観光イノベーションで地域を元気に

ポスト平成時代へ

2019/03/01 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─日常と融合する観光─

1.時代変化の足音

少し先の未来から、ひたひたと歩み寄る足音が聞こえてくる。これからやってくるポスト平成時代はこれまでの一時代の制度や仕組みが崩れ、新たな消費者像にとって替わることから始まるような気がする。

例えば、小さな話題かもしれないが、外国人をターゲットとして軒数を伸ばしてきたホステル・ゲストハウス企業の株式売却が東京都内で相次いでいる。中国をはじめとするアジアの国々の経済成長ボーナスが「訪日外国人旅行」という形で急伸した時代も間もなく終わり、インバウンド狂騒曲は落ち着きを取り戻しつつある兆しがあるためだ。今、最高値で売れると踏んだからこそ売却につながっている。

もちろん、インバウンドは、アジア経済とともに踊り場を迎えるだけであって、減少することはないだろう。6,000万人まで届かずとも、安定して3,000万人台が続くとすれば、地方も恩恵に与れるようになっていく。これから大切なことはインバウンドばかりに依存しないことである。

また、ある地方で、小さな新聞社が会社を畳んだ。そして、同時に新会社が設立され、社長を交代して、発行する新聞はそのまま何事もなかったように新会社で発行を続けている。

ある地方では、老舗旅館がタブレットを活用した情報共有システムを導入し、旧来から続く、朝晩と働き日中に長い休憩時間のある中抜け勤務を廃止して、一人が接客も清掃もこなし、他者に引き継ぐマルチタスク方式に移行した。

ある地方の小さなホテルでは、イベントや日帰り需要の強化に向け、旅行会社への宿泊営業を行っていた部署を廃止した。

それぞれ違う現象だが、共通点がある。それは、時代に合わせた経営を進めていくうえで、古株社員のリストラを企図していたという点だ。

生産人口が減少し、経営を続けるには生産性を高めていくことしか方法のない時代、最大のネックが人件費の膨張だ。一人あたりの報酬は増やしていかねばならない一方で、ITに取って替えることのできるような業務や人材をどうするかが日本中の企業が直面する課題になっている。

ある社長は「モンスター社員が悩み」と語っていた。固定給というのは、同じ給与をもらうのであれば、働かなければ働かないほど社員にとって生産性の高い仕組みになっている。そうしたことを当然だと思う社員の居場所がなくなりつつある。

これまでの日本型経営とは、定年を保証する代わり、退職せずに末永く奉職し、相互に支え合い弱者も包含していく世界に誇るシステムであった。が、日本型経営も変わりつつある。

しかし、日本には会社以外に安心して帰属できる場所がない。セーフティネットの構築なしにリストラを推し進めることは最善の方策ともいえず、心が痛む。今後は、いずれ社員が独り立ちができるよう、本人が希望するキャリアを共有し、無事卒業させ(転職や創業をあっ旋し)てあげることが経営者の重要な責務になってくるだろう。例えば、旅館業であれば、新卒で3~5年経てば卒業でよいのではないだろうか。

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いま時の若者気質

2019/02/01 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─地域に何ができるか─

私は地域振興に関わる傍ら、3つの大学でゼミを担当し、のべ70名の大学生と日々接している。通常、大学の教員といえば大学院でドクター(博士)を取得した研究者が就くものだが、稀に私のような実務出身者が外からの目線で教育・研究に関わることがある。大学には、10年、20年と高度な研究をされてきた先生方が多くいらっしゃるので専門教育に関してはお任せし、観光や地域振興に興味があるという若者に生きた機会を提供している。

ゼミでは、半年に1つの割合でプロジェクトに取り組んだり、3週間のインターンシップを必修にして社会経験を積む。プロジェクトでは、高齢化する温泉地で経営者の事業承継意志を調査したり、スキー場の小さなホテルのシーズン中の企画商品を作成・運営の支援を行ったり、海外での祭に日本の縁日ブースを出店したり、地域に役立つ企画の実践と自らの社会人基礎力を高めることを目標にしている。

そのうち毎年20名ほどが卒業して社会に巣立っていくのだが、近年はしっかりした若者が多く、あえて4年で卒業せず、休学をしてギャップイヤーで力をつける者も少なくない。卒業前に休学し、ベトナムのホテルへ働きに出かける者、デンマークのデザイン学校に入学する者、世界一周に旅立つ者。地域や海外でふれて得た様々な気づきがベースになっていると思う。今回はそんな現代の大学生の一端をご紹介してみたい。

1.島への移住トライ

もともと大学近くの古民家を間借りしてイベント等を行うサークルに所属していたS君。ゼミに入ってすぐの2年生夏に十日町市を訪ね、伝説の古民家シェアハウス「ギルドハウス十日町」に泊まり、地方に移住した方々や旅人と接したことがきっかけになったのだろう、その後ゲストハウスに目覚め、全国のゲストハウスを訪ね歩き始めた。3年生になると、調査に訪れた群馬県の過疎地に立地する小さな温泉旅館で週末にアルバイトを始め、宿泊業の経営に興味を持ち始めた。そして、3年までに単位を全て取得し、4年になってから長期インターンシップを行うため、毎年訪れていた離島に移住した。もちろん、インターンシップということはそのまま島で働くことを本人も目指していた。

しかし、秋も終わりに近づくころ、地方への移住は時期尚早だったと島から戻ってきてしまった。背景には、「『移住』ではなく『永住』を前提とした島での生活」や「観光業での少ない報酬」に不安が募ったことがあった。もちろん、そうしたことを事前に理解していなかった反省は残るが、中途半端に我慢するのではなく、地方の課題を心に留め、一度「都市でも働いてみたい」という希望を叶えることとなった。

とはいえ、新卒一括採用の日本では4年秋に就職活動を始めても就職できる企業は限られている。そのため、もう1年大学に残ることを決め、地方と都市の両方で働く体験をしながら、地方の課題や可能性について論文として書き留めることを目指している。

おそらく彼は、自分自身の失敗を通じて、人生の成功に向けた第一歩を記すことができたと思う。日本では「成功を目指す」より「失敗しないことを是とする」ことがある。しかし、失敗しなければしないほど出世するような国ではイノベーションは起こらない。

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2019年旅のトレンド予測

2019/01/04 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─「集中」から「分散」へ─

毎年1月号の本コラムではその年の旅に関するトレンド予測を書いている。昨年は、関係人口、コ・ワーキングスペース、素泊まり宿、グランピング、若者宿/シニア宿がくるだろうと予測していた。国内観光旅行実施率が10年以上下がり続けていることから、ふつうの余暇旅行から新しい旅のシフトを予想したことが背景にあった。2019年は、18年の実質賃金指数が少し改善していることから、国内観光実施率は多少改善するだろう。では、2019年の旅はどう変わるか、勝手に予想してみた。

第5位 メタサーチとの闘い

2019年は平成最後の年。皇室の諸行事が重なる5月の大型連休は10連休となり、海外旅行に出かける人が増えるだろう。一方、国内観光地のサービス現場では、限られた人手で10連勤が可能かどうか、難しい対応を迫られることだろう。休むのは簡単だが、休みなしで働き続けるのはたいへんである。そのため、旅館でも従業員の休日確保のため、連休中全ての日に全室を稼働させず、部屋を空けておく日もあることだろう。

そこで危惧されるのが、メタサーチという宿泊比較サイトの暗躍である。トリップアドバイザーというクチコミ横断紹介サイト等が知られているが、メタサーチは、宿泊予約サイトのデータを横断的に表示し、予約可能なサイトを一括で探したい消費者に情報を提供して、予約されると宿泊予約サイトから手数料を取るビジネスで、そうしたサイトは数多く存在する。

しかし、一部の海外メタサーチでは、予約の取れない繁忙日に、実際の倍以上のかなり割高な料金で「予約可能」と表示してシステム上はキャンセル待ち状態にし、キャンセルが出た、あるいは空室を減らそう等の理由で宿泊施設が宿泊予約サイトに客室を登録した瞬間、その割高料金で予約を成立させ、差額を収入にするという商売が行なわれるようになってきた。海外企業の場合は日本の旅行業法が適用されないので違法ではない。

大型連休や三連休の多い2019年、知らぬ間に高値で販売する形となり苦情を受ける宿泊業や、自分で探す手間を省きたいばかりに高値をつかまされる消費者が続出しそうな予感がする。

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ペーパーレスシフト

2018/12/03 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─言い訳できない時代の到来─

1.デジタル化の現場

年末が近づき、文具コーナーに来年の手帳やカレンダーが並ぶ時期になった。

皆さまは、予定を付けるダイヤリーについてはアナログ派だろうか、デジタル派だろうか。最近では、スマホやタブレットで予定を管理している人も増えた。「いやいや、やはり過去の予定もふりかえられるのでダイヤリーはアナログの手帳に限る」という方も多いことだろう。「業務上の予定はグループウェアで共有しているのでデジタルで管理し、プライベートは手帳で管理している」という人もいるだろう。人それぞれである。一方、手帳やノートはどうだろうか。これも様々かもしれない。

ちなみに、遅ればせながら、私も今年からダイヤリーはアナログを卒業し、Googleカレンダーを使うようになった。同僚や友人のカレンダーも共有できるので、内輪のスケジュール調整がしやすいというのが最大の利点である。入力している限り、過去のダイヤリーも閲覧できるので、アナログとそう変わらない。数カ月間は慣れずにアナログとデジタルの両方で管理していたが、面倒くささからデジタル一本になり、これまでのダイヤリーは大切に机のなかにしまっておくことにした。

しかし、どうしても手帳だけはなかなかアナログを卒業できない。A4ノートサイズのデジタルノートも数年前に買ってはみたものの、ページをめくるスピードや細かな文字を書くときのペンの反応等がどうしても思い通りにいかず、ほこりをかぶったままだ。タブレットやスマホもデジタルキーボードが小さすぎ、太い指先がなかなか馴染まない。

ところが、学生はほぼ100%、メモをスマホで取る。さすがに授業用のノートはアナログで一冊持っている学生が多いようだが、ちょっとしたメモは全てスマホだ。なかには、授業用のノートも持たず、スマホだけ持って教室にくる学生も珍しくなくなった。そうした学生は、ただぼうっと講演を聞くように授業を聞いているだけなので、書かせるためのペーパーを教室に用意する先生方も少なくない。ペンも持たずにくる猛者もいて、ペンの貸し借りも教室のあちこちで行なわれている。

ペンもノートも持たずに大学にくるなんて、よほどできない学生の集まった大学なのだろう。そう思われる方もいることだろうし、そう思われても仕方がない。それならばと、試しに4月から全ての授業をペーパーレスにしてみた。講義資料はスクリーンに映写するとともに、QRコードをかざせばダウンロードできるようにした。授業中に何問か課す問題については、これまで回答用紙に書かせていた答えをスマホで入力する方式に変えた。

すると、どうだろう。問題を課した途端、全員が一心不乱に、おそらく紙に書くよりも早いスピードでスマホに文章を打っている。入力された内容は、入力順にスクリーンに映写され、自動スクロールされていくので、他の学生がどういう回答をしているかもみることができる。他者の回答をみて、再度打ち込むこともできるので、一人で紙に向かって書くよりも脳が明らかに刺激されている様子である。入力が苦手な学生もいるだろうと用紙に書くことも許可しているが、そうした学生は5%にも満たない。

質問があれば、同じくスマホで打ち込む。質問は全員のスマホでも共有できるので「いいね!(同感)」といったリアクションも可能だ。それを教員がみて、質問に答えていく。

「質問はないですか」と手を挙げさせても誰も挙手なんてしないが、スマホに打たせると毎回いくつもの質問が書き込まれる。

図で示した例は「観光経営論」という授業中の問いに対する学生の回答であるが、373人が考えて回答を書き、スクリーンに映写し終わるまでの所要時間はわずか10分。スクロールを目で追うのも結構たいへんだが、だいたい皆がどんなことを書いているのかの傾向は読み取ることができる。

この入力データを教員は後でダウンロードできるので、採点も一気に楽になった。学生も入力したか否かで出席がわかってしまうので、教室の入口にあるタッチ式の出欠認証だけして、授業をサボることもできなくなった。

実は同じことを社会人向けの講演会でも試そうとしているのだが、まだ一度も実現ができていない。多くは主催者に「無理です」と断られる。「ガラケーの方もいらっしゃいますし、スマホで文章を打つのには皆さま慣れていません」とのことだが、その通りだろう。私が主催者でもそう答えるかもしれない。

QRコードで資料をダウンロードする方式は、一度だけ許可をいただいた。ただし、QRコードを読み取るアプリをダウンロードする時間や解説付きが条件だった。

しかし、皆さまが想像している以上に早く、時代はデジタル化やペーパーレス化に向かっているように思う。少なくとも、スマホで文章を打ち、メモを取り、日常の道具として活用している平成生まれのミレニアル世代が社会に毎年輩出されていることを忘れてはならない。

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他者のため」から「自分ごと」へ

2018/11/01 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─旅行需要の構造変化に備えよう─

1.不況に備えよ

2019年の大型連休は新天皇の5月即位に合わせて10連休にすることが検討されている。10月には消費税の10%への引き上げが予定されているので、2019年はいかに上期中に売り上げを確保するかが、日本中の商売の共通課題になることだろう。2014年に消費税が8%となったときも消費の落ち込みが1年以上続いたが、景気循環の法則に基づくと、このときは景気の中期循環(ジュグラーサイクル)が上向きだった。しかし、2019年の増税時は、短期循環、中期循環とも下降時にあたり経済学では既に不況が予言されている。合わせて、中国や韓国の周辺国をはじめ、世界中で生産年齢人口の下降が始まり、米国が起こしつつある貿易戦争は各国の経済に打撃を与えかねない状況にある。もし、そうした国々の経済が停滞するようなことがあれば、長い不況となり、日本への外国人旅行客の成長も止まり、日本の観光産業にも少なからぬ影響があるだろう。

今、私たちは来るべき次の経済の停滞に備え、対処的ではなく、構造的な改革に目を向けなくてはいけなくなっている。そもそも、江戸後期から始まった「人口増加がもたらす経済成長」は既に終わっているにもかかわらず、同じビジネスモデルを続けていること自体が不自然なのだ。地方に目を向ければ、「需要は減っているのだが、同業者も減っている」ので、何とか残った者が需要を維持できているにすぎない。そこに人口増加に伴い自国経済を急成長させていた周辺各国からの訪日消費のボーナスがあったため、なんとか改革を先送りにできていた。

さらに、20年続く生産年齢人口の減少は、女性や高齢者の非正規雇用の増加を促し、平均賃金の低下や余暇時間の減少を招いた。その結果、旅行実施率は年々下がり続けている。この現象は構造的なものだ。正規雇用に関しては、生産性の低い業種が避けられるようになり、地方観光業の人材確保は年々至難となってきている。

売り上げは伸びず、人材も確保できない。こうした状況になったとき、いったいどうすればよいのか。未来がみえなくなると地方の観光業界からは後継者が消え、事業承継も難しくなっていく。私たちは何から改革していけばよいのか。しかし、その先がみえてくれば、これまで「観光」と呼んでいたビジネスに代わる、大きなブルーオーシャンが広がっている。

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観光と地域の共生を考える

2018/10/01 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─着地型観光の成功のために─

1.ベトナムのリゾートに学ぶ

ベトナムの首都ハノイからバスで6時間。冬には雪をいただく標高3,143mの同国最高峰ファンシーパンを望む山岳都市「サパ」を新潟県の旅館経営者の皆様と視察で訪ねた。最終目的地はサパからさらに車で2時間走った絶壁の上に建つ天空のホテル「トパス・エコロッジ」だ。周囲は一面の棚田。少数山岳民族が米作を営みながら暮らす山の中に、デンマークの企業が同国のODAを活用して地域と共生するホテルとして2005年に開業した。

企業収益を上げながら地域と共生する持続可能な新たなリゾートはこれからの日本の地域にとっても参考になるのではないかというのが視察の目的である。利用客のほとんどがヨーロッパからのお客様で、観光地では1泊の利用が多い日本人はいない。1泊では訪ねる価値があっても片道8時間もかけてまで宿泊する意味を持てないのは無理もない。裏を返せば、滞在する欧米人に関しては、そこが意味のある目的地となれば、どんなに時間をかけても滞在しにやってくるということである。

トパス・エコロッジの特徴は、第一に、デザインの最先進国デンマークらしいランドスケープデザインである。尾根の突端でさえぎるもののない空間にベトナム風のシュロで葺かれた屋根をいただくコテージが30数棟。周囲の棚田と山々を望めるように建っている。棚田の間を行くとインフィニティプールとスパ。ラウンジ棟ではビジネスツールを取り出し、ワークに励む人もいれば、プールサイドでワインを傾ける人もいる。一種ここだけの特別な空間を醸し出している。第二には、周辺に住む少数民族「赤ザオ族」と共生している点である。毎日地元ガイドが「赤ザオ族」の集落を案内するトレッキングツアーを催しているほか、ロッジ前には赤い伝統的な帽子をかぶる女性たちが伝統的刺繍の入った工芸品を販売するマーケットが出るのだが、そこでの買い物用代金の一部は宿泊代金に含まれている。

ロッジはいわゆるDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)となり、地域全体の緩やかな経済成長に寄与している。大規模開発や施設への囲い込み等、従来型観光でありがちな「開発者の総取り」を目指さず、地元住民が自発的に(工芸品やランチ需要等の)生産に関わり、新たな就労機会を生むことを目指している。

宿泊代金は日本の温泉旅館と同程度だが、ベトナム国内では高い部類に入る。しかし、ロッジの存在意義が明確であるがゆえに意識の高い顧客層が滞在をしている。インバウンドが増えゆく日本でも、今後こうした地域共生型リゾートが増えていってもおかしくはないだろう。

 

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成功するインターンシップとは

2018/09/03 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─地方で働く潜在需要を作る─

1.日本型インターンシップ

大学で私のゼミに所属する36名の学生は、毎年8月から9月に地方の旅館での3週間のインターンシップ(就労体験)に行く。海外では、インターンシップというと、学生が自ら志望する企業でお互いにマッチするかどうかを見極める目的をもって、大学と企業が連携して最低3カ月以上の期間で実施している。しかし、日本の場合、新卒一括採用という採用スタイルであることもあり、そうしたカリキュラムを採る大学は少なく、長期のインターンシップはまだあまり普及していない。

日本の就職活動はといえば、大学3年も終わりに近づくと、学生はサークルとアルバイトで培った力ばかりを書いたエントリーシートを抱え、大学の面接対策講座で教わった一夜漬けのフレーズを暗記して臨んでいる。志望企業は自分の知っている会社か親の勧める企業ばかり。そして、入社して1年以内に35%が、3年以内に50%の若者が「仕事が自分に合わなかった」と辞めていく(内閣府・子供・若者白書)。こうした就活をしている限り、いつまで経っても大学と社会の間の溝は埋まらない。そして、何より一番の被害者は、十分に育たないまま社会に出ていく学生本人ではないだろうか。

井門ゼミでは、2年生の7月にゼミ所属が決まると、かつて後鳥羽上皇が流された隠岐諸島などの旅館に向かう。ちょうど夏はかき入れ時なので、旅館としても有難い。報酬はなし。その代わり、住居とまかない食が提供される。彼ら、彼女たちは、地方や旅館への就職を目指しているのかといえば、そうではない。そういうと旅館の方から叱られそうだが、旅館に就職したいという学生は多くはない。学生がインターンシップに行く第一の目的は「社会人基礎力の養成」だ。鍛える場として地方旅館(特に島の旅館)はとても適しているのだ。 続きを表示…

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旅館革命を導く業法改正

2018/08/01 :観光イノベーションで地域を元気に

株式会社 井門観光研究所 代表取締役  井門 隆夫(いかど たかお)氏

─分散型ホテルで地域は滞在型に─

1.アルベルゴ・ディフーゾ

2018年6月15日、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、民泊が正式に合法化されたニュースばかりが注目を浴びているが、同日に施行された改正旅館業法にこそ、地域にとって今後重要になってくる要素が秘められている。今回の旅館業法改正は、とりわけ、通過型観光地と揶揄されたり、観光資源は何もないと思われていたりするような地域にとって、滞在型観光地へと転換できるほど影響のある改正になった。

今回の改正で重要な点は2つある。1つ目は「最低室数の撤廃」である。これまでは旅館は5室、ホテルは10室と客室数の規定があったがそれがなくなり、1室の建物でも旅館・ホテルとして許可を受けられるようになった。2つ目は「フロント(帳場)」がなくてもよくなったことだ。また、3月には建築基準法も改正となり、こちらでは、建物の用途変更に関して建築確認申請を省略できる基準が100㎡以下から200㎡以下へと多少緩和された。

これらの要素で何が可能となるのかといえば、複数の古民家や空き家を活用した「分散型ホテル(まちぐるみ旅館)」が1軒の旅館・ホテルとして認められるようになる。

分散型ホテルとして世界的に知られているのが、イタリアで1980年代に始まり、欧州全体へと広がりを見せている「アルベルゴ・ディフーゾ」(イタリア語で分散型ホテルの意)だ。1976年に北イタリアで発生して大きな被害をもたらした地震復興の一環として、空き家となった複数の伝統的家屋を客室とし、周辺のレストランや商店など集落全体をホテルと見立てたのがその始まりである。もともとは、宿泊施設もなかったような村ばかりだが、地元の人には当たり前でも観光客にとっては美しい景観のなかで暮らすように滞在できることから一躍観光客に脚光を浴びるようになり、今ではイタリア国内だけでも100を超えるエリアで誕生している。

日本でも、2000年代後半に同様の動きが生まれてくるようになる。

例えば、兵庫県篠山市では、2005年、兵庫県職員として丹波県民局で勤務していた金野幸雄さんが、町家の消滅に危機感を覚えた仲間たち(まちづくり、建築士、景観等の専門家5人)と「NPO法人たんばぐみ」内に「まちづくり部会」を設立し、公的資金に依存せず、市民の資金とボランティアで空き町家の改修や活用する方法の研究を開始した。この動きが、後々、「集落丸山」や「篠山城下町ホテルNIPPONIA」といった日本を代表する分散型ホテルの礎となっていく。

2009年に、古民家等の再生整備と滞在体験施設としての運営を行なう一般社団法人ノオトが設立され、古民家を改修して宿泊施設化するプロジェクトとして最初に手掛けたのが、市内から車で10分ほど離れた丸山集落の古民家群。12軒中7軒が空き家となった黒豆畑に囲まれた限界集落で、このうち3軒の古民家について10年間の無償貸与を受け、地元工務店を使い改修を行なった。改修費用の半額は国や県の補助金を活用したが、所有者をはじめ市民からの出資や銀行からの借入れも受けた。PRや営業はノオトが行なったが、施設管理はNPOを作った集落に一任をすることで、集落自らが経営する分散型ホテル「集落丸山」が誕生した。

海の向こうで民泊予約サイトのAirbnbが誕生したのが2008年。リーマンショック前夜でもあったこの頃、京都では京町家を改修して1棟貸しする動きがスタートした。高松では仏生山商店街に1棟貸しの客室を造り、町の温泉銭湯や食堂も宿の機能に見立てた「まちぐるみ旅館」というコンセプトが生まれた。宿が変わっていく時代の胎動は、今から10年前のこの頃に始まった。

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