝ち取ってきました。これからもこの国は発展を続けることと思います。

シンガポールへの研修生派遣を終了することに伴い、シンガポールレポートはいったん終了します。これまでお伝えしてきたように、シンガポールにおいても新潟をアピールする活動が行われております。また、最近になって新潟でも新潟とシンガポールとの連携を図る団体が設立されています。今後は遠く離れた新潟からシンガポールの発展を見守っていければと思います。それでは最後はこの言葉で締めくくります。

Majulah Singapura !

(シンガポール派遣 野澤 広樹)

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2017年度下期のマーケット欧米金融政策の転換で市場に変化も

2017/10/02 :マーケットレポート

第一生命経済研究所   首席エコノミスト   嶌峰 義清(しまみね・よしきよ) 氏

※ 本稿は、2017年8月30日現在で執筆されたものです。

1. 上期の市場振り返りと下期の注目点

2017年度上半期のマーケットを振り返ると、実体経済は決して悪くはないものの、政治面などの不透明要因によって市場の動きは方向感に欠ける不安定な状態が続いた。

注目材料の一つであったフランスの大統領選挙では、EUからの脱退などを目指す極右大統領の誕生には至らず、市場の不安材料は一つ消化した。しかし、米国のトランプ大統領に絡むさまざまな問題や、北朝鮮のミサイル開発問題などは解決に至らず、新たな報道が出るたびに市場ではリスク回避の動きが強まった。

すなわち、リスク性資産(株など)を売却して安全性資産(国債など)が買われやすくなる。結果として、株価は下落する一方、国債価格は上昇する。債券は、価格が上昇すれば利回りが低下するため、世界的に金利が低下する。このような環境では金利水準の低い日本に対し、相対的に金利水準が高い国の金利の方が大きく低下しやすいため、内外金利差が縮小し為替市場では円高になりやすい。円高は日本株のマイナス要因となる側面が大きいため、日本の株価は他国の株価よりも下落しやすくなる。日経平均株価は、景気回復基調の強まりを受けて一時2万円を超える水準まで上昇する局面もみられたが、2万円台で定着することなく、世界的なリスク回避の動きが出ると2万円を割り込む水準へ下落するなど、不安定な展開が続いた。上半期のドル/円相場が、1ドル=108〜114円台で不安定に推移したことも影響したと考えられる。

下半期のマーケットも、引き続き良好な景気と不安定な国際政治動向に挟まれる環境が続こう。景気自体は株高・金利高・円安を促すと考えられるが、リスク回避の株安・金利低下・円高要因となる米政治の動向や北朝鮮動向などの“深刻度合い”によって、市場の水準が決まってこよう。もっとも、下半期のマーケットで最も重要なことは、リーマンショック後続いてきた環境が大きく変わろうとしているということだ。それを誘うのは欧米の金融政策の転換であり、これにより市場の動きが一時的に不安定化する可能性がある。

 

2. 2017年度下期の経済環境は引き続き良好

まずは世界の景気動向をみると、引き続き世界経済は先進国を牽引役として拡大基調が続いている。昨年末頃の製造業の在庫調整完了後、生産活動は需要拡大による「意図せざる在庫減少」による生産回復局面から、持続的な需要の拡大を期待した「在庫積み増し」のための生産加速局面に入りつつある。

需要を取り巻く環境も概ね良好だ。趨勢的な消費の動きを左右する重要な要素の一つに金利水準が上げられるが、各国とも金利は歴史的低水準にとどまっており、需要を減衰させる力はないと判断される。

主要国についてみていくと、米国では生産活動に先行する製造業の新規受注が高水準で推移していることから、当面景気の勢いに陰りがみられるような局面は想定し難い。消費者の景況感を示す消費者信頼感指数は、過去50年で3番目に高い水準でなお上昇傾向にある(図表1)。労働需給は引き続き逼迫しており、足元で賃金の上昇加速に歯止めがかかっているものの、賃金水準の上昇傾向は続いている。

ユーロ圏では、内外需の両輪が揃う形で景気の回復傾向が強まっている。一時前年水準を割り込んでデフレも懸念されていた物価上昇率も、足元では前年対比1%程度の伸びとなっており、デフレ懸念は大きく後退している。

中国では、一部で住宅価格の高騰が続いている一方で、先行して上昇していた大都市圏では調整に転じ、資産価格下落による悪影響などが懸念されている分野もある。しかし、景気自体は先進諸国の景気回復を受けた輸出の持ち直しが明確になっており、これに合わせる格好で生産活動も持ち直している(図表2)。

このように海外経済が揃って拡大傾向を強めていくなかで、日本においても輸出が牽引する形で生産活動の水準が切り上がっている。一方で、内需についても増税以降回復が遅れていた個人消費がようやく明るさをみせ始めている。実質消費支出の水準は、増税前の2013年を上回り始めてきた(図表3)。ただし、所得の伸びは小幅にとどまっていることから、消費が再び落ち込むリスクは当面低いものの、高い伸びを維持したまま一本調子に盛り上がっていくことまでは期待できそうもない。したがって、インフレ率は日銀が目標とする2%を超えるような高い伸びとなることは期待できず、金融政策は現状の緩和策が維持されよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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フジイコーポレーション株式会社

2017/10/02 :探訪

グローバルに展開する除雪機・農機メーカー       フジイコーポレーション株式会社

除雪機及び農機メーカーとしてグローバルに展開するフジイコーポレーション株式会社。同社は多様な人材が活躍するダイバーシティ企業でもあります。その商品開発の経緯や、人材活用の取り組みなどについて、藤井社長からお話をうかがいました。

 

代 表 者 藤井 大介

所 在 地 燕市

創  業 1865年

社 員 数 143名

資 本 金 1,200万円

事業内容 小型除雪機・農業機械製造販売ほか

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働き方改革の現状と推進のポイント

2017/10/02 :自主調査(調査報告)

はじめに

働き方改革に関する動きが加速している。政府は今年3月に「働き方改革実行計画」をまとめ、長時間労働の是正などの9つの検討テーマを示した。また、秋には残業時間の上限規制などが盛り込まれた基本法が国会に提出される見込みであり、企業によっては対応を迫られる可能性も出てきている。

そこで、当センターでは働き方改革に向けた取組状況を把握するため、県内企業を対象にアンケート調査を実施し、先月の「センター月報9月号」にその結果をまとめた。今月号では先進的な取り組みを行なっている県外企業の事例を中心に、働き方改革の現状や推進のポイントについてまとめた。

1.働き方改革の背景

(1)労働時間の高止まり

働き方改革に関する動きが進んでいる背景としては、労働時間の高止まりがあげられる。厚生労働省「毎月勤労統計」によると、全国及び新潟県の一般労働者の平均月間総実労働時間は、リーマン・ショックの影響で労働時間が一時的に減少した2009年を除くと、概ね横ばいで推移している(図表1)。

労働時間の短縮が進まないため、社員の健康被害につながるケースが生じているほか、育児・介護と仕事の両立が難しい状況が続いており、女性のキャリア形成にも悪影響を及ぼしている。さらには、労働生産性が改善されない一因ともなっている。

(2)人口の減少

2つ目の背景としては、人口の減少があげられる。総務省「国勢調査」と国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」によると、全国の総人口は10年の1億2,806万人をピークに減少に転じており、30年に1億1,913万人になると予測されている(図表2)。同様に新潟県の総人口も1995年をピークに減少している(図表3)。

なかでも、生産活動に従事しうる生産年齢人口(15~64歳)は、総人口よりも早い95年をピークに減少しており、今後、さらなる労働力人口の減少が見込まれている。また、新潟県の生産年齢人口も、全国より早い85年をピークに減少に転じている。

したがって、労働力を確保するためには、意欲があっても育児などで働くことができない女性や、元気な高齢者に活躍してもらう必要性が一段と高まっている。そのため、育児・介護と仕事を両立できる労働環境の整備が求められている。

(3)人材不足
3つ目の背景としては、企業での人材不足があげられる。厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、足元7月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は1.52倍となり、バブル期の最高値であった1.46倍(90年7月)を上回って推移している(図表4)。また7月の新潟県の有効求人倍率(季節調整値)も、全国と同じ1.52倍となっている。

景気の回復が続き、企業の求人数が増加していることに加え、生産年齢人口の減少で求職者数が減少していることもあり、労働力市場における需給は逼迫している。このような売り手市場のなかで、採用を有利に進めるために、労働環境の整備に注目する企業は多い。

2.働き方改革とは

(1)政府が進める働き方改革

今年3月に政府は「働き方改革実行計画」をまとめた。そのなかで9つの検討テーマが掲げられ、政府が進める改革の方向性が示された(図表5)。今後、これらのテーマに沿って、具体的な法整備が進められる予定となっている。

(2) 企業における4つの取り組みテーマとその効果、並びに県内企業の取組状況

政府の示した方向性に沿って労働環境を実際に整備するのは企業である。そこで、本稿では政府が推進する9つのテーマを企業側から捉え直し、下記のとおり4つにまとめた。

また、2017年5月に当センターが実施した「2017年上期 新潟県企業動向調査」(以下、「企業動向調査」)において、4つのテーマにおける取組状況について県内企業1,000社にアンケートを行なった。その概況も先月号に続けて紹介する。

①労働生産性の向上による長時間労働の是正

労働生産性の向上による長時間労働の是正とは、業務の見直しや早帰りの実施、省人化に向けた設備・システム投資などを行なうことを指す。企業にとっては、ムダの排除や社員の健康増進による労働生産性の向上が望める。

なお、「企業動向調査」によると、所定外労働時間の削減(長時間労働の是正)について「取り組んでいる」と回答した企業の割合は70.8%となり、このうち『どちらかというと削減された』と回答した企業は72.6%、『どちらかというと削減されていない』と回答した企業は27.5%であった。一方、所定外労働時間の削減について「取り組んでいない」と回答した企業は23.0%だったほか、「所定外労働は行なっていない」と回答した企業は6.3%であった。

②柔軟な働き方がしやすい環境整備

柔軟な働き方がしやすい環境整備とは、時短勤務やテレワークの導入などにより、育児・介護と仕事の両立が行ないやすい勤務制度を充実させることや、副業・兼業の容認などにより柔軟な働き方がしやすい環境を整備することなどである。企業にとっては、社員の定着による離職率の低下、フルタイムでは働けない人材の活用といった効果が期待される。

「企業動向調査」において、柔軟な働き方の実現に向けた勤務形態の導入状況について尋ねると、「時差出勤制度」が19.3%と最も高く、次いで「育児や介護以外の事由で利用できる短時間勤務制度」が17.8%となった。柔軟な働き方がしやすい環境整備に向けて各種勤務制度を導入している企業の割合は、他の3テーマに比べて、やや低い傾向がみられた。

③多様な人材の活用

多様な人材の活用とは、女性や高齢者の活躍促進、障がい者の雇用推進、外国人材の活用などの取り組みを行なうことを指す。企業にとっては、多様な人材の確保や多様な人材による新たな視点からの商品開発、イノベーションの創出といった効果が望める。

「企業動向調査」によると、多様な人材の活用についての取組状況については、「65歳以降の再雇用・勤務延長制度の導入」が44.0%と最も高く、次いで「65歳までの定年延長」が31.6%となり、高齢者の活躍を推進している企業の割合が高かった。一方、「障がい者の雇用」や「女性管理職・役員の増加」については規模によって差がみられた。

④処遇改善による非正規雇用労働者の活躍促進

処遇改善による非正規雇用労働者の活躍促進とは、非正規雇用労働者の正社員登用や、同一労働・同一賃金などに取り組むことである。企業にとっては、非正規雇用労働者のモチベーションアップ、定着率の向上、人材確保といった効果が期待できる。

「企業動向調査」によると、非正規雇用労働者の処遇改善の取組状況については、「正社員への登用」が52.6%と最も高かった一方で、「正社員と非正規雇用労働者の賃金格差の縮小」は10.5%にとどまった。

「企業動向調査」によると、残業の削減には県内企業の多くが取り組んでいるのに対して、柔軟な働き方がしやすい環境整備に向けた勤務制度の導入に関しては低い水準にとどまった。このように県内企業では各テーマへの取組状況には差がみられたほか、自由回答には「働き方改革に取り組み始めたばかり」という声も多かった。

そこで、県外において働き方改革に対し先進的に取り組み、成果が出ている事例を、各テーマに沿って4つ紹介する。なお、事例は規模や業種のバランスを考慮して取り上げている。

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グラフで見る県内経済2017年10月(八月の新潟県経済)

2017/10/02 :グラフで見る県内経済

概況:緩やかに持ち直している県内経済。生産活動は持ち直しが続く

生産活動:持ち直している

6月の鉱工業生産指数(季節調整値)は、前月比1.7%上昇して105.2となった。出荷指数は同3.9%上昇して104.1となった。在庫指数は同1.2%上昇して131.1となった。

はん用・生産用・業務用機械や電子部品・デバイスは、自動車関連やスマホ向けの生産増加などから好調となっている。

食料品では、水産練製品などを中心に堅調に推移している。

輸送機械は、自動車部品を中心に底堅い動きとなっている。

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林深ければ則ち鳥棲む

2017/10/02 :感頭言

日本銀行 新潟支店 支店長    武田 直己

新潟に着任して3か月あまりが経った。挨拶回りや面談のために県内各地を移動する途上、林の深いところでは鳥のさえずりが車中まで聞こえてくることに気が付いた。東京勤務の時には経験しなかったことだ。心和むと共に、次の言葉を思い出した。

「林深ければ則ち鳥棲み、水広ければ則ち魚遊ぶ」

読んで字の如く「林が深いときには多くの鳥が来て棲み、川の流れが大きいときには多くの魚が集まり泳ぐ」という意味だ。

この言葉を気に入ったのは、組織を運営する際の一つの参考になると思ったからだ。反対解釈すれば、少し分かりやすいか。浅い林には多くの鳥は棲みつかないし、狭い川には多くの魚は集まらない。組織の懐が浅く、間口が狭いようでは、多様な人材は集まらないし、育たない。その結果、組織は発展しない、と理解している。

このことは、企業などの一つの組織に限らず、地域、国といった単位でも当てはまる面があろう。

当地新潟県は、モノ作りを中心に、これまで多様な産業を発展させてきた。この面での人材の厚み、すなわち林の「深さ」や水の「広さ」は我が国でトップレベルだろう。ただし、今後人口減少社会の中で経済的豊かさを維持していく上では、より幅広い分野で人材を集め、育てていく必要があるのではないか。例えば、時代の変化を敏感に察知した製品・サービスを考案できる人材、世界中から訪問客を呼び寄せるべく当地の自然・文化・食の魅力を伝えることができる人材、安値競争に巻き込まれないためのセグメント選択とブランド構築を行うことができる人材など、それぞれの状況に応じて、人材を集め、育成していくことが望まれよう。

そのための特効薬はあるまいが、組織や地域を率いる立場の一人ひとりが各々の状況に応じた「深さ」と「広さ」の意味を真剣に考え続けることが出発点になろう。新潟県経済が、さらに多様な人材を引き寄せるために何が必要か、自分自身も引き続き考えていきたいと思う。

(たけだ なおみ)

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