寄稿

世界中で注目を集めるスマートシティ

2021/11/01 :寄稿

みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 調査部 経済調査チーム 揚原 由子 氏

~データ保護、セキュリティ、事業のマネタイズが課題~

スマートシティが目指すものとは

IoTやビッグデータ等の先端技術を活用して、効率的に都市のインフラを運営し、様々な社会課題を解決する「スマートシティ」の計画が世界中で進行している。現在、スマートシティが世界中で推進されているのはなぜか。その背景には、世界中で急速に進行する都市化によってもたらされた、様々な社会課題への危機感の高まりがある。国際連合は、1950年代に30%未満だった都市部に居住する人口の割合が2018年時点で約55%にまで上昇しており、2050年までに68%に上昇するという予測を公表している。人口が都市部に集中することで、大気汚染、水・エネルギーの供給や汚水・廃棄物処理等の問題、交通渋滞の深刻化、都市と地方の格差拡大等が引き起こされる。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)を契機に、感染対策の一環として社会的距離の確保が必要とされる中で、満員の通勤電車や都心のオフィス等、都市の過密が感染症拡大を助長させやすい弱点を有することに気付かされた。

では、これらの社会課題をスマートシティはどのように解決しようとしているのか。スマートシティは、大容量のデータ通信を可能にする通信網が整備された環境で、街中に張り巡らされたセンサー、カメラ等のデバイスから収集・蓄積したデータを、リアルタイムでAI(人工知能)のアルゴリズムで分析・予測するのが基本的な仕組みである。次世代通信網5G、IoT、AI、無人航空機(ドローン)といった先端技術を活用し、ビッグデータの解析・予測をもとに、エネルギー、防犯・防災、交通・モビリティ、物流、医療等の分野での課題解決が期待できる(図表1)。とりわけ期待が高いのは、自動運転技術であろう。限定条件なしの完全自動運転化(レベル5)が実現すれば、都市部における交通事故の減少や交通渋滞の緩和、過疎地における交通弱者の移動手段の確保、物流サービスにおけるドライバー不足の解消等、交通や物流分野における課題を解決できる可能性が高まる。

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金利・為替・株価経済活動正常化に先行する国の政策変更の影響に注視

2021/10/01 :寄稿

第一生命経済研究所 取締役・首席エコノミスト     嶌峰 義清(しまみね・よしきよ)氏

1. 2021年度上期の市場振り返り

2021年度上期のマーケットは、株式市場において国内外でパフォーマンスに大きな差が生じた。たとえば、NYダウやユーロストックス50株価指数は2021年3月末と比べると7%強上昇しているのに対し、日経平均株価は5%程度下落している(数字はいずれも8月末時点)。このような国内外の株式市場のパフォーマンスの差は、国内外の新型コロナウイルスへの対応の差に起因していると考えられる。

欧米先進国の多くは、新型コロナウイルスのワクチン接種率の向上とともに、感染による重症化のリスクが低下している。感染力が高いと言われるデルタ株に置き換わっていることもあり、感染者数自体はこの春以降再び増加傾向を辿っている国は多いが、それに比して重症者や死者数の増加は限定的なものにとどまり、重症化率や致死率は低下している。これにより、欧米では様々な行動規制を撤廃し、経済活動に制約がなくなっている国が多い。こうした国では、飲食や旅行など、それまで規制などによって我慢を強いられてきた分野への消費が急拡大し、景気回復が本格化している。

これに対し、日本ではワクチン接種率は徐々に上昇しているものの、欧米には後れを取っている。すでにワクチン接種が進んでいた高齢者の感染は抑制傾向にあるものの、デルタ株の蔓延によって感染者数がそれまでのピークを越えていくと重症者数も増加傾向を強め、病床が逼迫したことにより、感染しながらも自宅療養を迫られる感染者が爆発的に増加した。その結果、人々の行動や企業活動に一定の制限を要請するまん延防止等重点措置や緊急事態宣言下に置かれる期間、地域が長期化している。このため、サービス支出を中心に消費の低迷は続き、景気の本格回復も遠のいている。

このような経済パフォーマンスの差が、各国の株式市場のパフォーマンスの差となって表面化したのが、この上期の市場の最大の特徴と言えよう。一方で、債券市場では米国のインフレの継続的な加速リスクや、FRBの早期利上げ懸念などが後退し、金利は低位安定傾向が続いた。金利が横ばい圏での推移となったこともあり、為替市場でも大きな変動は見られず、ドル円相場は1ドル=110円前後での推移が続いた。

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環境問題の表裏

2021/09/01 :寄稿

株式会社 ニッセイ基礎研究所   常務理事  チーフエコノミスト       矢嶋 康次 氏

はじめに

環境対応はチャンスにもピンチにもなり得る。世界各国がカーボンニュートラル宣言し(図表1)、脱炭素実現へ号砲が鳴らされた。環境に配慮しない国や企業はその存在意義を疑われるほど、世界の空気が一気に変わった。ESGという制度も導入され、何か環境配慮という「絶対神」が世界に出現したようである。日本や地方にはもともと社会や環境との調和を重んじる文化が存在している。世界で議論されている持続可能性については多くの日本人の価値観として備わっている。その点では、環境配慮型へ世界が大きく動き出したことは日本や地方にとってメリットが数多くある。しかし、世界的な制度が変わるとき、そこには激しい競争が起こる。どこの国、企業も自身に有利なようにルール形成や制度設計を行う。日本のメリットを活かすためにもオールジャパンで大きな戦略の絵図が必要な局面になってきた。

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日本経済の見通し

2021/08/02 :寄稿

野村證券株式会社 金融経済研究所 経済調査部 エコノミスト 髙島 雄貴 氏 

力強い消費の伸びにより、21年秋・冬の景気は大幅に改善しよう

2020年の世界経済成長率は記録的な落ち込み

昨年3月11日にWHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が新型コロナウイルス感染症の流行はパンデミック(世界的大流行)と言えると宣言してから、およそ1年半の月日が経過した。この間、同感染症の流行に伴い、世界の様々な国・地域が経済活動の自粛を余儀なくされた。IMF(国際通貨基金)によれば、2020年の世界GDP(国内総生産)成長率は前年比▲3.3%と、リーマン・ショック直後である2009年(前年比▲0.1%)以来の、しかもそれを大幅に超える下落率となった(図表1)。先進国だけでなく、リーマン・ショック時にはプラスを維持した新興国のGDP成長率も前年比マイナスとなったことで、全体の下落率が拡大した。

WHOによれば、世界の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は21年4月下旬に記録した1日におよそ90万人をピークとして、それ以降は概ね減少傾向にあったものの、6月に入り下げ止まっている。未だ1日におよそ40万人が感染している厳しい状況である。

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経済レポート  コロナ禍でも企業倒産は減少

2021/06/01 :寄稿

みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社   調査部 経済調査チーム エコノミスト 川畑 大地 氏

~今後は資金繰り支援の「出口戦略」が重要に~

大幅に減少した2020年の倒産件数

2019年末、中国・武漢で発見された新型コロナウイルスは、世界的な感染拡大(以下、「コロナ禍」)を引き起こし、世界経済を急速に悪化させた。感染拡大防止のため、各国が相次いでロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったことで、かつてない規模で経済活動が停滞した。日本も例外ではなく、2020年の実質GDP成長率は▲4.8%と、リーマン・ショック直後である2009年(▲5.7%)以来の大幅なマイナス成長となった。ヒトの移動や接触が制限される中で、外食・旅行・娯楽などの対人接触型サービス消費が落ち込んだことが主因だが、最初の緊急事態宣言が発令された昨春は、製造業など他の業種も甚大な影響を受けた。業績の急激な悪化を受けて、中小企業を中心に倒産件数も急増するかに思われた。しかし、2020年の倒産件数(東京商工リサーチ)は7,773件と2019年の8,383件からむしろ減少(前年比▲7.3%)した。業種別にみても、サービス業(宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業等)の倒産件数はリーマン・ショック時に近い水準まで増加したが、その他の業種は全般的に当時を大きく下回る件数にとどまった。

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マーケットレポート

2021/05/06 :寄稿

第一生命経済研究所      常務取締役・首席エコノミスト      嶌峰 義清 氏

2021年度上期のマーケット 金利・為替・株価 経済正常化とともに訪れる政策正常化が市場を 揺さぶる

2020年度下期の市場振り返り

2020年度下期のマーケットは、新型コロナウイルスに対するワクチンの開発成功と接種開始を受けて、世界的に株高傾向が一段と強まった。昨年11月に行われた米大統領選挙で民主党のバイデン候補が勝利し、その後議会上下院での民主党の勝利が決まったことで、超大型の追加景気対策が現実味を帯びたことも、米国経済の加速期待に繋がり、市場の楽観的な見方を後押しした。NYダウやS&P500など米国の主要株価指数は過去最高値を更新し、上昇傾向が続いた。日経平均株価は1990年8月以来となる3万円台を回復し、続いてTOPIXが1991年5月以来となる2000ポイント台を回復したのも、日本国内に独自の好材料があったというよりは、世界的な新型コロナウイルス感染症収束、世界経済の本格回復期待が演出した側面が大きいと判断される。

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