感頭言

誇れる地域にするために

2020/06/01 :感頭言

株式会社 日本政策投資銀行 新潟支店長  菊池 洋紀

「観光立国」と言われて久しい。経済波及効果の大きい観光は、アジアを中心とする成長著しい海外から渡航者を呼び込み、地域活性化や雇用増大などに貢献することが期待されている。政府も、2020年訪日外客数(インバウンド)4千万人を目標に掲げており、各地域はその魅力を国内外に発信し続けている。その結果、いわゆるゴールデンルート(首都圏〜関西圏)に集中してきたインバウンドの行動形態も、足元は国内の各地域にも向き始めており、新潟県においても増加傾向が続いている。【もっとも、現在、新型ウイルス肺炎感染拡大に伴い観光業界は特に厳しい状況にあるが、早い時期に収束となることを願わずにはいられない。】

私自身、これまで旅行、出張、転勤で様々な地域へ赴くたびに、決してメディアだけでは感じることができない地域の魅力に接し、次は自身がその魅力を周囲に発信していることに気づかされる。数年前、仕事で北海道の知床半島に赴いた。言わずと知れた北海道東部の最果て、世界自然遺産「知床」である。若い頃に北海道勤務経験もあり、もちろん知床に行ったこともあったが、その時は極寒の2月。率直にいえば「寒いし、遠いし、勘弁して。」と少々思ったはずである。しかし、そこで待っていたのは沖合から港の中までびっしりと埋め尽くされた見渡す限りの「流氷」であった。グリーンシーズンに限定されていた私の知床に対する認識は、ネイチャーガイドが語る流氷のストーリー、極寒の中でのアクティビティなども相俟って、大きく覆されることとなった。知床観光の本来のピークは夏であるが、それと真逆となる極寒4 4の冬の魅力を極熱4 4に語るネイチャーガイドの姿を目の当たりにして敬服さえ覚えた。

地域や観光の活性化を議論する際、空港、駅、観光施設といったインフラに話題が集中することがままある。もちろん重要なテーマであることに異論はないが、財政逼迫、人口減少、少子・高齢化、人材不足など地域が抱える課題は枚挙に暇がなく、全てを理想の姿に持っていくには限界がある。是非、今ある素材をどう磨き上げるべきか、今ある施設をどう利用し、今ある交通インフラをどう維持すべきか、今ある人材をどう育成・活用するか、といったところにも今一度目を向けてはどうか。そうした取り組みこそが、地域や観光の活性化の施策を、単発での効果に終わらせず、持続可能なものにしていけるのではと考えている。

新潟に来て間もなく1年。「誇りと愛着のもてる新潟」を県外・海外の方にも自らの言葉で発信することで、誇れる地域の一員として少しでも貢献できるよう日々努力するつもりである。

(きくち ひろき)

このページのトップへ

新型コロナウイルス

2020/05/01 :感頭言

新潟大学長     牛木 辰男

令和2年2月に新潟大学長に就任しました。私の専門は基礎医学、特に顕微鏡を用いた細胞の構造と機能の解析です。その立場から、現在、世界を震撼させている新型コロナウイルスについて、少し触れさせていただこうと思います。

ご存じかもしれませんが、「ウイルス」は、遺伝情報をもった核酸(DNAやRNA)が、たんぱく質と脂質に包まれてできた、ごく微小な粒子です。その大きさは100nm(1mmの1万分の1)ほどで、普通の光学顕微鏡では見えません。電子顕微鏡により初めて証明されました。

ウイルスの特徴は、自己複製ができず、細胞に寄宿(感染)して、その中で増殖することです。その際に私たちの体の中の細胞が破壊されて起こる病気が「ウイルス感染症」です。

このようにウイルスはわれわれの細胞を借りないといけないので、本来は寄宿する細胞と仲良くしたほうが都合いいわけです。寄宿した細胞が死ねば、自身も増殖できなくなるからです。実際に、細胞に寄宿したまま居ついて「眠った」ようにしているタイプのウイルスもあります。あるいは、細胞にダメージを与えても、人体に致死的にならず軽い症状で終わるものもたくさんあります。いわゆる冬風邪の三分の一ほどを占める普通のコロナウイルスもそのたぐいでした。

しかし、昨年末、中国の武漢で発生した新型コロナウイルスは、従来のコロナウイルスの遺伝子変異により、われわれ人類に脅威をあたえるものになりました。感染拡大の要因の一つは、感染者に接触した3~14日後に発症し、しかも症状がはっきりしない早期から感染がおこることで、その結果、発症前や軽い症状のうちに、知らぬ間に他人にうつしてしまうことです。その点で、みなさんが 自身が感染している可能性を考えながら行動する、すなわち、マスクの着用や、感染の機会を減らすための自宅待機が求められています。

日本もいよいよ厳しい局面を迎えてきています。新潟大学は13,000人ほどの学生を抱えており、その安全が目下の最優先の課題です。その点で、大学の新学期も対面での授業をやめ、オンライン等の遠隔授業に切り替える作業を急ピッチで進めています。正念場です。

(うしき たつお)

※ホクギン経済研究所「ホクギンマンスリー」での「窓」と共同掲載させていただきました。

このページのトップへ

情熱にまさる能力なし

2020/04/01 :感頭言

十日町商工会議所 会頭     西方 勝一郎

昨年11月に十日町商工会議所会頭に就任して約半年が経ちました。地域経済発展のため、地域総合経済団体のリーダーとして会議所活動に鋭意取り組んでまいります。

我が国経済は、マスコミ等で報道されているとおり、米中貿易摩擦や消費税引き上げ、新型肺炎等の要因により、GDPが大きく落ち込むと予測され、先行きの景況が懸念されます。

一方、我が地域においても人口減少や高齢化等の日本社会の構造変化を背景に地域経済の疲弊が顕在化し、多くの業種で景況感が悪化しております。

こうした厳しい環境下にあるものの、「情熱にまさる能力なし」と言われるとおり、情熱はあらゆる創造の源泉です。これからも、この情熱を会議所活動の源泉として、地域経済の持続的発展に積極的に取り組んでまいります。

特に、商工会議所活動の大きな柱である要望活動においては、六日町から十日町を経て北陸自動車道に接続する道路建設の要望活動を開始以来、29年の歳月を経て一昨年11月に念願の上越魚沼地域振興快速道路「八箇峠道路」が開通しました。さらに、昨年は「十日町道路」の直轄権限代行による新規事業化が決定し、地域経済発展に向け明るい展望が開けつつあります。「高速道路体系の整備無くして地域経済の発展は無い」との強い信念の下、一日も早い全線早期供用開始に向け、行政や周辺商工会と連携を深め、地域一丸となった積極的な活動を推進いたします。

さらに、経営や組織のリーダーは、大所高所から広い視野で物事を見る「鳥の目」。現場の目で地べたを這うように細部にわたって分析し、結論を導き出す「虫の目」。そして時代の流れを見極めながら未来を展望し、次の一手を決断する「魚の目」が必要不可欠です。この「3つの目」を会員企業や役職員と共有し、「令和」の時代にふさわしい会議所活動や地域経済の振興に全力で取り組みますので、より一層のご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

(にしかた かついちろう)

※ホクギン経済研究所「ホクギンマンスリー」での「窓」と共同掲載させていただきました。

このページのトップへ

新しい時代の新しい加茂市へ

2020/03/02 :感頭言

加茂市長  藤田 明美

昨年5月に元号が「令和」に変わり、新しい時代の幕開けとなりました。この新しい時代に、市政を担うことになりましたことを光栄に感じつつも、その職責の重さを痛感し、身の引き締まる思いでおります。

さて、加茂市長に就任いたしまして、約10カ月が経過いたしました。現在、加茂市では人口減少などに起因する税収の減少、地方交付税の減少、また公共施設の老朽化に伴う経費の増加などにより厳しい財政状況が続いているため、急ピッチで行財政健全化を進めているところであります。解決するには時間がかかるとしても、私はこれらの問題に正面から向き合い解決する道筋をつけることで加茂市の未来に責任を持つ覚悟です。

3つのキーワードを基本姿勢に政策を進めてまいります。

1.市民参加型
まちづくりや市の課題解決の場面では、私や市の職員でできることは限られています。市民の皆様の意見を聴く機会を多く持ち市政に反映していきます。

2.人づくり
現代は、正解がない課題に対して自らの考えを持ちそれを相手に伝え、同時に相手の考えを聴き共に解決していく力が求められています。市政を支えるのは「人」です。誰もが持てる力を十分に発揮できるよう、頑張りたい人を後押しし、苦しい状況にいる人には寄り添い支えます。

3.連携
全ての人、もの、ことはお互いに関わりを持っています。地方自治体も同様です。私は、近隣市町村、県、国としっかり連携し、加茂市と他の地域の良さを認め合い、積極的に加茂市から情報発信していきます。

全ての基本姿勢、施策のもとにある想いは、「未来への責任」です。今後子供から高齢者まで安心して暮らせるまち、教育の質の充実で子育て世帯に選んでもらえるまち、市民全員が活気あふれるまちを目指し、市民の皆様との対話を重ねる現場主義、行動力を大切に、知恵を出し合い、汗をかきながらまちづくりを進めてまいります。

加茂市は、古くから「北越の小京都」といわれているように、市街地には加茂川が流れ、由緒ある神社や寺院も多く、自然や歴史的な景観に恵まれています。

このような加茂市の宝を活かし、新しい加茂市をつくってまいります。

(ふじた あけみ)

※ホクギン経済研究所「ホクギンマンスリー」での「窓」と共同掲載させていただきました。

このページのトップへ

新潟県人(越後人)とは何か…

2020/02/03 :感頭言

新潟工科大学 学長      大川 秀雄

現在の自宅は新潟市にあるが、長岡市の殿町で生まれ育った。子供の頃はがよく降り積もった。今では死語になったが「白魔」と言う言葉が語られた遠い昔が懐かしい。雪をよく知らない人たちは「しんしんと降る」ことが多量に降ることの形容と思っているらしいが、嘘である。「かさかさと音を立てて降る」が正しい。二回経験したがこれも懐かしい思い出である。

江戸時代の終わりから明治時代に掛けて、越後の国の人口は全国でトップであった。しかし、角兵衛獅子、今で言うところの子供虐待?で象徴されるように、そこまでして銭を稼がなければならないほど貧乏な国でもあった。ずっと謎であったが、昔の新潟市郷土資料館館長の池氏のご講演で納得した。「どんなに記録をあさっても『間引いた記録が出てこない』のが越後の国」だそうだ。「そうか、現金がなくて貧しくとも、命を繋ぐ食べ物はあったのか」と理解した。「こちの風」が吹いて冷害になっても、衛星画像では越後の国だけは雲がなく、それと分かる訳である。

今はどうか。人も物も首都圏への供給県となっている。昔よく言われた。「風呂屋と豆腐屋の多くは越後人」。口数が少なく、まじめでよく働く代名詞であった。池館長の言葉でこれに当たるもう一つもあるが、差し障りがありそうなのでここでは書かない。人口減少で、全国でそして多くの分野や職業で苦しんでいる。個々に挙げても仕方がない。新潟県はいかにすべきか。

できっこないが独立はいかがか。人間、食べ物と水さえあれば取り敢えず生きられる。全国47都道府県、それができるところはほとんどない。「何を言い出すか」と随分前に県会議員氏に叱られた。言いたいことは「心の持ちよう、気概のこと」である。新潟県は「農業の看板」は絶対に外せない。しかし、生きては行けるがそれだけでは豊かになれない。鍵は工業であると思う。何をどのように作るか、それが投げかけられている問題である。

(おおかわ ひでお)

このページのトップへ

2020 パラリンピックに多様性を考える

2020/01/06 :感頭言

一般財団法人 新潟経済社会リサーチセンター  理事長 柴山 圭一
新年明けましておめでとうございます。

いよいよ今年は、「東京2020オリンピック・パラリンピック」が開催されます。オリ・パラに先立って、昨秋に開催された「ラグビーワールドカップ2019日本大会」では、地元・稲垣選手の活躍などから日本代表が史上初のベスト8進出を果たしたことで、空前のラグビーブームが沸き起こりました。人気スポーツとは言い難かったラグビーが、ここまで多くの人たちの心を掴んだのは、代表チームの躍進もさることながら、その迫力やスピード感、試合終了後のノーサイドの精神といったラグビーの持つ魅力が、多くの人たちの感動と共感を呼んだ結果なのだと思います。そして、何よりも今回の大会で印象に残ったのは、メンバー31人のうちの実に15人が外国出身者という、チームの多様性だったのではないでしょうか。様々なルーツを持った選手たちが、ONE TEAMの名のもとに結束を高め、勝利というひとつの目標に突き進む姿は、観光や就労などの様々な場面で外国の方々と共存・共栄を図っていかなければならない我が国が、今後目指していくべき姿を映し出しているように感じられました。

さて、ラグビーワールドカップに続いて開催されるオリ・パラは、世界最大規模のスポーツの祭典です。オリンピックはもちろんのこと、今回は自国での開催とあって、パラリンピックも、これまで以上に関心を集めることでしょう。新潟県のご出身で、NPO法人STAND代表理事としてパラスポーツサイト「挑戦者たち」の編集長を務める伊藤数子さんは、自身のコラムに「障がいというのは、人にではなくて社会にある。歩けない人が困るのは、歩けないつくりになっている社会に問題がある」と指摘されています。パラリンピックは、障がい者を含めた多様な方々の活躍を阻害しているハードルを見直す、またとない機会です。パラリンピックが、単なるスポーツ・エンターテイメントとしてだけでなく、ラグビーワールドカップで芽生えた多様性を、より発展させるきっかけになることが期待されるところです。

また、将来的な人口減少が避けられない本県にとっても、多様性は重要なキーワードです。性別や年代、人種、ハンディキャップの有無などの垣根を超えて、あらゆる人たちがお互いに多様性を認め合い、共生していくことこそが、持続可能な社会づくりにつながるのだと思います。本誌今月号の「探訪」では、県内企業が取り組む障がい者支援活動の事例を紹介していますが、多様な人材が活躍できる社会づくりを目指す動きは、本県でも着実に広がりをみせています。2020年という節目の年を契機として、世の中に立ちはだかっている様々なハードルが解消に向かい、多様性が開化することを願っています。

(しばやま けいいち)

このページのトップへ

もうひとつのキャッシュレス化 ─国庫金の電子収納─

2019/12/02 :感頭言

日本銀行 新潟支店長    佐久田 健司

「キャッシュレス化」という言葉に触れる機会が増えたと感じる方は、きっと少なくないでしょう。確かに、新潟県内でも、「○○ペイ」「××pay」といったロゴを見かけることは、珍しくなくなっています。

「キャッシュレス化」は、別のかたちでも進んでいます。「国庫金の電子収納」がそれです。日本銀行は、政府や金融機関のご協力を得ながら、国の税金など国庫金の電子収納の仕組みを整備し、その利用の拡大に取り組んでいます。例えば、国庫金の納付書に「ペイジー」のマークがあれば、金融機関の窓口に行かなくとも、インターネットバンキングなどで簡単に納付ができます。また、国税の種類によっては、あらかじめ口座振替の手続きをとっておけば、ウェブサイトでの申告と同時に納付ができるようにもなっています。

「そうは言うけど、今まで通り、書類と現金を持って窓口に行けばいいや」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、そうでしょうか。「ペイジー」をきっかけに、インターネットバンキングでより幅広いサービスを利用していけば、メリットは広がります。そこからさらに、企業の経理・会計事務のIT化を図ることもできます。そうなれば、事務効率化や人手不足対策にもつながっていくはずです。少なくとも、できることはやってみる、その積み重ねが大切、とは言えるでしょう。

東京などと比べれば、新潟では金融機関の店舗が近くにないことも少なくありません。そして、夏の暑さや冬の雪、人口の高齢化は、いずれも、人を「出掛けづらくさせる」要因です。とすれば、電子化・IT化のメリットは、新潟のような地域でこそ大きいはずです。このことは、国庫金だけではなく、より広い範囲のことがらにもあてはまるように、私には思われます。

10月には、すべての地方公共団体への電子納税を可能とする「地方税共通納税システム」がスタートしました。さらに便利となる「もうひとつのキャッシュレス化」、ひとりでも多くの方にご利用頂けたら幸いです。

(さくた けんじ)

※ホクギン経済研究所「ホクギンマンスリー」での「窓」と共同掲載させていただきました。

このページのトップへ

新潟県の魅力発信に向けて

2019/11/01 :感頭言

NHK新潟放送局 局長          太田 浩一朗

6月に着任してから、「新潟県の魅力発信」について考えています。

「新潟の人は奥ゆかしくてアピールが不得手」「アピールしたいことが多くて一点に絞ることができない」などという声をよく聞きます。確かに「食」に関してだけでも、米や日本酒は全国的に知られていますが、枝豆やナスなど、まだあまり知られていない特産品が数多くあります。

新潟県は今年、「新潟の魅力を考える懇談会」を新設し、新潟の魅力とは何か、いかに県外に発信するかなどについて、有識者による意見交換を始めています。9月からは新潟県で初めての国民文化祭が開催中で、「食」だけではなく、各地に伝わる伝統芸能や工芸品にもスポットが当たっています。新潟県の魅力を全国に広めようという機運が高まっています。

NHK新潟放送局にとっても、新潟県の魅力発信は真っ先に取り組むべき課題です。NHKは今、「地域改革」を経営計画の柱に掲げ、地域の魅力や課題を広く発信し、多様な地域社会に貢献することをめざしています。新潟放送局でも、去年から金曜夜7時30分からの県域放送「きらっと新潟」の本数を大幅に増やすなど、地域放送の充実強化に取り組んできました。

しかし、広大な面積を有し、上越・中越・下越・佐渡それぞれに多様なくらし・文化がある新潟県には、まだまだ掘り起こすべき宝物があると思います。NHKは転勤が多く、外からの視点があるからこそ、発見できる魅力もあるはずです。

今考えているのは、隣接する県とのインターローカルによる番組企画の開発です。新潟県と隣り合う5つの県との間には、県境を超えた交流があり、共通する文化もあります。例えば、長野県とは「雪国の暮らし」という共通点があり、糸魚川市では富山県や長野県と「北アルプス」周辺の観光等で連携しています。こうしたつながりや連携をより多くの方に知ってもらうことで、隣県との交流人口の拡大に寄与することができないだろうか…。

まずは足元から。そして全国、海外へ。新潟県の魅力発信に向けて、あらゆる可能性にチャレンジしていきたいと思います。

(おおた こういちろう)

このページのトップへ

  次のページ»