寄稿 海外レポート

新型ウイルス感染症への韓国の対応と経済の現状・新潟県への影響

2021/03/01 :寄稿 海外レポート

新潟県ソウル事務所長   陶山 将人 氏

1.はじめに

新型ウイルス感染症は、国際的な人の流れや日々の生活を激変させてしまいました。人々の間に密を避ける生活様式が浸透してきています。

2.感染状況と対策

昨年2月の大邱市等での宗教団体による集団感染、8月のデモでの集団感染など首都圏での感染拡大、11月中旬以降の首都圏を中心とした各所での感染拡大と、大きく三つの波がありましたが、年明け以降、感染者数は減少傾向にあります(図表1)。

韓国における対応の特徴としては、2015年のMERS流行により、国民の感染症に対する危機意識が高く、政府の強力な統制にも協力的なことが挙げられます。PCR検査の大規模な実施に加え、感染者の移動経路を公表し、感染拡大を抑えていますが、これには国民全員に付与された住民登録番号を基にクレジットカード使用履歴、携帯電話位置情報等の把握が必要であり、日本ではプライバシーの観点からなじみにくい方法です。

その後、政府は感染状況に応じた防疫措置を段階別に基準化しました。また、夏頃には飲食店への入店時には携帯番号等の情報提供が必要となり、テナントビルや大型商業施設等でも、入場時の検温が普及しました。

第二波の際には、飲食店の営業が21時までに制限され、カフェでは終日店内飲食が禁止されました。その後、マスク着用が義務付けられ、違反者には罰金が科されることとなり、街でマスクを着用しない人はほぼ見かけなくなりました。

その後、第三波到来の際には、飲食店の営業等が再度制限されたほか、12月にはソウル市内で臨時検査所が開設され、医師の診断や保健所への事前相談なく、匿名での検査が可能となり、開設直後は大勢の人々が並びました。

さらに、政府は年末には5人以上の私的な集まりを禁止するなど、感染拡大を食い止めようと広報し、国民もそれに協力してきました。

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新型ウイルス感染症禍とタイ経済

2021/03/01 :寄稿 海外レポート

株式会社日本総合研究所 調査部 副主任研究員  熊谷 章太郎 氏

1.緩慢な景気回復

新型ウイルスの感染拡大抑制に向けたロックダウンを主因に、タイ景気は2020年前半にかけて急速に悪化した。その後、市中感染の沈静化を受けた経済活動の再開により景気は持ち直しに転じたが、回復ペースは緩慢なものにとどまっている。2020年7~9月期の実質GDPは前年比▲6.4%と、アジア通貨危機以来の大幅なマイナス成長を記録した同年4~6月期(同▲12.1%)からマイナス幅が縮小したものの、3四半期連続のマイナス成長となった(図表1)。タイの景気回復ペースが緩慢な理由としては、以下の4つの要因を指摘できる。

第1に、新型ウイルス感染症禍前にGDPの約1割を占めていた観光サービス輸出の消失である。政府は2020年3月下旬に外国人観光客の受け入れを全面的に禁止した後、同年10月より段階的に観光客の受け入れを再開しているが、入国後の2週間の隔離措置を含む様々な規制が残存していることから外国人旅行客数は殆ど回復していない。

第2に、国内感染の再拡大の予防に向けた活動制限の継続である。2020年春先に拡大した市中感染が沈静化すると百貨店や娯楽施設の営業は再開され、夜間の外出規制や県をまたぐ移動制限も解除された。しかし、大規模な集会禁止や飲食店などのソーシャル・ディスタンシングなど、感染再拡大の予防に向けた活動規制は継続しており、GDPの約5割を占める消費の回復ペースは弱い。こうしたなか、2020年12月以降、首都バンコクに隣接するサムットサコン県の大規模クラスターの発生をきっかけに各地で感染拡大が加速し始めたことを受けて政府は活動制限を再び厳格化させており、それに伴う景気下押し圧力が強まりつつある。2021年初、政府はGDPの約5割を占めるバンコク首都圏を含む28都県を感染リスクが最も高い「レッドゾーン」に指定し、感染リスクの高い娯楽施設や学校の閉鎖などを決定するとともに、商業施設に対して営業時間の短縮を要請した。「レッドゾーン」の中でも感染拡大リスクが高い県では、県をまたぐ移動に対する制限や移動情報を追跡できるスマートフォンのアプリの活用が義務付けられており、今後の感染動向次第で規制が一段と厳格化される可能性がある。

第3に、財輸出の低迷である。財輸出はGDPの約6割を占めるなど、消費とともにタイ景気を左右する需要項目であるが、新型ウイルス感染症禍を受けた各国の自動車販売の減少や資源価格の下落を背景に輸送機械や石油化学製品を中心に前年割れが続いている。国・地域別にみると、早い段階で新型ウイルス感染症の封じ込めに成功した中国向け、および中国への輸入依存度引き下げを目指す米国向けは堅調に推移する一方、輸出の2割強を占めるASEAN向けや日本向けの回復が遅れている。

第4に、控え目な財政・金融政策のスタンスである。財政政策についてみると、タイの財政状況はアジアの中で相対的に健全であるものの、急速な少子高齢化に伴う中長期の財政悪化懸念への警戒を理由に、政府は中長期的な財政の健全性に配慮した予算編成を続けている。そのため、2020年前半にGDP比の15%に相当する景気対策が策定された際も、タイ中央銀行による社債購入、低金利融資、中小企業の債務支払い猶予など、直接の財政支出を伴わない施策が事業規模の約5割を占めた。社会保険未加入の自営業者や農家への現金支援などの対応策についても大部分の財源は予算の組み換えにより確保され、別の分野の歳出が削減された。

他方、金融政策は、政策金利を0.5%と2000年にインフレターゲットを導入して以降、最も低い水準に引き下げるなど、タイ中央銀行は従来の家計債務抑制を強く意識する政策スタンスから景気浮揚を優先するスタンスに転換している。ただし、資産バブルの発生や今後の金利上昇リスクを軽視した家計の借入増加などへの警戒も怠れないことから、2020年後半以降はインフレ率が物価目標(前年比+1~3%)を下回り、バーツ高基調が続くなかでも政策金利の据え置きを続けている。

先行きを展望すると、短期の景気は新型ウイルス感染症の拡大とワクチンの普及状況に左右されるため、景気上振れ・下振れ両方のリスクが大きい状況が続く。こうしたなか、メインシナリオとしては、各国でのワクチン普及に伴い新型ウイルス感染症禍が終息に向かい、それを受けて各種活動規制が段階的に解除されるなかで景気回復が続くという展開が見込まれる。もっとも、高水準の家計債務が消費の重石となり続けることに加え、後述する政治不安化リスクもあるため、新型ウイルス感染症禍後の景気回復ペースは緩やかなものにとどまる公算が大きい。

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新型ウイルスによるシンガポール経済、産業への影響と今後

2021/03/01 :寄稿 海外レポート

ジェトロ・シンガポール事務所 次長  藤江 秀樹 氏

1.感染者数推移と経済封鎖・移動制限

シンガポールにおける新型ウイルスの影響について、これまでの経緯を振り返ると最初の感染者が確認されたのは2020年1月23日だった(図表1)。約2カ月後の3月30日に低熟練の外国人労働者のドミトリーにて感染クラスターが確認されて以降、シンガポールにおける感染者数は一気に増加した。4月1日時点で1,000人だった新型ウイルス感染の累計者数は6月1日には3万5,000人超まで急増し、このうち約94%がドミトリーで集団生活を送る外国人労働者だった。

急激な感染者数増加を受け、シンガポール政府は、4月7日以降、部分的ロックダウン「サーキットブレーカー」の措置を取り、これにより大半の職場が閉鎖することとなった。生活に不可欠な機能を持つ必須サービス(スーパー、薬局、飲食店など)や製造業は当該規制の対象から除かれたが、このうち、飲食店では店内での飲食が認められず、持ち帰りやデリバリーのみ可能だった。また、当初5月4日まで予定されていた同措置は、感染者の増加が収まらなかったことから、6月1日まで延長され、最終的に2カ月弱の間、継続された。

「サーキットブレーカー」は6月2日以降、3段階で緩和された。まず、フェーズ1では理容、自動車修理、専門サービスなどが事業再開するほか、幼稚園、公立小中学校が段階的に開校した。フェーズ2(6月19日~)は、ほぼすべての店舗で営業再開が認められるほか、映画館・博物館の再開、結婚式許可など社会活動の制限が徐々に解除された。10月1日からは、最大250人までの国際会議・展示会の開催が試験的に解禁された。

そして、本稿執筆時点(2021年1月12日)は、フェーズ3(12月28日~)の段階であり、私的な集会の人数の上限がそれまでの5人から8人へと緩和されている。2021年1月12日時点での感染者数累計は、58,946人。ここ数カ月の新規感染者数は毎日20~40人で推移し、そのうち海外からの渡航者がほとんどで、市中感染は0〜2人程度で安定している。

このようにシンガポールでは新型ウイルス感染者数が抑制されている状況だが、企業においては在宅勤務を基本とすることが義務付けられている。雇用主は、在宅勤務可能な従業員について、半数を超える人数を職場にて勤務させることはできない。シンガポール日本商工会議所(JCCI)とジェトロが共同で実施したアンケート調査(2020年11月2〜9日、231社回答)によれば、進出日系企業における従業員の出勤率は、「0~20%」(18%)、「20~40%」(30%)、「40~60%」(32%)だった。また9人以上の集まりは原則禁止され、大半の行事・イベントは引き続きオンラインでの実施が求められている。

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新型コロナウイルス感染症禍でのベトナム輸出における、それぞれの新たな挑戦

2021/01/18 :寄稿 海外レポート

ジェトロ・ホーチミン事務所   Consultant for trade and investment   大 桃  伊 代 菜  氏

ベトナム国内の新型コロナウイルス感染症の状況

ベトナムでは4月中旬から7月下旬までの99日間、そして9月初旬から11月末までの87日間、海外からの入国者を除くベトナム国内での新規感染者はゼロとなっている。そのため、いつ自分が感染するか分からないという逼迫した状況が継続しているわけではなく、その分、「新しい生活様式」は定着していない。例えば、飛沫感染防止のためのアクリル板が設置された場所は少なく、レジ待ちの間隔開けも5月以降はほとんど見なくなり、在宅勤務も普及していない。このように新型コロナウイルス感染症による日常生活への影響が比較的少なく見えるベトナムでも、経済面では非常に大きな影響を受けており、他国同様に失業、労働時間短縮による収入減に苦しむ人が多い。ベトナム統計総局が発表した9月までのデータによると、国内で新型コロナウイルス感染症により収入が減少した人は2,200万人(全人口の約23%)にものぼった。また、ベトナムでは観光業がGDPの約9%を占めているため、3月下旬からの入国制限の影響は特に大きく、ホーチミン市1区でも特に観光客が多かったエリアでは、空き物件が目立つ状態が4月以降続いている。

このように感染への不安と同時に、収入減に対する心理的不安が高まり、新型コロナウイルス感染症発生以前に比べて人々の外食機会は減っているようである。主に中間層から富裕層、そして外国人観光客をターゲットとする日本食料理店にヒアリングしたところ、売り上げは前年比70%程度で推移しているようである。ベトナムの食品輸入企業の主な卸先はホテルや飲食店などのHorecaの比率が大きい。そのため、新型コロナウイルス感染症発生以降は、積極的に新しい商品を輸入して取り扱い品目を増やすよりも、市場のニーズが高いものに集中して買い付けたいという声が多く聞かれた。特に、ベトナムの消費者は元々、サプリメント等の健康食品や、赤ちゃんや子供も食べられる安全な食品への関心が非常に高かったが、新型コロナウイルス感染症発生以降、ベトナム人の健康志向が更に高まっているといわれている。この傾向から、ジェトロ・ホーチミン事務所が開催したオンライン商談会(6月に1回、10月に2回、11月に3回開催)でも、参加したベトナムバイヤーは健康に関連する商品に関心を示していた。

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