海外現地レポート

掲載中止のお知らせ

2020/06/01 :海外現地レポート

新型ウイルス感染症拡大により、当面の間、海外現地レポートを中止させていただきます。

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第38回 香港

2020/05/01 :海外現地レポート

香港        第四銀行  営業本部

香港のオンライン教育

新型ウイルス感染症(以下、COVID-19)対策のため、香港では幼稚園、小学校、中学校(日本の中学・高校に相当)は、春節明けから休校措置が取られ、3月現在でも再開できない状況が続いています。既に2カ月近く休校が続くなか、香港教育局は「休校期間中も教育を継続する」ことを目的として、メールや学校のホームページ等を通じて教材や宿題を配信することを推奨しています。

メール等での教材・宿題の配信の他、多くの学校で、ZoomやGoogle Hangouts Meetなどのライブ配信アプリを用いてオンライン授業を実施しています。学生がパソコンやスマートフォンでアクセスができれば、自宅でも授業を受けることができます。香港政府は、過去20年間に計140億香港ドル(約1,960億円)をかけて、学校で使用する教材のソフトウェアやサーバー構築などIT教育体制の整備を進めてきました。これにより多くの教師が、日ごろからIT機器を使った授業を行なうことに慣れており、オンライン授業の実施にすぐ適応することができました。学校によって、配信される授業の内容は様々で、国語や算数などの座学による学習に限らず、図工や体育なども画面を通じて行なっています。流石に通常の授業と異なり、科学実験などは行なえないものの、オンライン授業の活用により、本来予定していた学習過程の8割を達成することができている学校もあるようです。

教師が画面上で学生一人一人の顔を見てフィードバックができるほか、学生もチャット機能により、普段しにくい質問がしやすくなるなど、オンライン授業ならではのメリットがあります。IT機器の利用に詳しい学生が多く、通常の授業よりもアクティブに参加する傾向がみられ、自主的な学習意欲を高める効果が期待されています。

一方で、オンライン授業には問題点もあります。SARS流行の2003年と比べ、各家庭でのIT機器の普及が進んでおり、オンライン授業を行なうための環境は整ってきているものの、一部の経済的に恵まれない学生が、IT機器を用意できず、オンライン授業に参加することができないという問題が生じています。対策として、学校がIT機器の貸与を行なうなどしているものの、自宅のネット環境が不安定なため、オンライン授業の視聴や、宿題のダウンロードに支障が出るなどの問題も生じています。貧困層支援を目的としたNGO団体である社区組織協会(SoCO)は、そういった学生に対し、政府が休校期間中にSIMカードの支給を行なうことなどを要求しています。また、香港ならではの事情として、狭い自宅の中でオンライン授業を受けるなかで、家族の会話が授業の妨げになったり、家庭内がオンラインカメラに映ってしまうなどの問題もあります。在宅勤務となる両親も多いなか、子供たちが集中してオンライン授業に取り組める環境を確保するのは難しい状況にあります。

この様に、オンライン教育の普及が進むなか、そこに使われる機器やソフトウェア需要の高まりが期待されていますが、Zoomの林振志氏は「COVID-19の収束後、オンライン教育のニーズは減る」としています。一方で、教育現場に関わらず、会議・営業・現場視察など企業活動の様々な場面で、オンラインを利用した新しい取り組みが進んでいくことも期待されています。

(香港派遣 石塚 隆史)

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第37回 香港/バンコク

2020/04/01 :海外現地レポート

香港        第四銀行  営業本部

香港での日用品・食料品の買い占め問題

新型コロナウイルスCOVID-19の感染拡大の影響により、日本では日用品・食料品等の買い占めが問題となっていますが、日本に先立って、香港でも日用品・食料品等の買い占めが問題となりました。

最初に買い占めが発生したのは、マスクでした。香港は、2003年にSARSの大流行を経験していることもあり、感染症に対する危機意識が非常に高い地域です。昨年12月に中国本土で新型のウイルス性肺炎が流行し始めたというニュースが伝わると、早々に街中でマスクを着用する人が増え始めました。春節の前には、マスクの買い占めが始まり、どこに行っても買えないという状態になりました。入荷の情報がある店に、深夜2時から購入希望者の行列ができるといった事態まで発生しました。

その後、トイレットペーパー・ティッシュペーパー・消毒液といった日用品、米・インスタントラーメン・野菜といった食料品が買い占められ、多くのスーパーで陳列棚がほとんど空に近い状態が続きました。品不足が続いたことで、トイレットペーパーを狙った強盗事件まで発生しました。現在では、日用品も食料品もピーク時と比較し、状況はかなり改善していますが、依然として店頭の品揃えには偏りがあり、平常時とは異なる状況が続いています。

根拠のない噂が、買い占め発生の原因の1つといわれています。「COVID-19の感染防止のため中国本土との入境制限が行なわれ、日用品や食料品の物流が滞り、深刻な品不足を招く」などのSNSの投稿がその典型例です。こういった噂の背景には、香港が多くのものを輸入に頼っているという事情も影響しています。特に、香港の食料自給率は非常に低く、日本を含む海外からの輸入に依存していますが、距離の近い中国本土がその大部分を占めています。その状況下で、入境制限がされれば、物流が滞るという不安から、パニック的に様々な食料品が買い占められたと考えられます。米に関しては、実は中国ではなく、80%以上が東南アジアから輸入されていますが、今回の様な事態が起こりました。

政府高官が、米等の主要な食料品の備蓄量を列挙し、食料の安定供給に懸念がないとの発表を行なっても、買い占めの解消には時間がかかっています。香港は関税が安いため、世界中から様々な食料品が安価に入ってくるというメリットがある一方で、サプライチェーンにひとたび問題が生じた場合、大混乱が生じる可能性があるというデメリットも同時に抱えています。

この香港での買い占め問題のなか、新潟県民として非常に気になる出来事がありました。スーパーの米売り場の棚がほとんど空になるなかで、特に売れ残っていた商品が、新潟県産米『新之助』でした。スーパーの関係者の話では、価格の高さがなかなか売れない理由の1つとのことでした。同スーパーや多くの食料品小売店では、タイ産米の人気が高く、入荷されるとあっという間に売り切れる状態でした。タイ産米2キロが40〜50HKD(560〜700円)程、他の日本産米の価格がおおよそ120HKD(1,680円)程、『新之助』は2キロ165HKD(2,310円)とタイ産米の3倍近い価格設定となっています。『新之助』よりも高い価格の日本産米も販売されていますが、やはり売れ行きはいまひとつの状況の様です。社会の不安を原因とする過剰な需要増加のなかでも、購入に繋がらないという点は、看過できない大きな問題であると感じました。

(香港派遣 石塚 隆史)

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第36回 ホーチミン/バンコク

2020/03/02 :海外現地レポート

ホーチミン        第四銀行  営業本部

訪日ベトナム人客のお目当ては?

日本からベトナムまで直線距離で約3,600km、飛行機で5時間半かかりますが、物理的な距離よりも、ベトナムと日本はより近くなってきているのかもしれません。今年1月、日本の観光庁が発表した「訪日外国人消費動向調査」によると、2019年に日本を訪れたベトナム人は49.4万人にものぼりました。訪日客が最も多い中国(799.6万人)や韓国(556.9万人)に比べるとその数はまだまだ少ないともいえますが、伸び率は前年比+27.6%と調査対象国のなかでは、フィリピンの+28.8%に次いで大きく、今後もっとも成長が楽しみな国のひとつといえるかもしれません。

では、ベトナム人旅行者は日本のどんなところに興味を惹かれるのでしょうか?

ベトナムで日本向けパッケージツアーを組むSong HanTourist社のHPでは東京、大阪、京都を巡るツアーが多くみられます。また、私自身の感覚としてもこの3都市は大変人気です。日本語を勉強する学生や来日予定のベトナム実習生に「行ってみたいところはどこか?」との質問を投げかけると、必ずこの3都市が挙げられます。「お城を見たい!」「桜を見たい!」「美味しい日本食が食べたい!」等々、私が会ったベトナム人の若者は日本に対して大変な憧れを持っているようにも感じました。

また、上記の消費調査のなかでは国別の消費の傾向もみることができます。昨年ベトナム人旅行者が日本で消費した額の総額は871億円(前年比+19.3%)であり、その内訳は、宿泊費241億円(27.7%)、飲食費228億円(26.2%)、交通費89億円(10.1%)、娯楽等サービス費25億円(2.9%)、買い物代288億円(33.1%)となっています。ベトナム人旅行者の消費の傾向としては「買い物代」が多いことが特徴のようです。

この買い物代ですが、他国と比較するとその傾向が顕著にみてとれます。訪日外国人旅行者の消費額で最も買い物代が多いのが中国です。「爆買い」という言葉は、最、日本でも定着していますが、中国人旅行者の買い物代が一人当たり108,800円で調査国中では第一位となっています。対して、ベトナム人旅行者は一人当たり58,191円で第二位に位置しています。実際、ホーチミンの空港出口では日本の医薬品や食料品・飲料のロゴが入った大きなダンボール箱をいくつも抱えて出てくる旅行者が多くみらますし、なかにはそのまま親族にお土産を配り始める光景もよくみられます。ベトナムには無いもの、高品質な日本製品を買って帰りたいというニーズは今後「ベトナム版爆買い」として更に存在感を出してくるのかもしれません。

更に、ベトナム人旅行者によるインバウンドは地方にも拡大してくるでしょう。現在、日本とベトナムを結ぶ航空路線は東京、大阪、愛知といった大都市圏が中心です。しかし、ベトナム現地のLCC航空会社「ベトジェットエアー」社は、今年、新規で福岡、鹿児島に新規路線を就航することを発表しました。同社の日本路線は合計で10路線となり、更なる路線拡大も構想しているとのことです。また、新潟空港にも同社のチャーター便の運航が計画されています。現在、日本全国でインバウンドの誘致競争となっていますが、東京からアクセスの良い雪国であり、山海の豊かな食を持つ新潟は、魅力的な場所のひとつではないでしょうか。数ある外国のなかでも、9,700万人近い人口を持つベトナム、買い物好きのベトナムは有力なセールス先のひとつです。新潟への旅を印象的なものにし、何度も何度も訪れていただくためにも、ベトナム人のニーズをしっかりと捉え、文化、食、自然、そして県民性とオール新潟でアピールをしていきたいものです。

(ホーチミン派遣 今井 雅也)

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第35回 上海/バンコク

2020/02/03 :海外現地レポート

バンコク        第四銀行  営業本部

早すぎた高齢化社会

多くの人が東南アジア諸国に対して、出生率が高い「若い国」という印象を持っているのではないでしょうか。意外かもしれませんが、タイは経済発展の過程で「高齢化社会」が急速に進んでいる国の一つです。今回はタイの高齢化社会とそれに付随する医療・介護についてレポートします。

国連が発表した統計によると、タイは総人口のうち65歳以上が占める割合(高齢者割合)が7%以上という「高齢化社会」に突入しています。さらに、2030年には同割合が21%以上である「超高齢社会」と近い状況になることが予想されています(下図)。タイの高齢化は日本を上回るスピードで進行しており、近い将来、高齢者への生活支援が社会問題化する可能性が極めて高いといわれています。

タイの合計特殊出生率(一人の女性が産む子供の数の平均)は年々低下しています。2019年の同国の出生率は1.50と予想されており、人口を維持できる水準である2.07を大きく下回っています。日本でも少子化が社会問題となっていますが、2018年の日本の出生率は1.42となっており、タイは日本とほぼ同水準になりつつあります。主な要因は、教育レベルが上昇したこと(タイの大学進学率は50%超でASEAN1位)、女性の社会進出が多くなったことがあげられ、バンコクに住むタイ人女性に限ると、およそ3割が未婚であるといわれています。

タイでは、医療技術の進展による平均寿命の延伸も高齢化の要因となっています。タイの平均寿命は2010年頃には70才前後でしたが、近年では75才前後にまで延びました。

医療技術や衛生管理などの病院のレベルを測る世界的に有名な基準として「JCI(医療施設認定合同機構)認証件数」といった基準があります。タイ国内でJCI認証を受けた病院数は68件(2019年9月末時点)とASEAN10カ国で最多となっており、また世界的にみても日本が12位であるのに対し、タイは4位と高水準の医療が提供されていることが窺えます。同国は既に高い医療技術を持っていますが、国策としてロボットや次世代自動車と並び「医療・健康分野」についてもさらなる発展のため、推進を図っています。

高齢者の割合が大きくなるにつれ、介護需要が増加することは明らかです。タイには公的な介護保険制度がないことから、家族による自宅内での介護が一般的となっています。またタイの国民には「家族が一番大切」とする文化が強く残っており、家族の一員を介護施設に預けることは「親不孝だ」といった価値観があることも介護に対する考え方に大きく影響しています。日本では被介護者に対して「自立支援」を促すこともサポートの一つといった見方がありますが、タイでは「家族に無理にリハビリをさせたくない」といった考えをもつ家族も多く、介護に対する概念は日本とは異なっています。しかし、予想を上回るペースの高齢化によって、今後はタイ人の介護に対する価値観も変化していくかもしれません。

タイは高齢化社会に対して、年金などの社会保障施策や子育て支援等の財源が大幅に不足しているなど、多くの課題を抱えています。経済発展レベルからみると、タイは「早すぎた高齢化社会」といわれており、タイ政府は早急な対策を迫られています。

(タイ派遣 小池 貴大)

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第34回 上海/香港

2020/01/06 :海外現地レポート

上海     第四銀行上海駐在員事務所

第2回「中国国際輸入博覧会」

【はじめに】

2019年11月5日から10日までの6日間、上海市で第2回「中国国際輸入博覧会」が開催されました。中国政府が輸入の拡大を目指し、今年で2回目となる大型見本市です。本博覧会は、国家が出展する「ナショナルパビリオンエリア(国家館)」と「食品・農産物」「科学技術・生活」など7つのテーマが集う「企業出展エリア」で構成されました。

【ナショナルパビリオンエリア(国家館)】

「ナショナルパビリオンエリア(国家館)」には、64カ国と3つの国際機関が出展しました(図表)。出展国のうち、カンボジア、チェコ、フランス、ギリシャ、インド、イタリア、ジャマイカ、ヨルダン、カザフスタン、マレーシア、ペルー、ロシア、タイ、ウズベキスタン、ザンビアの15カ国は、「主賓国」として、「主催国・中国」の出展ブースの近くに配置されました。今回「主賓国」のなかで存在感を示していたのは、開会式にマクロン大統領が自ら出席したフランスです。「ワイン試飲のバーカウンター」「大きなエアバス機の模型」等の華やかな装飾が施されたフランスのブースには、大勢の来場客が集まりました。

【企業出展エリア】

「企業出展エリア」には、世界181の国と地域から、3,800社余りの企業が集まりました。

前年同様、出展者である海外企業・機関とバイヤーとして会場を訪れた中国企業・機関との間で商談が行なわれ、主催者がHPで公表している速報によれば、会期中の成約額は、前年の成約額を約133億ドル(1兆4,000億円)上回る711億3,000万ドル(約7兆7,500億円)となりました。「企業出展エリア」に出展する企業のなかで、注目を集めていたのは「世界最細、最短のインスリン用注射針」「人間の目以上に多角的な視野を持ち、人間の手よりも繊細な動きが可能な手術支援ロボット」等、最先端の技術を持つ企業でした。

【日系企業の「企業出展エリア」への出展方法】

今回開催された第2回「中国国際輸入博覧会」への日系企業の出展方法は、大きく二つに分けられます。一つは、JETROが取り纏める「ジャパン・パビリオン」から出展する方法です。今回は「医療機器・医薬保健」「食品・農産物」分野で「ジャパン・パビリオン」が設けられました。もう一つの出展方法は、JETRO(国際協力機構)経由で主催者に申し込みをして自社単独ブースを出展する方法です。

【まとめ】

第2回「中国国際輸入博覧会」の現地取材を通じて、「『中国国際輸入博覧会』」の位置付けが、主催者と一部出展者の間で一致していない」という印象を持ちました。

主催者は「中国国際輸入博覧会」を「輸入拡大」を図るための単なる「大型見本市」ではなく、自国のメッセージを世界に発信する大舞台と考えています。「ジャパン・パビリオン」をとりまとめたJETROのHP上での発表をみると、全体的には前年を上回る成約額があったと評価する声がある一方、一部出展者からは「中国市場開拓の絶好のチャンス」と考え、多額の費用をかけて「中国国際輸入博覧会」に出展したのに、予想したほどの成果が得られなかったという声もあります。

        自社商品・製品の強みを認識するのはもちろん大切ですが、どの様な方法で情報発信すると                      効果があるのかを、さらに掘り下げて考えていく必要が増してきているのではないでしょうか。
(柄澤 雄)

 

 

 

 

 

 

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第33回 ホーチミン/香港

2019/12/02 :海外現地レポート

ホーチミン        第四銀行  営業本部

ベトナム人材市場の変化

ベトナム駐在を続けるなかで最も多いご相談が「ベトナム人材」についてです。ベトナム全体の人口は約9,500万人ですが、労働人口の中心とも言える15歳~49歳までの就業者数はベトナム統計総局の発表で、約5,300万人と豊富な労働力を有しています。日本に住む外国人技能実習生の数としてもベトナム人は最も多く、全国各地で活躍をしています。現在も、将来的にも人手不足に悩む日本にはベトナム人材の受け入れは有効な解決策の一つです。また、昨年11月からは介護分野など技能実習生の受入可能業種の拡大、更に今春には長期での就労を可能とする改正出入国管理法が施行され、受け入れの幅が広がりました。こういった動きからも引き続き注目のベトナム人材の受け入れですが、当のベトナムからの人材供給は安定的に続くのでしょうか?

実は、ベトナムにて活動をしているなかで、在ベトナム日系企業からよく聞かれる悩みが「人材不足」です。この人材不足には大きく分けて2種類あるのですが、ひとつが「マネジメント層の不足」、もうひとつが「ワーカーの不足」です。

「マネジメント層の不足」は、1975年のベトナム戦争終結、1986年の市場開放といった歴史的転換点からまだ日が浅く、マネジメントにあたる世代で日本語能力やマネジメントに必要なスキルを身につけている人材が少ないこと、転職経験がキャリアとされる現地での意識から長期雇用が難しいことなどに起因しているといわれています。「ワーカーの不足」については、急速な経済発展、外資の相次ぐ進出により、少しでも良い職場環境・賃金待遇を目指すワーカーの転職に起因しているといわれています。

人材不足に悩む在ベトナム日系企業は、残業を意識的に発生させ従業員の実質賃金を向上させる、従業員に会社負担で民間の医療保険を付保するなどの対策を講じ、人材の安定的確保に努めています。また、ベトナム現地の大学で奨学金を設定する、設備を寄付するなど、青田買いの対策を講じる企業もあらわれ、ベトナム国内では都市部を中心に人材獲得競争の様相を呈してきています。

外国向けの人材紹介会社、人材送り出し機関も人材確保のために同じく対策を行なっています。ベトナムのある技能実習生送り出し機関の代表は、自社の強みについて「地方政府と提携しており、今年も数百人の学生を確保している」と自負しています。これは反面、地方政府とのコネクションがない限り、安定的な人材確保が難しいともいえます。技能実習生の認定送り出し機関だけとっても国内では2019年10月現在でも329社もあり、こちらでも過酷な人材獲得競争が繰り広げられているのです。

日本の企業や団体もベトナム人材確保への対策を始めています。ある大手建設会社はベトナムに独自で職業訓練校を開設し、実務研修、日本語教育を行ない、育てた人材を日本に送り出していますし、人材紹介会社でも、ベトナムの大学内に自社の日本語コースを設置し、日本企業向けに紹介する学生の囲い込みを図っています。

これまでは企業優位の「買い手市場」ともいえたベトナム人材の採用ですが、今後は応募者優位の「売り手市場」に変化していくものと考えられます。そういったなかで、日系企業はベトナム国内企業、欧州企業や韓国企業をはじめとした諸外国の企業との競争に打ち勝つ人材を確保しなければなりません。ベトナム国内、国外の採用に関わらず、ベトナム人材の確保に向け、応募者のニーズを的確に捉え、戦略的に人材獲得に動き出す必要がありそうです。

(ホーチミン派遣 今井 雅也)

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第32回 上海/香港

2019/11/01 :海外現地レポート

香港        第四銀行  営業本部

香港の消費税

日本では今年10月1日から消費増税となりましたが、香港には消費税が存在しないことはご存知でしょうか?消費税に注目し、日本と香港の税制の違いについてレポートしたいと思います。

香港では事業所得税、給与所得税、印紙税等で歳入全体の約70%を占めます。更に香港ならではの、土地に関する歳入(Land premium※)を加えると約90%を占めます。一方、日本では所得税、法人税、印紙税等で歳入全体の約43%を占める(消費税収の約19%を含めれば約62%)程度です。日本は税収の不足分を公債金(借金)で賄っており、公債金は歳入全体の約3分の1に相当します。この様に日本と異なり、香港は税収で歳入の大部分を確保していることがわかります。

香港には消費税のみならず、贈与税、相続税、キャピタルゲインへの課税、住民税もなく、日本に比べて個人・法人ともに納めるべき税金が少なく、シンプルでわかりやすい税制度となっています。更には税率自体も低いという点が大きく異なっています。

香港の税制に魅力を感じる外国企業の多くが集まることで税収が増え、その税収を基にインフラ整備を進めることで、さらに企業が集まり税収が増えるという正のスパイラルが続き、消費税等がなくても十分に税収を確保することが可能となっています。

香港政府は2006年に幅広い財源確保のため、日本の消費税にあたる5%の販売税(Goods and ServicesTax)の導入を検討したことがあります。香港政府は香港の税制には財源の種類が少ないことが課題であるとし、景気低迷時には大きく影響を受ける事業利益、給与収入、不動産価格よりも、より影響の小さい個人消費に課税することで、安定的な財源が確保できると主張し導入の検討を行ないました。しかし、消費税よりも高い土地価格の負担解消が優先事項である等の主張から、市民の理解は得られず、導入には至りませんでした。

今回の日本の消費増税は、増収分の約半分が「教育・子育ての充実」と「社会保障の充実」に充てられます。日本の2019年度予算の社会保障費は33.9兆円であり、一般歳出(歳出全体から地方交付税交付金等と国債費を除いたもの)の約56%を占めていますが、年々増加する社会保障費を賄うため、消費増税が行なわれます。一方で、香港の2019年度予算では社会保障費に該当するもの(「SocialWelfare」+「Health」)は1,858億HKD(約2兆6千億円)と歳出の約30%を占める程度で、日本に比べて社会保障負担はあまり大きくないということがわかります。

香港はシンプルな税制度と低税率を売りに、多くの外国企業、投資家を呼び込むことで経済成長を続けてきました。しかし昨今は香港内外において情勢が大きく変化しており、これまでの経済成長を維持し、現行の税制度を継続できる保障はありません。香港も日本と同様に高齢化が進行し社会保障の必要性が増しており、将来の財源確保のため改めて香港も消費税導入を検討する可能性はあります。今後、香港の情勢の変化により、税制にどのように影響を及ぼすのか注目していきたいと思います。

※ 香港では土地は政府が保有しており、不動産会社はその土地のリース権を競売で購入し住宅を建設しています。Land premiumはその競売により政府が得る収益です。土地価格が高騰すれば政府が得る収益が大きくなり、市民の負担が増えるため間接的な税金ともいえます

(香港派遣 石塚 隆史)

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