海外現地レポート

第28回 上海/バンコク

2019/07/01 :海外現地レポート

バンコク        第四銀行  営業本部

タイの国際鉄道拡大の動き

最近タイでは国際鉄道に関する報道が相次いでいます。今年に入ってから、タイとカンボジアが鉄道で結ばれ、さらにラオスとも新しく鉄道を接続する計画が発表されました。今回はタイの新しい国際鉄道についてご紹介したいと思います。

今年4月にタイ・カンボジア両政府は、両国間を結ぶ国際鉄道を開通する調印式を開きました。既にテスト運行は終了しており、年内には運行スケジュールが発表される予定です。これにより近いうちに、両国の首都のバンコクからプノンペンまで鉄道での往来が可能になります。

今回の国際鉄道の開通は、もともと国境を巡る問題などで関係が良好でなかった両国が、東南アジア域内での経済活発化や関係改善に向けて、2015年にタイのプラユット暫定首相とカンボジアのフン・セン首相との会談で合意したことが前提となっています。

今回、鉄道が結ばれた都市はタイ側国境のアランヤプラテートとカンボジア側のポイペトで、両国間の鉄道開通は45年ぶりとなります。過去に、両国間には第2次世界大戦中の1942年に日本軍が敷設した鉄道がありましたが、両国の関係悪化を受けて1974年に運行停止されており、さらに1976年にカンボジアでポル・ポト政権が成立すると、同国内の鉄道施設はほとんど破壊され、両国を結ぶ鉄道は完全に断絶していました。

既にカンボジアのポイペトには工業団地が存在し、タイからの製造業の進出が相次いでいて、互いの国で製造した製品を輸出入し、加工・組み立てなどを行なう動きが活発となっています。これまで両国間の物流はトラック輸送が主流であり、輸送コストが多くかかっていましたが、今回の鉄道物流の整備によって、カンボジアへの製造分業が加速することが期待されています。

また、今年4月25日には、タイ運輸省、ラオス公共事業運輸省、中国国家発展改革委員会との間で、タイ・ラオス国境間の鉄道接続に関する3カ国間の協力覚書が調印されました。内容は、タイ国境側のノンカイからラオス側の首都ビエンチャンの国境地域での接続について、中国の鉄道技術基準を用いてプロジェクトを進めることを基本合意したものです。未だ具体的な内容・スケジュールについては発表されていませんが、今回の3カ国間の協力覚書の締結により、タイ・ラオス間の鉄道インフラ整備が一段と進むことになります。

タイ政府が隣接国と鉄道の接続を進めている背景には「タイ・プラスワン」の動きがあります。タイ・プラスワンとは、タイに集積している事業工程のうち、労働集約的な工程を、タイよりも労働コストが安価で、かつ労働人口を容易に確保が見込めるカンボジア、ラオス、ミャンマーに移管させる動きをさします。タイでは人件費の高騰によって、製造業が安い労働力を求めて近隣諸国に生産分業するケースが増加しており、タイ政府は鉄道インフラ整備によってその動きをサポートすることで、タイへの投資が加速されることを期待しています。

(バンコク派遣 小池 貴大)

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第27回 ホーチミン/バンコク

2019/06/03 :海外現地レポート

ホーチミン  第四銀行コンサルティング推進部

ベトナムの『一村一品運動』

日本で始まった地域活性化の運動が世界各国に広まり、ここベトナムでも熱心に取り組みが行なわれています。

1979(昭和54)年に日本で始まった運動『一村一品運動』をご存知でしょうか?これは当時の大分県知事であった故・平松守彦氏が提唱したもので、地域ごとの特産品を開発し、地域経済や地域社会を盛り上げていこうという運動です。この一村一品運動には3つの柱があります。「ローカルにしてグローバル、自主自立・創意工夫、人づくり」です。この考え方は特に、豊かさを追い求める発展途上国で、一部の大都市のみの発展でなく、国全体、地域経済の発展に資すると見られ、好意的に受け入れられています。

ベトナムもそうした国の一つです。ベトナムは1986(昭和61)年のドイモイ政策以降、急速な経済発展を遂げてきましたが、都市と地方の格差は拡大しています。現在でも貧しい地方の人々が職を求め、大都市に多く移住してきています。実際、ベトナム統計総局の発表では2007(平成19)年からの10年間で、国全体として11.2%の人口増加を記録するなかで、都市人口は38.1%の伸びを示していますが、農村部の人口はほぼ横ばい(0.6%)であり、地方農村部から都市部へ移住する人々が多いことが窺えます。地方経済や社会を衰退させない為に、地方の経済的独立や魅力的な社会づくりが必要となってきますが、こうした課題に対し、この一村一品運動が注目されてきているのです。

ベトナムでの一村一品運動は2013(平成25)年より、運動の発祥の地である大分県の大分国際一村一品交流協会やJICA(国際協力機構)の協力のもとで進められてきています。そして昨年5月ついにベトナム政府はベトナム版一村一品運動『One Commune OneProduct(OCOP)』についての政策を打ちだし、2020年までの間に約20億USDの投資を行ない、地方の創生・活性化に向けた取り組みを始めてきています。

具体的には、ベトナムの地方にはどのような特産品があるのでしょうか?例えば、北部では細かな彩色が施された陶磁器「バッチャン焼」や近年アジアン雑貨としても日本で見かけることも多くなった竹細工や籐かごの照明などのインテリアも有名です。ベトナム中部にある古都フエの周辺では、螺鈿などが散りばめられた美しい漆器が作られています。ベトナムの主要な産業でもある織物では、北部山間部に住む少数民族の織る独特の模様が目を引きます。また、農作物でいえば、中部ダナンで採れる有機野菜やワインなどはベトナムでも人気のブランドとなっています(ダナンのワインはAPEC2017でも振舞われました)。こういった特産品は海外からも注目を集め始めており、地域経済発展の起爆剤になることが期待されています。

一方、この活動には解決しなければならない課題があるのも確かです。その一つは販売・流通ルートです。ベトナムでは特に農作物の流通で問題になるのですが、生産物が最終消費者の手元に届くまでに、多数の中間業者が入り、多くの問題が発生しています。例えば、生産物の価値が正しく認識されなかったり、杜撰な管理が生産物の品質を棄損したり、中間マージンが多くとられ生産者に充分な利益がもたらされないといった事柄です。今後の取り組みにより、こういったバリューチェーンの整備・構築もしっかりと為されていくのかも注目です。

(ホーチミン派遣 今井 雅也)

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第26回 上海/ホーチミン

2019/05/07 :海外現地レポート

上海     第四銀行上海駐在員事務所

中国国内における外商投資政策

2019年3月15日、第13回全国人民代表大会第2回会議(以下、全人代)で「中華人民共和国外商投資法(以下、外商投資法)」が成立、公布されました。「外商投資法」は、中国国内における外商投資分野の基本法として制定され、2020年1月1日より施行されます。

今回は、外国企業の権益保護を目指し制定された外商投資法」や中国国内における外商投資政策が日系企業にどの様な影響を与えるのかについて考えたいと思います。

「外商投資法」は、外商投資の促進、外商投資の合法的な権益の保護、外商投資管理の規範化を目的とする法律です。これまで、中国における外商投資分野の基本法であった「中外合弁経営企業法」「外資企業法」「中外合作経営企業法」(以下、外資三法)という三つの法律で規制していた外商投資分野に関する法律が外商投資法」となりました。

「外商投資法」施行前、政府はすべての外商投資案件に対して、案件ごとにその都度審査を行ない、外商投資企業を設立するには政府の審査を受ける義務がありました。しかし、「外商投資法」施行によって、「参入前内国民待遇およびネガティブリストによる管理制度」「情報報告制度」「安全審査制度」によって管理するなど、審査の過程を簡素化にしました。

「外商投資法」では、「参入前内国民待遇」について、「投資前の段階で、外国投資家や外国投資家が行なう投資に対して、中国の投資家や中国の投資家が行なう投資に下回らない待遇を与える」と明確に規定しました。また、外国投資家と外商投資企業の中国国内における合法的な権利、検疫の保護について単独の章を設け、明確な規定を定めました。

具体的には、「外国投資家と外商投資企業の財産権保護の強化」「外商投資に係る規則制定ルールの強化」地方政府による政策に係る約束事項と契約の履行」「外商投資企業苦情処理業務メカニズムの構築」などです。このなかで、注目すべきなのは「行政手段による技術移転の強要を明確に禁止」している点です。

今般の「外商投資法」の成立は「知的財産権の保護」や「積極的な外資誘致」という中国の今後の方針を示すものです。また、今年は上記の「参入前内国民待遇」に加え、これまで外資企業が中国国内企業と比較して不利な条件となっていた「政府調達」「規格制定」「産業政策」「科学技術政策」「資格許可」「上場による資金調達」などの幅広い分野で外資企業に公平な待遇を与える「参入後内国民待遇」を進めると、中国のマクロ経済政策を担う国家発展改革委員会は発表しました。

こうした中国の外商政策の変化は、日系企業にとって、これまで参入できなかった分野で中国市場に参入する可能性が出てくるだけでなく、すでに進出している日系企業の事業継続がしやすい環境整備にもつながるのではないでしょうか。「経済成長率の鈍化」に注目が集まりがちな中国経済の動向ですが、こうした日系企業にとってプラスの影響をもたらしそうな話題にも目を向け、客観的な判断をしていくことが必要なのかもしれません。

(柄澤 雄)

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第25回 上海/バンコク

2019/04/01 :海外現地レポート

バンコク   第四銀行コンサルティング推進部

日系商業施設のタイ進出

バンコク中心部では大型商業施設が至る所に立ち並んでいます。タイでは国内消費市場の拡大に伴って、大型商業施設の投資が加速しています。最近では日系の大型商業施設2店舗が相次いでオープンし話題となりました。今回は新たにタイに進出した日系商業施設2つをご紹介したいと思います。

昨年11月、バンコクに「サイアム髙島屋」がオープンしました。髙島屋の海外進出はシンガポール、中国、ベトナムに続いて4カ国目となります。サイアム髙島屋は、約90,000㎡の敷地面積を誇る大型複合施設アイコンサイアム(写真1)内のショッピングモールに中核テナントとして出店しており、約530のブランド(うち日系約170ブランド)を取り扱っています。

サイアム髙島屋のターゲット顧客層は3つあるといわれています。最もメインとなるターゲット顧客層はバンコクに住む金融資産100万ドル(約1.1億円)以上の富裕層約7万人で、次いで近隣エリアに住む中間所得層約35万人、年間2,000万人を超える外国人観光客をターゲットとしています。

サイアム髙島屋は年間約3,000万人の来店を見込んでおり、初年度の総売上高130億円、開業2年目での黒字化を目標としています。

今年2月、バンコクに「DONKI MALL THONGLOR」(以下、ドンキモールトンロー)がオープンしました。ドン・キホーテの海外進出はアメリカ、シンガポールに続いて3カ国目となります。同店は総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを運営するPan Pacific InternationalHoldingsと他2社の合弁会社によって運営されています。

ドンキモールトンローは、飲食・雑貨・化粧品などの専門店のほか、屋内スポーツ施設やイベントホールなど、日本にルーツがある34のテナント(うち19テナントがタイ初進出)が入居した日本の商品、サービスを提供する大型商業施設です。

中核テナントとなる「DON DON DONKI」では、ほとんどの商品が日本製もしくは日本市場向けの商品となっています。同店は24時間営業で、昼は食品や日用品を目当てとするファミリー層、夜は化粧品や雑貨を求める若年層の集客を見込んでおり、初年度は20億円の売上げを目標としています。同店を訪問した際は、オープン後間もないこともあり店内は容易に歩けないほどの賑わいとなっていました(写真2)。

昔からタイは親日国といわれており、多くのタイ人が「日本のもの=良いもの」という意識を持っています。そういった面では上記のような日本の商品を多く取り扱う商業施設は、他国企業に比べて優位性があるといえます。しかし、開業が相次ぐ大型商業施設は全ての店舗が成功しているわけではありません。特に商業施設が集中しているバンコクでは競争が激化しており、大型商業施設というだけでは目新しさは無くなっています。商業施設にとって他社との差別化が必須になりつつあり、コンセプトやマーケティング戦略の重要性が高まっています。

消費市場としての魅力が年々増しているタイでは、今後もさらに熾烈な競争が繰り広げられていくことが予想されています。

(バンコク派遣 小池 貴大)

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第24回 上海/ホーチミン

2019/03/01 :海外現地レポート

ホーチミン  第四銀行コンサルティング推進部

ベトナム国産車普及に向けての課題

昨年2018年11月、ベトナム初の国産車の販売が開始されました。この自動車を開発したのはベトナム最大の財閥「Vin group」傘下の「Vin fast」社で、自動車3車種(コンパクトカー・セダン・SUV)、電動バイクの販売となりましたが、わずか一日で2,000件以上もの受注があったとのことです。高い生産技術や大規模な設備を必要とする自動車生産は国の発展を示すものでもあり、ベトナム政府、国民の大きな注目を集めています。今後、このベトナム初の国産車は順調に普及していくのでしょうか。

「Vin fast」社の開発した自動車は、ドイツBMWの自動車をベースに開発され、イタリアのデザイナーが作成したデザインをWEB上の人気投票により決定しました。価格はコンパクトカーで約200万円、セダンタイプで約600万円、SUVタイプで約800万円であり、既にベトナム国内で販売されている海外メーカーとの競合も想定されています。

元々人口9,000万人超を誇り、好調な経済発展を維持するベトナムは、各国の自動車メーカーから注目されてきました。これまでもベトナム国内には日本、韓国、アメリカ、ドイツなどの海外メーカーが次々と進出し、そのなかでも日系メーカーは、トヨタ自動車が国内販売台数のうち、全体トップの27.7%を占めるなど大きな存在感を放っています。

ベトナム初の国産車は国内市場においてはまず、こういった海外メーカーとの競争に打ち勝っていかなければなりません。自動車に限らず、様々な分野において、ベトナム人の消費指向には「国内のものよりも海外のものの方が安心で品質も高い」という拝外主義がみられます。同価格帯での競争となった場合には、こういった意識も改革していく必要がありそうです。

また、国内生産された自動車だけでなく輸入車との競争に打ち勝つ必要もあります。東南アジアでの自動車産業先進国といえばタイですが、タイ工業連盟によると、昨年2018年の自動車国内販売台数は約104万台であり、一昨年と比べても19.2%もの伸びを記録しています。他方、ベトナムの自動車国内販売台数はというと、約27万台とその市場規模に大きな差があることがわかります(販売台数はベトナム自動車工業会より)。

昨年2018年からは、ASEAN域内の関税が撤廃され、自動車完成車に対する関税もそれまでの30%から0%になりました。これにより、タイをはじめとしたASEAN諸国から多くの自動車完成車の輸入が予想されました。しかし、ベトナム政府は「政令116号」を打ち出し、この流れに歯止めをかけます。これは、輸入車に対し、生産国での品質保証書の取得や細かな検査を求めるものであり、実際に2018年の自動車輸入実績は前年比▲16.1%の8.1万台程度に留まりました。いわゆる「非関税障壁」ともとれる政策ですが、タイ国内での現地部品サプライヤーの数やこれまでの生産技術、設備などから考えても、輸入車の流入を長期間食い止めることはできないでしょう。

ベトナム初の国産車販売成功に向けた課題は、消費者のニーズをとらえることはもちろんのこと、交通インフラの整備や国民の所得拡大の継続、急速に進む少子高齢化対策、部品サプライヤーをはじめとする裾野産業の拡大など多岐にわたりますが、ベトナム政府の関わりが大きく期待されます。また、その多くは現在ベトナムが抱える課題をそのまま表しているともいえます。国産車普及がベトナム経済発展の試金石になるのかもしれません。

(ホーチミン派遣 今井 雅也)

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第23回 上海/香港

2019/02/01 :海外現地レポート

香港  第四銀行コンサルティング推進部

香港の再工業化に向けた取り組み

香港は金融や貿易を中心とするサービス産業がGDPの90%以上を占めており、アジアの金融センターや物流ハブとしての地位を確固たるものとしています。しかし近年、香港に隣接する中国広東省深圳市などの周辺都市の台頭によって、その優位性を失いつつあります。そのため香港では、リスク分散のために経済の多様化を図る必要があるとの声が上がっていました。

そこで、香港政府は、サービス業に偏った産業構造を改革すべく、かつて産業の中心となっていた製造業を復活させる「再工業化」を提唱しています。今回は、香港の再工業化に向けた取り組みをご紹介したいと思います。

香港のGDPに占める製造業の比率は1980年に23.7%と、主要産業のなかで最も大きな比率を占めていました。しかし、1970年代後半から土地不足と人件費の高騰を受け、広東省の珠江デルタ地区などに生産拠点を移転する企業が出てきました。そのため、1980年代後半以降は徐々にその比率が低下し、1994年には9.2%と10%を割り込み、2017年には1.1%まで低下しました。そこで、近年、香港政府は製造業を復活させる再工業化を提唱してきました。

そうしたなか、2018年10月に行われた施政方針演説のなかで、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は再工業化に向けた取り組みを強化すると表明しました。香港政府が20億香港ドル(約290億円)を拠出して「再工業化支援スキーム」を立ち上げ、香港にスマート生産ラインを設けるメーカーに対し補助金を支給します。

その取り組みの一環として、香港政府系の産業支援機関である香港生産促進局(HKPC)は、香港の無線機メーカーに対して、生産ラインのスマート化を支援すると発表しました。HKPCは生産設備の設計に関するソリューションを提供し、人工知能(AI)を活用した生産・管理体制の完全自動化・デジタル化を実現します。

またHKPCは、ドイツの応用研究機関と提携し、企業による最新工業技術の採用を支援し、製造業のデジタル化を促す「INCイノベーション・センター」を設立したと発表しました。

さらに、財界においても再工業化に呼応する動きが出ています。香港初の電気自動車(EV)の旗艦工場建設に乗り出そうと、30以上の香港経済団体で構成する「香港創新科技・製造業連合総会(FITMI)」は、EV旗艦工場建設の提案書を香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政長官に提出したと発表しました。その提案書によると、FITMIは、香港の工業団地に工場と研究開発(R&D)拠点を建設し、香港初の自動車ブランドを打ち出す方針を示しています。

また、FITMIは「インダストリー4.0(※)」の技術を活用した工場とする考えを示しており、生産ラインにはドイツで成功したノウハウやスマート技術を導入する予定です。

本件に関して、FITMIは、「EV旗艦工場建設は、香港政府が提唱する再工業化政策に呼応するもので、企業の香港回帰を後押することができる」と説明し、EV製造を通じて香港のインダストリー4.0を実現させたいと抱負を述べました。

今後も香港において、再工業化に向けた取り組みが活発化し、その動向により香港の産業構造が変化することが想定されるため、香港市民の注目が集まっています。

(※) ドイツで2011年に提唱された「インターネットなどのITを駆使して製造業の革新を促すプロジェクト」

(香港派遣 相澤 寛行) 続きを表示…

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第22回 上海/バンコク

2019/01/04 :海外現地レポート

上海     第四銀行上海駐在員事務所

中国からの海外旅行動向

中国観光研究院と大手オンライン旅行会社が共同調査を行なった「2018年上半期出国観光ビッグデータ報告」が発表されました。中国観光研究院の発表では、今回調査結果の特徴として「2018年上半期中国からの海外旅行者数の前年同期比の伸び率」を都市別に比較すると、西安市(陝西省)、貴陽市(貴州省)、南昌(江西省)などの内陸部の都市が大きく伸びており、中国の海外旅行が新たな時代に入ったと指摘しています。今回は、最近の中国の海外旅行動向から考えてみたいと思います。

同調査によると「上半期の中国からの海外旅行者数伸び率上位10都市」をみると、沿岸部の省に属する都市は、10都市中2都市だけで、他の8都市は全て内陸部の省に属する都市か直轄市が占めました。内陸部の都市からの海外旅行者が増えている理由として、「内陸部都市での国際線就航便数の増加」「ビザ(査証)発行所の整備」などがあげられます。同調査では、こうした環境整備を受けて、中国のオンライン旅行会社は、内陸都市の需要開拓に力を入れていると指摘しています。

また、中国の内陸都市からの海外旅行者数が増加している理由として、政府主導による「成長著しい東部沿岸地域と成長が遅れた内陸部地域との格差を縮小するための内陸部振興政策」や沿岸部地域の人件費高騰を受け、国内外の企業が内陸部に進出したことによる「内陸部住民の所得水準、購買力向上」などが考えられます。

こうした中国内陸部地域で拡がる海外旅行ニーズに対して、日本国内の企業や地方自治体は、今後どの様に取り組んでいくべきなのでしょうか。中国から日本へのインバウンド事業を担当する自治体関係者などからは「『日本政府観光局(JNTO)』からの支援もあり、各地方自治体が『北京』『上海』『広州』の3大都市以外からの旅行客を獲得するための活動に力を入れています。特に、成都市(四川省)、西安市(陝西省)など、内陸都市のなかでも比較的所得水準の高い都市からの送客獲得を目指し、旅行博への出展、地元旅行代理店への情報提供などを行なっている」という声が聞かれました。

こうした声から、日本国内の各地方自治体が、内陸部地域からの旅行客獲得に向けた動きがすでに始まっていることがわかります。しかし、同時に以下の様な壁にぶつかっていることもわかりました。

・「内陸部都市からの旅行客獲得は、『北京』『上海』などの大都市と比べて、知名度の低い地方自治体でも有利に交渉を進められると考えていたが、想像以上に厳しい」

・「個人旅行ではなく、団体旅行客が中心となるため、ツアー商品の設計が一から必要となる。沿岸部地域と違い、日本への直行便が飛んでいないため、費用が割高となる」

・「予算が少ない地方自治体は、旅行ツアーに対する報奨金(補助金)の負担があまりできないため、ツアー費用が割高となり競争力が低くなってしまう」

これらの声からわかるのは、新たな市場として中国内陸部に注目が集まっているが、これまでターゲットとしてきた富裕層や東部沿岸地域の中間所得層とは違う層をターゲットとしていることから、まだまだ価格面のみでしか競争できていない状況ではないでしょうか。最近話題になっている、「中国の富裕層を取り込む」ための工夫も大切ですが、中国内陸地域からの旅行者を取り込むための費用対効果検証を同時に行なっていくべきなのかもしれません。

(柄澤 雄)

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第21回 ホーチミン/香港

2018/12/03 :海外現地レポート

香港  第四銀行コンサルティング推進部

香港-マカオ-珠海を結ぶ「港珠澳大橋」

香港とマカオ、中国本土の広東省珠海市を結ぶ海上橋「港珠澳大橋」が10月24日に開通しました。港珠澳大橋は、全長約55キロメートル(海底トンネル部分約7キロメートルを含む)で、世界最長規模の海上橋となります。

港珠澳大橋の開通によって、これまで陸路で約4時間かかっていた香港国際空港-珠海間が45分へと大幅に短縮され、3地域間のアクセス向上により物流や観光業、産業の発展を促進するとみられています。そこで今回は港珠澳大橋の概要、香港経済への影響についてレポートしたいと思います。

港珠澳大橋は2003年に建設案が立ち上がり、15年の歳月をかけて完成しました。総工費は1,000億元(約1兆6,000億円)超とされています。香港側のイミグレーション施設(出入国管理)は、香港国際空港近くに人工島を築き、そこに設置されました。珠海市およびマカオ側においても、同様の機能を担う人工島が造成されました。

港珠澳大橋は自動車専用道路となっています。自家用車での通行も可能ですが、通行許可を得る条件が厳しく、また車両数が制限されているため、一般市民が利用する主要な公共交通手段としてシャトルバスが運行されています。同バスは24時間運行で、香港とマカオの各イミグレーション施設を約40分で結び、運行本数は1日あたり200本超を計画しています。

港珠澳大橋の開通に先立ち、10月23日に珠海市で開通式典が開催されました。同式典は中国の習近平国家主席が主宰し、韓正副首相、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官、マカオ政府の崔世安(フェルナンド・チュイ)行政長官らが参加しました。

同式典において、中国の韓正副首相は「港珠澳大橋の開通は3地域間の人的交流や経済・貿易の往来を助け、『グレーターベイエリア構想(香港とマカオ、広東省の経済協力を強化する構想)』の発展に重大な意義を持つ」と発言しています。

同構想は習近平国家主席が計画・推進する国家戦略で、ハイテク企業が集まる深センなど広東省9市と、国際金融センターの香港、観光都市のマカオを結び、東京やニューヨークに匹敵する大経済圏構築を目指します。同エリアにおける2016年の総人口は約6,700万人、GDP合計は約1兆4,000米ドル(約154兆円)となっており、人口は中国総人口の5%に過ぎないにも関わらず、GDPは中国経済の12%を占める規模になっています。

香港政府の林鄭月娥行政長官も、「地域にまたがるインフラ施設の建設が、グレーターベイエリア構想の基礎を固めた。この橋の開通は香港の発展、特に輸出入貿易に新たな動力を与えることになる」と述べており、今回の港珠澳大橋開通に対して期待感を示しています。

今回開通した港珠澳大橋と、今年9月に開通した香港と中国本土を結ぶ「広深港高速鉄道」によって、香港を取り巻く人やモノの流れに大きな変化が生じるとともに、香港経済は様々な面でその恩恵を享受していくとみられています。

(香港派遣 相澤 寛行)

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