新型ウイルスによるシンガポール経済、産業への影響と今後

2021/03/01 :寄稿 海外レポート

ジェトロ・シンガポール事務所 次長  藤江 秀樹 氏

1.感染者数推移と経済封鎖・移動制限

シンガポールにおける新型ウイルスの影響について、これまでの経緯を振り返ると最初の感染者が確認されたのは2020年1月23日だった(図表1)。約2カ月後の3月30日に低熟練の外国人労働者のドミトリーにて感染クラスターが確認されて以降、シンガポールにおける感染者数は一気に増加した。4月1日時点で1,000人だった新型ウイルス感染の累計者数は6月1日には3万5,000人超まで急増し、このうち約94%がドミトリーで集団生活を送る外国人労働者だった。

急激な感染者数増加を受け、シンガポール政府は、4月7日以降、部分的ロックダウン「サーキットブレーカー」の措置を取り、これにより大半の職場が閉鎖することとなった。生活に不可欠な機能を持つ必須サービス(スーパー、薬局、飲食店など)や製造業は当該規制の対象から除かれたが、このうち、飲食店では店内での飲食が認められず、持ち帰りやデリバリーのみ可能だった。また、当初5月4日まで予定されていた同措置は、感染者の増加が収まらなかったことから、6月1日まで延長され、最終的に2カ月弱の間、継続された。

「サーキットブレーカー」は6月2日以降、3段階で緩和された。まず、フェーズ1では理容、自動車修理、専門サービスなどが事業再開するほか、幼稚園、公立小中学校が段階的に開校した。フェーズ2(6月19日~)は、ほぼすべての店舗で営業再開が認められるほか、映画館・博物館の再開、結婚式許可など社会活動の制限が徐々に解除された。10月1日からは、最大250人までの国際会議・展示会の開催が試験的に解禁された。

そして、本稿執筆時点(2021年1月12日)は、フェーズ3(12月28日~)の段階であり、私的な集会の人数の上限がそれまでの5人から8人へと緩和されている。2021年1月12日時点での感染者数累計は、58,946人。ここ数カ月の新規感染者数は毎日20~40人で推移し、そのうち海外からの渡航者がほとんどで、市中感染は0〜2人程度で安定している。

このようにシンガポールでは新型ウイルス感染者数が抑制されている状況だが、企業においては在宅勤務を基本とすることが義務付けられている。雇用主は、在宅勤務可能な従業員について、半数を超える人数を職場にて勤務させることはできない。シンガポール日本商工会議所(JCCI)とジェトロが共同で実施したアンケート調査(2020年11月2〜9日、231社回答)によれば、進出日系企業における従業員の出勤率は、「0~20%」(18%)、「20~40%」(30%)、「40~60%」(32%)だった。また9人以上の集まりは原則禁止され、大半の行事・イベントは引き続きオンラインでの実施が求められている。

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